文・写真:編集部
“マンガ・アニメ”にゆかりのある新しい名所「豊島区立 トキワ荘マンガミュージアム」が東京都豊島区南長崎のトキワ荘公園(南長崎花咲公園)内に開館した。
「トキワ荘」とは、今から38年前の1982(昭和57)年12月まで現存していた、マンガ界では伝説として語り継がれているアパートのこと。“マンガの神様”手塚治虫をはじめとする若き才能のあるマンガ家たちが一つ屋根の下に住み集い、ともに切磋琢磨しながら現代マンガの礎を築いた特別な場所でもある。
トキワ荘マンガミュージアムは、そんな“特別な時代”のトキワ荘を忠実に再現して建てられた、今話題の観光スポットだ。
そこで今回は、7月7日に開館したばかりのトキワ荘マンガミュージアムを皮切りに、そのゆかりの地や東京近郊の関連施設を巡る、マンガ・アニメにちなんだクルマ旅をプランニング。
日程は1日、トキワ荘マンガミュージアムから南下して、サブカルチャーの聖地とも言われる「中野ブロードウェイ」を経て「東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム」を訪問。さらに南下して多摩川を渡り、最後は「藤子・F・不二雄ミュージアム」まで巡る旅に出発した。
目次
・豊島区立 トキワ荘マンガミュージアム 忠実な再現に感嘆、昭和の時代にタイムトリップ
・中野ブロードウェイ〜まんだらけ 希少本からグッズまで、何でも揃うサブカルの聖地
・東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム 五感を使ってアニメを知り、体験できる場所
・川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム 親子でニンマリ、藤子・F・不二雄の世界観を体感
・ご当地ランチ 「松葉」マンガ家たちが愛した、あの「ラーメン」
・旅グルマ紹介 「スズキ・ハスラー」 都市部や市街地の移動も楽々サイズ
豊島区立 トキワ荘マンガミュージアム
忠実な再現に感嘆、昭和の時代にタイムスリップ
閑静な住宅街に囲まれた公園内に、そこだけ昭和の時代にタイムスリップしたような昭和のアパートを模した「トキワ荘マンガミュージアム」が建てられている。その佇まいは、藤子不二雄Ⓐの傑作『まんが道』で描かれていた「トキワ荘」そのもの。再現度は驚くほど高い。当時の写真記録はモノクロが多く、屋根や壁の配色は当時を知るマンガ家や関係者などの意見を聞きながら再現したという。
ミュージアムが建つ椎名町〜南長崎は、トキワ荘を中心にマンガ・アニメにゆかりある地域として様々なモニュメントが点在している。その記念事業の始まりは1999年まで遡る。同年、地元の方々から「トキワ荘を大事にしてほしい」という要望とともに、約4000名の署名が豊島区に寄せられたという。その後、トキワ荘関連プロジェクトとしてモニュメント事業がスタート。2013年にはトキワ荘ゆかりの情報を発信する「豊島区 トキワ荘通りお休み処」を開設。2016年にはついにミュージアムの整備検討会議が設置され、「トキワ荘マンガミュージアム」の開設へとつながっていった。
驚くほどリアルな再現空間
ミュージアムは、当時の玄関がそのまま入口となっており、マンガ家たちのように靴を脱いで入館することになる。1階は企画展示室とマンガラウンジ、2階は当時マンガ家たちが暮らした各部屋の間取りを再現したフロアとなる。
見学は2階からスタート。ミシミシと音が鳴る階段を昇りきると、建てられたばかりなのに、どこか古さを感じさせる共同の便所と炊事場がある。汚れや黄ばみ、錆びなどの意匠は、職人によるエイジング加工によるもの。また、炊事場の道具類も時代性を合わせているので、どこか懐かしい昭和レトロを感じられる空間になっている。
長い廊下を挟んで両側に並んでいる各部屋は、半畳ほどの板張りスペースと四畳半の間取り。驚いたことに、窓の外には当時見えたであろう景色が描かれている。部屋は14号室から22号室まで再現されており、入居時期は異なるものの、手塚治虫を筆頭に、寺田ヒロオ、藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄、鈴木伸一、森安なおや、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、よこたとくお、水野英子、山内ジョージなど、錚々たるマンガ家たちが暮らしていた。
描きかけの原稿や日用品、家具まで再現された部屋もあり、当時のマンガ家の暮らしぶりを感じることもできる。山内ジョージの部屋を再現した18号室には、アニメ界でも活躍していた石ノ森章太郎の古いフィルム用保存缶が置かれているなど、石ノ森のアシスタント時代をうかがい知ることができる細かい演出・再現もされていた。
続いて1階へ移動。こちらは2階とは打って変わってモダンな作り。マンガラウンジには、トキワ荘ゆかりのマンガ・書籍の展示やマンガ家へのインタビュー映像の上映、ジオラマ作家山本高樹氏が制作したトキワ荘のジオラマ、そして手塚治虫が『リボンの騎士』と自画像を直筆した14号室の天井板が飾られていた。
隣接する企画展示室では現在、開館記念企画展として「漫画少年とトキワ荘~トキワ荘すべてはここから始まった~」を開催中(9月30日まで)。手塚治虫『ジャングル大帝』の連載でも知られ、トキワ荘ともゆかりの深いマンガ雑誌『漫画少年』を展示。加えて、トキワ荘再現部屋にも特別協力していた鈴木伸一、よこたとくお、水野英子、山内ジョージの資料が展示されていた。
入館は無料、予約制のため申し込みは事前に
入館は予約制のため、事前に公式サイトの「来館予約フォーム」(24時間受付)で予約しよう。なお、予約は一度に5名までなので、5名を超える場合は時間をずらして再度申し込む必要がある。
来場者駐車場は、2台分の障がい者専用駐車場が用意されている。一般来場者は近隣のコインパーキングを利用しよう。徒歩圏にあるパーキングの金額はおよそ1時間300〜600円(昼間料金)で、最大料金が設定されている場合が多い。少し歩くが目白通り沿いにもパーキングが点在するので、ミュージアム近くのパーキングが満車の場合はそちらも見てみよう。
トキワ荘ゆかりの地を散策しよう
そして最後に、ミュージアムに遊びに来たら、ぜひトキワ荘ゆかりのスポット巡りをおすすめしたい。ミュージアムの建つ公園の北側、トキワ荘通りを目白通り方面に少し歩けば、『まんが道』にも登場した中華料理店「松葉」、トキワ荘の跡地や赤塚不二夫が仕事場兼住居として借りていたアパート「紫雲荘」がある。
その先にはトキワ荘ゆかりのマンガ家たちの作品が読める「トキワ荘マンガステーション」、関連グッズも買える「豊島区 トキワ荘通りお休み処」も通り沿いに並んでいる。ちなみに、散策マップは公式サイトで見られるほか、ミュージアムでも配布している。