【河村康彦 試乗チェック】ポルシェ・タイカンGTS ピュアEVを“GTS化”すると…

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タイカンの美点が見事に増幅されていた

一時期は、シリーズ内で最も強力な自然吸気エンジンを搭載したスポーティーなモデル……と紹介すれば、大方そのキャラクターを言い表すことができた時代もあったものの、最近のように多くのモデルがターボチャージャー付きエンジンを搭載するようになるとそうも言えなくなってきたのが、1960年代のレーシング・モデルに由来する『GTS』というグレード名を与えられたポルシェ車。

一方、最近ではラインナップ拡充の最後のタイミングで登場する、それまでモデルに設定されていた”走りのオプション”の多くを標準装備とする、見た目上でもスペックでもそのシリーズのイメージリーダー的存在と紹介することが適切そうなのが、このグレード名の持ち主だ。それがこのブランドで唯一のピュアEVである『タイカン』にも設定され、日本での販売もスタートをした。

そんなタイカンGTSの見た目上の特徴は、外観では専用デザインのフロントエプロンや『GTS』の文字が刻まれたサイドステップ、ブラックアウト化されたエンブレムなど。またインテリアでは、クレヨンもしくはカーマインレッドをアクセントカラーに用いた”GTSインテリアパッケージ”などで、スポーティーかつ上質な雰囲気を演出することになっている。

前後モーターを合わせて380kWという最高出力や850Nmの最大トルク、440kWのオーバーブースト出力や3.7秒の0→100km/h加速タイムなどのスペックは、いずれも既存の『4S』と『ターボ』グレードの狭間に見事に収まる数字。

ただし、エンジンの場合とは異なりこのあたりを特別な技術を用いることなく自在にコントロールできてしまう点は、これまでのハイパフォーマンス・モデルに憧れを抱いていた人にとっては「つまらないナ」と受け取られてしまうポイントかも知れない。

ピュアEVというパワーユニット以前に、「これはあの911以上に低重心感に溢れることこそが最大の特徴ではないか!」と、個人的にはそんな走りのテイストに感動をしたのがタイカンというモデルであったが、サスペンションに専用のチューニングが施された上でやはり専用チューニングが施されたという”リヤアクスルステアリング”や”PDCC(ポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロール)”スポーツもオプション装着し、標準比プラス1インチの21インチシューズをオプション装着したテスト車の場合には、なるほどとびきりスポーティーなハンドリング感覚を味わわせてくれることになった。

さすがに、街中の荒れた路面上を低速で通過するとバネ下の重さを実感させられるものの、速度が高まるに連れてフラット感が急増。そして、タイカンの初ドライブで感動的だった例の低重心感も、見事に再現されることになっていた。

このブランドが、かねて「後席にもゆったり乗れるスポーツカー」を模索していたのは知る人ぞ知る話題。今の段階でそんなキャラクターに最も近いのはこのモデルなのかも知れない。

(河村 康彦)

(車両本体価格〈タイカンGTS〉:1841万円)

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