輸入車の“ジャーマンスリー”の一角であり、独自のプレミアムなブランドイメージが確立しているアウディの中で、コンパクトレンジは比較的身近に感じられるモデル群でもある。その一つ、A3シリーズが今春、8年ぶりにフルモデルチェンジしたが、これを機に輸入車デビューを考える人も多いはず。そんなA3のベストな買い方をカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎さんに聞いてみました。
《特徴》アウディ・A3はこんなクルマ
プレミアムブランドとされるアウディの中で、A3は身近な車種です。ボディタイプは5ドアハッチバックのスポーツバックと、4ドアセダンを用意しています。
主力モデルとされるスポーツバック30TFSIのボディサイズは、全長が4345㎜、全幅は1815㎜、全高は1450㎜です。混雑した街中でも持て余さない大きさで、最小回転半径は5.1mなので、小回り性能も優れています。
エンジンは直列3気筒1Lターボと、直列4気筒2Lターボを用意します。プラットフォームは、VW(フォルクスワーゲン)ゴルフと共通です。直列3気筒1Lターボもゴルフと同じで、マイルドハイブリッドを併用します。
マイルドハイブリッドは、モーター機能付き発電機とリチウムイオン電池などから構成され、減速時の発電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援を行います。アイドリングストップ後の再始動にはベルトを使うため、スターターモーターのような金属的なノイズを発生させません。
内装はアウディらしく上質で、居住性も前後席ともに快適です。車内の広さはゴルフと同等で、コンパクトなボディでありながらもファミリーカーとして使いやすいです。
セダンを選べることも特徴です。セダン30TSIの全長は4495㎜だから、マツダ3セダンやインプレッサG4よりも短く、貴重なコンパクトセダンになっています。
《グレード構成と価格》ベーシックからスポーティまでキャラクターも価格帯も幅広い
スポーツバックとセダンの両方に、直列3気筒1Lターボと、直列4気筒2Lターボを用意しています。2Lターボには2種類のチューニングがあり、S3に搭載されるタイプは、4Lのノーマルエンジンに匹敵する動力性能を発揮します。駆動方式は、1Lターボは前輪駆動の2WD、2Lターボには4WDを組み合わせています。
価格の最も安いグレードは、スポーツバック30TSI(310万円、税込。以下同じ)です。同じエンジンを搭載しながら、内外装を上級化してスポーツサスペンションなども装着するスポーツバック30TFSI・Sライン(389万円)などもあります。
2Lターボは、スポーツバック40TFSIクワトロSライン(483万円)が代表グレードです。エンジンが直列4気筒2Lターボにパワーアップされ、4WDシステムのクワトロも加えたことにより、価格はSライン同士の比較で1Lターボに比べると約100万円高いです。S3(642万円)は、さらに動力性能を高めた最上級グレードです。
《ベストな選び方と推奨グレード》ベースグレードは標準装備が少ない
A3を選ぶ時に注意したいのは、安全装備や運転支援機能などにオプションが多いことです。同じプラットフォームを使うVWゴルフの場合、車間距離を自動調節できるアダプティブクルーズコントロール、リヤビューカメラ、アウディのバーチャルコックピットに相当するデジタルコックピットプロなどは全車に標準装着されますが、A3では大半のグレードがメーカーオプション設定です。
アウディはプレミアムブランドなので、装備が充実していると思われがちですが、実際にはA3の装備水準はゴルフを下まわります。その代わり価格も安いです。ゴルフに直列3気筒1Lターボを搭載するeTSIアクティブは312万5000円ですが、同じエンジンのA3スポーツバック30TFSIは、前述の310万円です。機能と価格のバランスを考えると、A3の中では、スポーツバック30TFSIが最も割安です。
《おすすめオプション装備》ベースグレード+コンビニエンス&アシスタンスパッケージが有効
A3を購入する時は、A3スポーツバック30TFSIを選び、コンビニエンス&アシスタンスパッケージ(47万円)をオプション装着します。この中には運転支援機能のアダプティブクルーズアシスト、リヤビューカメラ、アドバンストキーシステムなどの実用装備が含まれます。
さらにナビゲーションパッケージ(26万円)を加えると、カーナビに加えて、バーチャルコックピットも装着されます。この2つのセットオプションをA3スポーツバック30TFSIに加えると、高い満足感と割安な価格を両立できるでしょう。合計価格は383万円です。
《納期はいつごろ?》早くて3カ月待ち、中には1年を要する場合も…
今は半導体が不足している影響もあり、納期は仕様に応じて大きく変わります。販売店によると「納期が短いグレードなら3か月ですが、長いと約1年を要します」とのことです。
(渡辺陽一郎)