【河村康彦 試乗チェック】アウディ・RS3 あまりにも潔いはじけっぷり

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全力加速はちょっと恐怖心がよぎるほど

「2026年以降に発売するすべてのニューモデルはピュアEVに限り、エンジンを搭載するモデルの生産は2033年までに段階的に終了する」……脱炭素化に向けての策をピュアEV一択とする動きが目立つヨーロッパのブランドの中にあっても、このように明らかにするなど、”電動化の急先鋒”と受け取れるのがフォルクスワーゲン・グループの一員であるアウディ。

しかし、そうした一方で「これってダブルスタンダードじゃないの!?」と思わずそうしたツッコミを入れたくなるほどに潔い良い内容を備えるのが、2022年から販売されている『RS3』だ。

A3をベースにしながら太いタイヤをクリアするためのボディ拡幅を行い、内外装が専用のアイテムでスポーティに仕立てられるというのは歴代モデル同様の手法。ターボチャージャーを付加した2.5リッターの5気筒エンジンというのも、今やRS3最大のアイデンティティといえる重要なアイテムだ。

こちらはハッチバックタイプ

そんな歴代RS3の中でも新型が最も吹っ切れていると思えるのは、歴代最高の400PSという出力や、前輪側がよりワイドという”掟破り”なシューズの設定、さらにはリヤアクスルに”RSトルクスプリッター”と呼ばれる特殊なベクタリング・システムを採用することなどで、完全なる後2輪駆動を実現させるいわゆる”ドリフト・モード”を備える点にも象徴されている。こうして、どこをとっても「歴代モデル中で最も過激」と思えるのが、2022年に発売された最新のRS3なのである。

ハッチバックとセダンの2タイプのボディが設定されるが、今回テストドライブを行ったのは後者。それでも、テスト車が派手なグリーンに彩られていたこともあって、「ただ者ではない」感は満点。そんな見た目の印象にハードな乗り味を覚悟しながらスタートすると、即座に肩透かしを食らうことになったのは、思いのほかしなやかな乗り味であったこと。ただし、そこにはオプション装着していた”RSダンピングコントロール・サスペンション”という、電子制御の可変減衰力ダンパーの効用も大きかったに違いない。

欧州仕様のインストルメントパネル

ブースト圧が高まったシーンでの全力加速力は、ちょっと恐怖心がよぎるほどのもの。FFベースの4WDモデルにも拘わらず、アンダーステア知らずのハンドリング感覚を実現するのは、かつてサーキットでの走行で確認をできた事柄だ。

5気筒ならではのサウンドは、スポーツ派ドライバーにとっては溜まらない魅力であろうが、それに聞き惚れているとたちまちとんでもない速度域に達してしまうのにはご用心。EVシフトの動きが進む中、こうしたモデルが失われてしまうのは何とも残念だが、これも時代の趨勢と諦めるしかないのかも知れない。

(河村 康彦)

(車両本体価格:スポーツバック=799万円、セダン=818万円)

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