およそ30年続いた平成の時代(1989年~2019年)に発売された、多くの国産新型車の中から印象深く、記憶に残るモデルを紹介していく。その第1回目は、平成が始まったその月に発表されたSUBARU(スバル)・レガシィだ。
平成を語るキーワードの一つとして、長期にわたる空前の好景気“バブル景気”がよく知られているが、その兆しは昭和61(1986)年頃からあらわれていた。内需拡大にあわせ、国内自動車メーカーは輸出依存から国内販売へと大きく転換。好景気を背景にトヨタ・セルシオ、日産・シーマといった超高級車や、トヨタ・ソアラやホンダ・プレリュードといったスペシャルティカーが市場に投入され、高価格帯のモデルも信じられないようによく売れた。
一方、SUBARU(当時、富士重工業)は、バブル景気直前の円高不況下、米国市場での販売不振や円高により営業利益に匹敵する巨額の為替差損を被り、経営再建が喫緊となっており、その“いい波”に乗り切れずにいた。
当時のスバルのモデルラインアップは、商品力が低下したレオーネを中心にドミンゴ、ジャスティ、アルシオーネ、レックス、サンバーというもので、販売競争では苦しい戦い強いられていた。そこへ満を持して投入されたのが、レオーネに代わる主力モデル、レガシィだった。
レガシィは同社の新時代を担う国際戦略車として、また、クルマに対する審美眼が高まってきた国内ユーザーに向けたモデルとして、クルマの本質機能であり、本来の魅力である“走り”のクオリティ、機能、品質を国際的な水準まで高めた。
レガシィのボディタイプはセダンとステーションワゴンがあり、特にステーションは当時、国内で“商用バン”からの発展型だったステーションワゴンに対し“乗用車”由来のステーションという新ジャンルを切り開いたモデルでもある。
商用バンには高い要求であった優れた静粛性や、居住性の良さを備え、何よりターボエンジンによる高い動力性能と、優れた操縦安定性をもたらす四輪駆動(スバルでは全輪駆動=AWD)を組み合わせ、当時の国産車にはなかったステーション像を創出した。
折しも、1990年代初頭にRVブームが巻き起こり、人々はクルマにステータスだけでなく多用途性や機能性を求めるようになった。また、当時は冬場のスポーツとしてスキーが定番でありスキー場は賑わい、休日に家族や仲間でゲレンデへ安心して行けるクルマが必要だった。クルマ本来の良さに加え、こうした世相も追い風となりレガシィ(ワゴン)はスポーティなステーションワゴンとして人気モデルとなり一時代を築いた。
また、第2世代へと進化したレガシィには、ステーションワゴンの他にSUVタイプの“アウトバック”が加わり、これが米国市場で大ヒット。経営基盤復活の足がかりとなり経営再建も実現した。レガシィの骨格でもある水平対向エンジンとAWDの組み合わせは、シンメトリカルAWD(All Wheel Drive)として、現在もスバルを支えるコア技術の一つとなり進化を続けている。
【車両本体価格(当時)】
セダン=127万7000円~249万5000円/ワゴン=162万円~271万2000円
【参考:クルマを取り巻く数字。平成元年/平成30年を比較】
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- 大卒初任給平均(男):16万900円/21万100円(平成元年比1.3倍)
- 大卒初任給平均(女):15万5600円/20万2600円(同1.3倍)
- ガソリンの小売価格全国平均(1リッター):116円~120円/141円~160円(同1.22倍~1.33倍)
- 自動車総保有台数:5513万台/8156万台(同1.48倍)
- 全国高速道路供用総延長(㎞):4407㎞/8923㎞(同2.02倍)
【平成生まれのクルマたち②】はこちらから