むかしクルマも飛行機も木製だった

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乗るだけが好きな人もいるが、クルマが好きな人にはメカ好きも多い。クルマの中身は透視図などで見る機会はあるが、飛行機となると中身が見えない。私も子供の頃見たくてしようがなかった。

そこで今回は、フランスで見つけた復元途中の機体写真を紹介しよう。WWⅡ以後の飛行機では、さすがに張り線はないが、翼の骨組みなどは木がアルミに変わっただけで、ゼロ戦もボーイングB29爆撃機も皆同じ骨組みだ。

ポテーズ25郵便輸送機:最高速度時速210㎞・実用上昇限度5800m・航続距離1260㎞。全幅14.14m×全長9.1m・空虚重量1.5t/全備重量2.5t/前部にラジエーター/下方はアルプス山脈?

さて、写真のフランス機は、1925年登場の傑作機ポテーズ25。開発コンセプトは汎用軍用機だが、郵便輸送など民間でも活躍した。軍用は戦闘機、偵察、爆撃などで活躍した。輸出や海外のライセンス生産も含めて4000機余が生産され、日中戦争では日本陸軍相手に中国空軍が、またイタリア軍相手にエチオピア軍が、ボリビア空軍相手にパラグアイやウルガイなどの戦場に…1940年代まで現役だった。

20世紀初頭、自動車は木製シャシーの上に木骨ボディーだったように、飛行機も木製だった。が、WWⅠ後の20年代になっても木製だったことに改めで驚いた。ポテーズ25も発動機部分と燃料タンク以外の大部分が木製である。

搭乗員2名の座席部分は木の箱で、羽布張りの翼と胴体も中は木だが、主翼リブの寸分違わぬ仕上がりは、日本ならさしずめ指物師クラスの技である。板の部分はベニヤ板だろう。ちなみに機体は複葉ではなく一葉半で、フランスが開発した傑作形式だった。

これら木の部品はノリで貼り合わせる。20世紀前半まで接着剤は天然素材で、ニカワ、でんぷん、天然ゴム、ウルシ、牛乳から作るカゼインなどだが、飛行機はカゼインだろう。1950年代に私が慶大航空部で高級グライダーを作った時も、カゼインだったから。

写真の機体は空中戦もやる軍用機だから、翼も胴体もX字型に張った張線で締め上げて強度を増している。ベニヤを張れば高強度になるが重量が増すの…で、羽布張りの強度を上げるには張り線が必要なのだ。

羽布張りにはメリットもある。当時の機関銃弾には着火力がないから、弾が当たってもブスブスと突き抜けていくだけだったろう。どのように木が使われ、組み立てられているかは、写真を見れば一目瞭然だから、興味あればジックリと見ていただきたい。

ロレーヌ・ディートリッヒ水冷W型12気筒12EbW・450馬力:最高速度時速210㎞・軍用は前方に7.7㎜機関銃×2・後部偵察員席回転型7.7㎜×2・爆弾200kg。
英国スーパーマリンS5レーサー:1928年に改良型S6はネピアライオンW型12気筒・1320馬力・時速512㎞でシュナイダートロフィーに優勝。高速機は離陸滑走距離が長いのでフラップの発明前は水上機が多かった。

次は、面白い形の発動機だがW型と呼ぶ。1列4気筒が3列で12気筒。このタイプは他社にもあり、英国のスーパーマリンS6が搭載して、シュナイダートロフィーレースに優勝している。

ポテーズ25は汎用機らしく、ロレーヌの他、直列型イスパノスイザ12Lbv型600馬力、ファルマン12W型500馬力、グノーム空冷星形9Ac型420馬力などを搭載、各国に民間用、陸海軍用など各種が存在した。

 

車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。

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