独アウディ、「Audi e-tron GT」の生産を開始 2021年春より受注開始

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独アウディは12月9日(現地時間)、電気自動車「Audi e-tron GT」の生産を、ベーリンガーホフ工場で開始したと発表した。来春のワールドプレミアに続き、受注の開始を予定している。なお、同車はドイツ国内で初めて生産されるアウディの電気自動車となる。

 

<カーボンニュートラルな方法で生産>

「Audi e-tron GT」の生産は、100%グリーン電力と再生可能なエネルギー源によって生み出される熱を使用し、完全にカーボンニュートラルな方法で車両を製造する、ネッカーズルムのベーリンガーホフ工場で行われる。資源の節約に配慮したこの車両製造プロセスでは、紙や梱包材の使用を削減し、アルミニウムおよびプラスチックのクローズドループを活用しているほか、アウディのニューモデルの生産として初めて製造プロセス計画段階において実車プロトタイプを使用しないで行われた。ネッカーズルムの拠点では、既にプラグインハイブリッド車の生産に焦点を当てており、A6、A7、A8のプラグインおよびマイルドハイブリッド バージョンにより、アウディの生産拠点の中でも電動化モデルの割合がもっとも高くなっている。

 

ベーリンガーホフの生産プロセス全体が、完全にカーボンニュートラルなものになっており、2020年の初めにネッカーズルムの生産拠点全体が使用する電力はすべてグリーン電力に切り替えられている。バイオガスを燃料とする熱電併給プラントは、ベーリンガーホフ工場が車両の生産において必要とする熱を供給し、再生可能なエネルギー源の使用に伴ってどうしても避けられないCO2の排出は、認証を受けた気候保護プロジェクトのカーボンクレジットを使用して相殺される。アウディは、2025年までに全世界においてカーボンニュートラル化を達成すると述べている。

 

<クローズドループによる環境保護>

生産拠点では、重要な資源は節約され、原材料も現場でリサイクルされている。その最も良い例が「アルミニウムクローズドループ」で、その一例がネッカーズルムの拠点において「Audi e-tron GT」のサイドウォールフレーム製造の際にプレスショップから出るアルミニウムシートの端材を再利用するクローズドリサイクルチェーンとなる。このサイドウォールフレームは、絞り加工の最高点と最低点の差が35cmにも上り、それによってホイールアーチのショルダー部分にquattroブリスターと呼ばれる特徴的で力強い造形が生み出され、この極めて困難なプロセスを実現するため、最先端のアルミニウム加工技術が採用されている。アルミニウムクローズドループにより、切断後のアルミニウムシート端材はサプライヤーに戻され、リサイクルされて再使用される。これにより、ネッカーズルムの拠点において年間数千トンのCO2排出量が削減されている。

 

プラスチックのリサイクルでは、「古いものを新しいものに変える」という考え方を採用。現在進行中のパイロットプロジェクトでは、A6およびA7の組立作業に由来するプラスチック端材は仕分け・裁断されて、特殊な繊維に生まれ変わり、これらのフィラメントは生産プロセスの3Dプリンターで使用される。ベーリンガーホフ工場における社内3Dプリンティングチームは、各従業員の要件に合わせてカスタマイズされた多様な組立作業補助具の製造を担当しており、「Audi e-tron GT」の製造には補助具が100以上も使用されている。完璧なポリマークローズドループを創出することが、リサイクルプロジェクトの目的となる。

 

<体系的なリソースの節約>

「Audi e-tron GT」は、物理的なプロトタイプを製作することなく製造工程が計画された、最初のアウディとなる。現在、生産現場で実際に使用されているすべて組立手順は、社内で開発したソフトウェアおよびVRアプリを活用して仮想的にテストを受けたもので、繊細なパーツの輸送に使用する専用コンテナの一部も、新しい仮想メソッドを使用してプロトタイプなしで製作された。これにより、金属だけでなく、部品を保護するためのパッケージも節約が可能となり、廃棄物の削減と紙の節約を実現する。ボディショップと組立ラインでは、ほとんど紙を使用することなく、従来の書面による記録の必要性をなくしたメンテナンスアプリなどの新しいプロジェクトも、紙の節約に貢献している。

 

ロジスティクスの面では、デジタルラベルがテストされており、これが実現すれば、棚のパーツコンテナには、紙製のステッカーの替わりに電子ラベルが採用されるようになり、さらに紙の必要性が少なくなる。また、アウディのプロジェクトチームは、サプライヤーと共同で、梱包材の体系的なスリム化と廃棄物の削減につながるソリューション開発に取り組んでいる。

 

<熟練工による生産という特徴を保ったハイテク生産施設>

ネッカーズルム拠点の中にあるベーリンガーホフ工場は、高品質、高性能、ディテールへの情熱を特徴としており、スポーツカーを熟練工が手作業で生産している。「Audi e-tron GT」の生産に向け、2019年に拡張とアップグレードを行い、設備も一新した。アウディ史上もっともパワフルで最速の2つの量産アウディモデルが、この工場で生産されている。

 

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