「笛吹けども踊らず」という諺がある。自動車業界に当てはめるとどんなことがいえるか。電気自動車の普及である。自動車メーカーは国内向けに徐々に対応モデルを投入し、傘下のディーラーに販売の強化を呼び掛けている。店頭にはPR用のカタログ、関連パンフレットなどを提示し、ユーザーに配布している。
それでも普及のスピードは遅い。扱う乗用車の3%にも満たないだろう。量販的にまずまずの販売実績を上げているのは日産の軽EV「サクラ」くらいである。普及しにくい理由は明らかだ。ユーザーにとっては不安があるからだ。
航続距離が十分でなく、充電インフラも整っているとはいえない。軽自動車がなぜ普及しやすいのか。短距離の移動が多いく、セカンドカー、サードカーであれば、保有が比較的楽という事情がある。
本格的な普及は、ファーストカーとして十分に活用することができないと意味がないともいえる。どうすれば「踊る」ようになるのか。不安を解消する努力をメーカー、ディーラーが一丸となって展開することにつきる。
航続距離の延長はコストがかかり、売価がますます高くなるので難問である。国や地方自治体の補助金拠出の上乗せに期待したいが限界がある。
いずれは量産によるコストダウンが可能になるだろうが、実際にはコストアップ要因によって、大幅な値上がりをしているのが実情である。内燃機関の技術開発の進化によってカーボンニュートラルを実現し、電気自動車の普及のネックをカバーする努力も必要と思われる。日本の電気自動車化が遅れているとの指摘はあたらない。それよりトータルでのカーボンニュートラル実現を追求すべきである。
(遠藤 徹)