【2022年春版】いよいよ本格始動?国産メーカー各社の電気自動車(BEV)展開スケジュール

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欧州メーカーを中心に進んでいる電動化の流れ。特にBEVについては計画の前倒しも続き、本当に実現できるのか心配になるほど積極的過ぎるメーカーも少なくない。バッテリーの性能や生産能力、充電環境、電力インフラ等、解決すべき課題がまだまだ多いのが現実だ。欧州だけの一過性のブームで終わるんじゃないかと心配になるのも無理もない。巨額の投資が回収できるかはまだわからない。

そのようなこともあり、欧州メーカーに比べて慎重な姿勢を続けてきた国産メーカー各社だが、世界全体で見れば、もうルールも定まっており、悠長なことも言っていられなくなってきた。国内市場も含め、電動化への具体的な道筋を示す時期に来たといえるだろう。これまでHVを主軸としてきた国内市場だが、今後は急速にBEVに置き換わっていく可能性もありそうだ。

そこで、国内メーカー各社のスケジュールを見てみよう。主力とする市場の違いによって多少取り組む速度も違うが、方向性としてはほぼ同じ。これから数年で商品ラインアップも大きく置き換わるかもしれない。(編集部)

・30年に350万台の世界販売【トヨタ】

国内市場の動向を大きく左右するのがシェアの大きいトヨタの動きだ。トヨタはカーボンニュートラルに向けてハイブリッドからBEV、PHEV、FCV、水素燃料などあらゆる方向で開発を進めていく姿勢だが、21年12月にBEVへの取り組みを発表し、市場にも大きなインパクトを与えた。

その発表によれば、2030年までに30車種のBEVを発売し、2030年にはグローバルで年間350万台のBEVを販売するという。350万台のうちレクサスが100万台で、またレクサスは2035年にはBEV専業にするとしている。プレミアム市場でのBEV化の動きは、トヨタとしても予想外の速さだったのかもしれない。

レクサスの2020年の全世界販売台数は71万8715台。これに対して同年のテスラの世界販売台数は約50万台だ。まだレクサスの方が上回っているとはいえ、トヨタが焦るのも無理はない。

ちなみに、トヨタは7ヵ月前の21年5月の時点ではBEV+FCV(燃料電池車)で200万台としていたから、150万台の上積み、しかもBEVのみでというのだから、大幅な戦略見直しといっていいだろう。

間もなく、スバルと共同開発の「bZ4X」が発売予定で、レクサスでもブランド初のBEV専用車となる「レクサスRZ」が登場予定。さらに350万台実現に向けて、今後も続々と新型BEVが登場するはずで、国内のBEV普及にも弾みがつきそうである。

22年発売予定のbZ4X

・全固体電池の実現が今後の鍵?【日産】

日産は長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」で、2030年度までに23車種の電動車を投入し、グローバル販売のうち50%以上を電動車とする、としている。

ただし23車種のうち、BEVは15車種。2010年に初代「リーフ」を発売し、本格的な量販EV時代に先鞭をつけたメーカーとしては、やや控え目な印象も受ける。逆に言えばBEVをこれまで10年以上販売してきたからこそ、その普及拡大の難しさも理解しているのだろう。

この目標を達成するため、26年度までにEVとe-POWER搭載車を合わせて20車種を導入。欧州で75%以上、日本55%以上、中国40%以上の販売比率とし、米国では2030年度までにBEVのみで40%以上としている。日本では今のところe-POWERが中心だが、新世代のフラッグシップEVとして「アリア」が加わり、さらに間もなく登場する新型軽EVによってBEV比率が高まっていくことが予想される。

新世代のフラッグシップとして登場したアリア

一方で、注目は28年度までに自社開発の「全固体電池」を搭載したBEVを市場投入するとしていること。中小型車はコストに優れる現状のリチウムイオンバッテリーを登載し、大型車はパフォーマンスに優れる全固体電池を搭載する方向性で、実現すれば小型車から大型車までEVフルライン化が可能となる。

世界中で開発が進められつつも、実用化には多くの課題が残る全固体電池だが、目標通りに開発が進むことを期待したい。

・2040年に100%BEV+FCVを宣言【ホンダ】

21年4月の「脱エンジン宣言」で注目を集めたのがホンダ。先進国全体でのBEV、FCVの販売比率を2030年40%、2035年80%とし、2040年にはグローバルで100%とするというのだから、かなりチャレンジングな目標といえるだろう。

21年4月、脱エンジンを宣言した三部社長

このうち日本市場は、30年に20%、35年に80%、40年に100%を目標に掲げている。同時に30年には「ハイブリッドを含めて100%電動車にする」としており、今後、急ピッチでガソリン車のラインアップが整理され、ハイブリッドとBEVに置き換わっていくことになりそうだ。

BEVは現在「Honda e」のみだが、今後は24年に軽EVを投入。これによってBEV比率を大きく高めることになりそうだ。さらに25年にはソニーと共同開発する新型EVの投入も予定しており、注目される。

一方でFCVについては、16年に「クラリティフューエルセル」を投入(ただしリース販売のみ)したが、21年で生産終了。生産していた狭山工場の閉鎖も理由だが、日米合計で累計販売台数が1900台と低迷したのが最大の理由といえるだろう。FCVの開発は、GMと共同で今後も進めていくとしているとしているが、当面はBEVでの展開が中心となりそうである。

・25年までにBEV3車種を投入【マツダ】

ハイブリッド、プラグインハイブリッドを含め、2030年に電動車100%とする方針。このうちBEVは25%としている。

現在マツダが発売しているEVは「MX-30EV」の1車種のみだが、そもそもMX-30自体が販売ボリュームの小さいモデルであり、実験的な性格が強い。22年~25年にEV3車種を投入する計画としているが、これは量販を意識したモデルとなることが予想される。さらに25年までにハイブリッド車5車種、プラグインハイブリッド車5車種の販売を予定しており、急速に電動車比率を高めていく。

マツダ初の量産EVとして登場したMX-30EV

ハイブリッドシステムはトヨタから供給を受ける他、ロータリーエンジンと組み合わせたシステムも導入予定。まもなく登場を予定している「CX-60」では、詳細はまだ未公表だがマツダ初のプラグインハイブリッドを搭載することで注目される。またBEVは自社開発としていることから、マツダらしい特色のある電動車が続々と登場することになりそうである。

・今後の動向は北米市場次第?【SUBARU】

今年年央にトヨタと共同開発したBEV「ソルテラ」の発売を予定しているスバル。北米ではプリウスPHVのシステムを搭載した「クロストレック」(日本名XV)を発売するなど、電動車開発ではトヨタとの協業関係を深めている。

22年発売予定のソルテラ

スバルは09年、三菱アイミーブより1ヵ月早く、電気自動車「プラグインステラ」を発売し、業界に先鞭をつけたメーカー。残念ながらプラグインステラはリース販売のまま2011年には生産を終了し短命に終わったが、このソルテラで捲土重来となるかどうか。大いに期待したい。

20年1月に発表されたロードマップでは、2030年までにグローバルでの販売比率をBEVとハイブリッド車で4割以上とし、30年代前半までにグローバル販売全車で電動技術を適用、50年にWell to WheelでCO2を90%削減としているが、他社と比較してやや慎重な見方といえる。

今後はトヨタとの協業度合いや、最重要市場である北米の市場動向によって、大きく変化することも予想される。

・BEVは小型車中心に展開【三菱】

2009年に軽EV「アイミーブ」を発売、13年にはSUV「アウトランダー」にPHEVモデルを設定するなど、BEV、PHEV販売で先行してきたのが三菱。2030年にはグローバル販売のうちBEV、PHEV、HVで50%を目指す。

22年は、間もなく日産と共同開発の軽EVを発売する予定。その他の車種もルノー、日産とのアライアンスで取り組んでいくが、三菱はCセグ以下はBEV、Dセグ以上はPHEVを中心に展開するのに対し、日産はDセグ以上は全固体電池の搭載を予定しており、アライアンス間で住み分けが図られているのは興味深い。アライアンス全体で複数の選択肢を持っていれば、市場の動向や技術の進展に合わせて戦略を途中変更することも可能だから、一種の保険と見ることも出来、そういう意味では手堅い進め方といえそうだ。

実質200万円以下で登場予定の軽EV

・25年軽EV商用車から本格展開開始【スズキ】

21年4月~26年3月の中期経営計画によれば、2025年までに電動化技術を整え、2030年までに電動化技術を製品に全面展開、30年以降は電動化製品の量的拡大を図る、としている。

したがって、大きな動きは25年頃になることが予想される。25年にはエブリイベースの軽EV商用車を日本で発売すると同時に、インドでもBEVとハイブリッド車の投入を予定しており、これが本格的なスタートとなりそうだ。

スズキは軽貨物からEVに本格参入

スズキの重要な市場であるインドもBEVには積極的で、政府は2030年に乗用車販売の30%をBEVとする目標を掲げている。インドでトップシェアを誇るスズキとしても、この対応に迫られることとなるから、今後BEVの開発が急ピッチで進められることになりそうだ。

一方で、欧州ではトヨタ・RAV4PHVのOEM車「アクロス」を発売しており、BEVについてもトヨタとの協業を中心に展開が図られることになりそうである。

・25年に実質100万円台の軽EVを投入【ダイハツ】

21年には小型SUV「ロッキー」に独自開発のハイブリッドモデルを投入したダイハツ。今後は軽自動車も含めて、このHVシステムの横展開が予想されるが、一方で25年までに軽EVの投入を予定しており、BEVとHVの両面で電動化を展開。30年までに国内新車販売の全車を電動車にする目標を掲げている。

25年に投入予定の軽EVは、補助金を含めて実質100万円台とする計画で、トヨタとも連携しバッテリー等のコストを抑えるとしている。ロッキーのHV車ではモーターやバッテリーなどにトヨタHVで使われているパーツが活用されており、軽EVも同様の手法で低コスト化が図られることとなりそうである。軽EVは日産・三菱が22年、ホンダが24年の投入を予定しているが、25年はダイハツ、スズキも参入することで普及にも弾みがつくかもしれない。

ダイハツ独自のHVシステムを搭載したロッキー
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