【河村康彦 試乗チェック】BMW・i7 ショーファー・ドリブンへ宗旨替え!?

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贅を尽くした静寂な空間で、一瞬“血の気”も引く強烈な加速

BMW発のピュアEV、『i7』をテストドライブした。こうして固有のネーミングが与えられているものの、このモデルは2022年7月に日本への導入が開始されたフルモデルチェンジを行った7シリーズの電気自動車版、というのが正規の位置づけ。

2トーンカラーによりロールス・ロイスに迫る存在感となった

すなわち、新しい7シリーズにはマイルドハイブリッド・システムを加えた3リッター・ターボ付きの直列6気筒ガソリン・エンジンと、同じく3リッター・ターボ付き直列6気筒ディーゼル・エンジン搭載モデル、そして前述のように固有の車名が与えられたピュアEVと3種類のパワーユニットが用意されていることになるのだ。

それにしてもそんな新しい7シリーズでまず驚くのは、従来型からは一変してとんでもなく強い押し出し感を放つそのスタイリング。中でも特徴的なのは巨大な”キドニーグリル”と、薄いヘッドライト・ユニットで構成されるフロント・マスクで、率直なところそのデザインは見る人によって「好き」と「嫌い」がハッキリと分かれそう。

全長が5.4mに迫り全幅も1.9mを大きくオーバーという大きさに加え、テストドライブを行ったモデルがオプションの2トーン塗装を施されていたこともあり、その迫力は「ロールス・ロイス車もかくや!」と思えるものになっていた。

天井の左右一杯に広がる後席用ディスプレイ

見た目の驚きは、キャビンに乗り込んでからも継続する。前出のボディ色に加え、”リヤシート・エンターテインメント・エクスペリエンス”や”エグゼクティブ・ラウンジシート”等々と、テスト車に総額570万円(!)を超える様々なオプションが装着されていた影響も大きいが、そもそもが上質なベース部分の仕上げに加えて、通常は天井部分に格納され使用時には室内幅一杯(!)に広がる巨大な後席用ディスプレイや、リヤドアのアームレストに内蔵された小型のディスプレイ、クリスタル製のATセレクターやシート調整スイッチなどと贅を尽くした装備が満載。極め付きは4枚のドアに自動開閉機構が内蔵されていることで、こうした点でも再度「ロールス・ロイスもかくや!」と驚かされる内容なのである。

 

 

前後に1基ずつのモーターを搭載する4WDシステムを採用し、100kWhを超える大容量バッテリーを組み合わせた結果のシステム出力は400kW≒544PSで、システムトルクも745Nm。巨大ボディもあって重量も約2.7トンと重いが、それでも0→100㎞/h加速タイムは4.7秒と一級のスポーツカー級。

実際、その加速は思い切ってアクセルペダルを深く踏み込むと一瞬”血の気”が引きそうになるほど。そうしたシーンでも際立って高い静粛性はそのまま、というのもピュアEV「あるある」だ。

走行モードの切り替えでそのテイストは多少変化をするものの、エアサスペンションがもたらすその乗り味は基本的にダンピングがやや弱めで、これまでのBMW車の常識からはやや外れている感触。

トランクルームは500リッターの容量を持つ
今やラージサイズモデルには標準化しつつある20インチタイヤ。扁平率は40%

そういえば、これまでのBMW車ではどのようなモデルに乗っても「走りを司ることができるドライバーズ・シートこそ特等席!」と理解ができたものだが、かつてなくショーファー・ドリブン=後席重視という雰囲気が強く感じられたこのモデルの場合は、やはりそうしたこれまでの常識も通用しないという印象だ。

ピュアEVだからという以前に、7シリーズ自体が単なるモデルチェンジに留まらずいわば”コンセプト・チェンジ”を行ったことにも驚きを隠すことができない、そんなこのブランドの頂点に立つモデルのピュアEV版がi7なのである。

(河村 康彦)

(車両本体価格:1670万円)

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