【河村康彦 試乗チェック】メルセデス・ベンツ EQE 350 4マティック SUV ローンチエディション:走行抵抗低減や緻密な温度管理等の“電費”向上策が奏功

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「市場の環境によっては」という微妙なエクキューズ付きながら、2030年までに全てのニューモデルをピュアEVとする可能性を示唆し、実際に車名の先頭に”EQ”の2文字が与えられたピュアEVのニューモデルを、次々と世に送り出しているのがメルセデス・ベンツ。ここに紹介するのもそうした中の1台。2023年8月に日本での受注が開始されたばかりの『EQE SUV』である。

車名からも察しが付く通り、このモデルは「EQEのSUVバージョン」にして「EQS SUVの弟分」という位置づけ。セダンのEQEに比べると全長と全幅は90㎜短く25㎜幅広く、全高は175㎜のプラス。一方、全長が5.1mを超えるEQS SUVに比べると4.9mを下回る長さは、明確に短い一方で全幅はわずかに5㎜しか狭くなっておらず、高さは55㎜のマイナスとわずかに控えめなサイズを持つ。

もっとも、それでも全幅は2mをオーバーしホイールベースも3m超だから、少なくとも日本では”巨体”という印象に違いはない。ただし、前出長いホイールベースから危惧をされる最小回転半径は、最大舵角が10°と大きいリヤアクスルステアリングを標準装備とすることで、多くのコンパクトカーのそれすらを凌駕する4.8mというデータを叩き出しているのには驚くばかりでもある。

そんなこのモデルの見た目の雰囲気は、エクステリアもインテリアもすでにテストドライブを行ったEQS SUVのそれに類似をするもの。まずエクステリアでは、全長に対して長いホイールベースやブラックパネル化されたフロントマスク。

左右が繋げられた細身のテールランプに、テールゲート中央部の”スリーポインテッドスター”のエンブムレムなど特徴的なディテールが共通するし、ダッシュボードも全幅がディスプレイ化された”MBUXハイパースクリーン”よりはややシンプルに映るものの、それでもそのデザインはやはり十分に未来的な仕上がりである。

率直なところ、ピュアEV専用に構築されたプラットフォームを共有することもあってか、その乗り味にもかなりの近似性が感じられた。今回のテスト車は、二種類がラインナップされる日本導入仕様の中にあってはよりベーシックな位置づけとなる『350  4マティック』の、AMGラインパッケージやエクスクルーシブパッケージを標準装備とする”ローンチエディション”。

前後に2基の永久磁石同期モーターを備え89kWh容量の駆動用バッテリーを組み合わせて、WLTCモードで528㎞の一充電走行距離を生み出すというスペックは、同じく2基のモーターに107.8kWhのバッテリーを組み合わせ、593㎞の一充電走行距離を誇るEQS 450 4マティックSUVのデータには先行を許すものの、クルージング時に駆動系をモーターから切り離し、走行抵抗を減らして電費を向上させるフロントアクスルに設けられた”DCU”(ディスコネクトユニット)や空調のみならず、車両システム全体の温度管理に全般にヒートポンプを活用するといった設計の新しさゆえの新機軸の新採用や、250㎏ほど軽い車両重量によってより優れた”電費”値を誇る。

実際、短時間のテストドライブということもあって正確とは言えないものの、走行中メーターに表示された電費の数字は常に予想を上回った。もちろん、徹底した床下整流を行い、Cd値がわずか0.25と優秀な空気抵抗の小ささも功を奏していたに違いない。

一方、高い静粛性の中にもEQS SUVよりもロードノイズがわずかだけ余計に目立つなど、ヒエラルキーを感じさせる部分も。それも含め、サイズ面でも価格面でもわずかながらも身近になったと感じられるEQファミリーの最新モデルである。

(河村 康彦)

(車両本体価格:1369万7000円)

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