ステランティスN.V.は7月8日、同社の中期的な電動化戦略オンライン発表会を実施した。
ステランティスは、ヨーロッパにおいて2030年までにLEVの販売比率を7割以上（業界見通しを10ポイント上回る割合）まで徐々に引き上げていく予定としており、アメリカでは2030年までに乗用車とライトトラックの販売台数のうち4割をLEVとする計画を立てている。これらの戦略を実行に移すにあたって、同社では2025年までに300億ユーロを超える先行投資を計画し、投資対象はソフトウェア開発に加え、合弁事業への資本参加を含み、一方で、設備投資と研究開発コストの対売上比率は、業界平均を3割下回るものに抑えるとしている。
さらに、ヨーロッパにおいて、向こう3年の間にすべての製品ラインアップとすべての地域において商用車の電動化を推進し、その中に2021年末までに発売開始を予定している水素燃料電池の中型バンの市場投入も含まれている。また、電動車両用バッテリーの調達戦略においては、2025年までに130GWh以上を確保することが含まれ、ヨーロッパと北米の「ギガファクトリー」5拠点のサポートにより2030年までに260GWhに相当するバッテリーを調達予定としている。
リチウムについては今後調達が最も深刻になる素材といわれており、ステランティスは北米とヨーロッパのリチウム地熱塩水加工2社とリチウムの持続的な調達を保証することを目的に覚書（MOU）を交わしている。また調達戦略に加え、ステランティスでは技術力の高さと製造における相乗効果を、今後バッテリーのコスト削減につなげる計画で、電動車両のバッテリーパックは2020年から2024年にかけてコストを4割以上削減することを目標にしている。その後2030年にかけてさらに2割削減すると述べている。さらに、同社ではリペア、再生、中古バッテリーの活用やリサイクルなどを通じて、バッテリーのライフサイクルから得られる価値の最大化に努めるとしている。
ステランティス全14ブランドで、ベスト・イン・クラスのBEV（電気自動車）の提供を目指し、BEVの普及に不可欠な航続距離と充電スピードについて、顧客のニーズに応え航続距離で500～800km、充電スピードで分当たり32kmを実現するBEVの開発に取り組むと述べている。各ブランドで電動化を着実に進めるにあたって、そのバックボーンとなるBEV専用のプラットフォームを開発。これらのプラットフォームは構造上の高い柔軟性（長さと幅）を持つとともに、コンポーネントの共有化を進めることで年産200万台という、スケールメリットを享受することが可能となっている。プラットフォームは、STLAスモール：航続距離500km、STLAミディアム：航続距離700km、STLAラージ：航続距離800km、STLAフレーム：航続距離800kmの4種類が用意される。
パワートレーンには3タイプのEDM（エレクトリック・ドライブ・モジュール）を開発し、それぞれがモーター、ギアボックス、インバーターから構成されている。いずれのEDMもコンパクトで柔軟性が高く、拡張も容易である。また、全てのEDMがFF、FR、AWD、4xeの全てのコンフィギュレーションに対応する。
ハードウェア・アップグレード用のプログラムやOTA（オーバー・ジ・エア）によるソフトウェア・アップデートによって、プラットフォームの長寿命化が可能となり、同社ではブランドごとの個性を際立たせるために、ソフトウェアと制御はすべて内製する。
バッテリーパックについては様々な車両に適応させ、都市部で使われる小型車向けのものに加え、ハイパフォーマンス車両やトラック向けには高密度タイプを搭載。また、バッテリーは顧客ニーズに合わせて、高密度タイプとニッケル・コバルトフリーの2タイプを2024年まで使用し、2026年には全固体バッテリーを搭載した製品を投入する。
ステランティスでは合弁パートナーとともに複数のキーテクノロジーを開発中、もしくは開発を完了している。それらの中にはeパワートレーン、eトランスミッション、バッテリーセルの開発と製造、デジタル・コックピット、パーソナライズド・コネクテッド・サービスが含まれる。これらのパートナーシップによって、ステランティスは自社の競争力強化だけでなく、新技術やソリューションの開発スピードの大幅な向上を行い、競争力を維持するための資本を最適に配分する。
発表会において、ステランティスのCEO、カルロス・タバレス氏は、「300億ユーロ超の先行投資によって、今後、私たちはパフォーマンス、機能、スタリングや快適性に加え、日常生活に不足のない電動航続距離を持つ、画期的な車両をお届けします。ご紹介した戦略に沿って、適正な金額を最適なテクノロジーに投資することで、ステランティスは最先端の製品をタイムリーに市場投入することが可能になります。ステランティスは人々の移動の自由を最も効率的で、なおかつ適正な価格で継続的に提供してまいります。」と語った。
