電動化には積極的だが、技術面の流動性を連想される動きも…
車名が”XC”というアルファベット二文字から始まるのがボルボのSUVラインナップ。その中から、最も底辺に位置する『XC40』をテストドライブした。
と言っても今回乗ったのは、そこにプラグイン・モデルであることを示す「リチャージ」というサブネームが加えられたバージョン。日本仕様にはプラグイン・ハイブリッド・バージョンを持たないXC40の場合、それはすなわちピュアEV。
そこには69kWh容量のバッテリーを搭載し、最高170kW≒231PSの出力を発するモーターで前輪を駆動する『リチャージプラス シングルモーター』と、78Kwh容量のバッテリーを搭載して前後に配した150kW≒204PSの出力を発するモーターで4輪を駆動する『リチャージアルティメット ツインモーター』という2タイプのモデルを設定。今回はテストドライブしたのはその前者である。
最近はピュアEV専用に開発された骨格を使うモデルも増えつつあるが、このモデルの基本構造は”エンジン車”と共用のもの。もちろん様々なリファインが施され、フロントフード下のエンジンルームだった部分には物入れが確保されるなどの工夫も見られるが、リヤシートの足元スペースには本来は必要ないはずの、大きなセンタートンネルの張り出しがあったりするのを目にすると、正直なところちょっと”興醒め”の印象を抱かないでもない。
静粛性は当然高く、”爆速”ではないものの加速力も十二分。アクセルOFFで完全停止までが行える1ペダルドライブ機能を備えたりといった特徴点もあるものの、エンジン車からの乗り換えでも特にコレといった違和感を抱かないことが走りの特徴と言えそう。
フットワークのテイストはやや硬質ながら走行シーンに関わらず安定感は常に高い。このあたりがボルボ車らしい部分と言えばそのように表現もできそうだ。
ちなみに、ボルボは数ある輸入ブランドの中でも「2030年までに完全な電気自動車メーカーになる」と表明をするなど特に電動化に積極的なブランド。それも、基本的には先進国の富裕層にターゲットを絞り込んでいるからこそできる技といえるのかも知れない。
そうしたゴールに向けて着々と邁進しているかに見える一方で、つい先日に突然「XC40リチャージとC40リチャージに後輪駆動モデルを設定」と発表するなど、いまだ技術面の流動性を連想させる動きを示しているのは気になる部分。
こうなると当然、「ピュアなEVはいつ買うべきか?」と改めて疑問も湧いてくるし、既存モデルの価値が一気に下がってしまうのでは? とそんな心配もしたくなるもの。徐々に一般的になってきたとは言え、現時点ではまだまだ不安材料が拭えないのがピュアEVであるのかも知れない。
(河村 康彦)
(車両本体価格:679万円〈2024年モデル〉)