真面目一辺倒から抜け出した異色モデル
「フォルクスワーゲンのSUVとして初となるスポーツグレード」と謳われる、『ティグアンR』をテストドライブした。
基本ボディのデザインは、先日リファインが行われた1.5リッターのエンジンを搭載するモデルと変わりはないが、それでもこのグレードが一見をしてただならぬ走りのパフォーマンスの持ち主であることを連想させるのは、専用にデザインされたボディキットの採用に加え、リヤバンパー左右から顔を出す4本出しのテールパイプや、実に21インチという大径のホイールに偏平率が35%という薄いタイヤを組み合わせて履いていることなどに代表される。
フロントフード下に7速DCTとの組み合わせで搭載されるのは、2リッターの排気量ながら320PSという最高出力に420Nmという最大トルクを発揮する、ターボ付きの直噴4気筒エンジン。もちろん4WDで、リヤディファレンシャルに左右2組の多板クラッチを用いたトルク・ベクタリング機構を内蔵するのも特徴。すなわち、エンジントルクを前後輪間のみならず、リヤの左右輪間へも自在に配分できるというのが、大きな売り物となっているのだ。
公表される0~100㎞/h加速タイムは、わずかに4.9秒。加えて、このグレードには標準装備をされる電子制御式可変減衰力ダンパーを含むドライブモード・コントロールの”DCC”には、専用に開発されたホッテスト・ポジションである『レース』までを設定。ここからも、妥協なき走りへの思いが伝わってくるものだ。
そんなレース・モードを選択して走り始めると、グッと重みを増したステアリングの操舵力と、スポーツ・モードをさらに上回る“爆音”の演出にちょっと驚かされる。どこか5気筒エンジンを彷彿とさせるようなそのサウンドや、ダウンシフト時のエンジン回転合わせ機能、そしてペダルに触れると同時にガッと立ち上がる減速Gなどを味わっていると、ちょっとばかりサーキットで乗ってみたいという思いも浮かんで来ることとなった。
日本の山岳路に多く見られるタイトなワインディング・ロードでは、例の後輪トルク・ベクタリングも効いてかアンダーステアを意識させない旋回性の高さが印象的。ただし、さらに欲を言えば「ステアリングのギア比をもう少し早めて欲しいな」と、そんな思いを感じることにも。
真面目一辺倒から抜け出したこんな異色モデルの設定は、”ティグアン人気”を大いに後押しして行くこととなりそうだ。
(河村 康彦)
(車両本体価格:695万1000円)