ちょっと微妙な航続距離、従来の人気は維持できるか!?…
日本にもピッタリの真にコンパクトなサイズや、1957年に発売されその後20年間にも渡って愛された、2代目RRレイアウトの持ち主を彷彿とさせるキュートなデザインなどから、2007年に誕生の後多くのファンを獲得してきた『フィアット 500』がついにフルモデルチェンジ。2020年春に発表されていた欧州からは大幅に遅れたものの、ついに日本でも2022年6月から販売されることが発表された。
そんな新型最大のトピックは、なんと言ってもそれがピュアなEVとなったことに尽きる。わずかに大きくはなったものの、それでも全長が3630㎜、全幅が1685㎜に留まったサイズのボディは、誰がどこからどう見ても「フィアット 500そのもの」。しかし、フロントフード下にはもはやエンジンは存在せず、従来型と同様に前輪を駆動する動力源は最高出力が87kW≒118PS、最大トルクが220Nmというスペックの電気モーターだ。
床下にレイアウトされた42Kwhという容量のリチウムイオンバッテリーによる、WLTCモードでの一充電走行距離は335kmと発表。ちなみに、この先も“エンジン仕様”の設定は予定をされておらず、従来型での特徴だったターボ付き2気筒“ツインエア”も、姿を消すことになるというから衝撃だ。
ボディタイプはハッチバックに加え、両サイドのウインドウ部分を残して上面全てが開閉する『カブリオレ』も用意をされるのは従来通り。発売に先駆けて乗ることができたモデルも、こちらのモデルだった。
早速ドライバーズシートへと乗り込むと、まず感じたのはエクステリアに負けず劣らずキュートなインテリア各部の質感が思いのほか高いこと。決して”高級”という印象ではないのだが、細部まで手を抜くことなく入念なデザインが施されていることを実感。必要以上に物理スイッチ数を削減することなく、特に空調系はきちんと表に並んだスイッチを押すことで操作できる点にも好感が持てた。
ダッシュボード上のボタン式セレクターで『D』を選んで走り始めると、新開発されたEV用のプラットフォームを採用するのに、さほど新しい感覚は受けない。もちろん、加速は滑らかだし必要にして十分な速さなのだが、直進性は抜群というわけではないし、ロードノイズもそれなり。伝えられる振動の波形は“かど丸”ではあるのだが、乗り味は必ずしもしなやかではなく、場面によってはそれらが「懐かしい」印象すら連想させるからだ。
このモデルで特に遠出をしようという人は少ないかも知れないが、しかし1トリップの可能距離が300㎞前後というのはやはり微妙なところ。自宅で充電が可能ならばハードルは低そうだが、果たして日本で従来型のようにヒットを飛ばせるのか、正直ちょっと心配にもなる新型だ。
(河村 康彦)
(車両本体価格:495万円)