【河村康彦 試乗チェック】トヨタ・シエンタ 見た目と裏腹な(?)運動性能

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5ナンバー枠を維持しつつ室内空間を着実に拡大

トヨタのミニバン・ラインナップ底辺に位置する『シエンタ』が7年ぶりにフルモデルチェンジ。今回も日本独自の”5ナンバー”の規格内に収まったボディサイズは従来型とほとんど変わらず、ホイールベースに至っては完全に同一値での登場だ。

全幅1700㎜以下の5ナンバーサイズを継承した

こう聞くと、「なんだ骨格はキャリーオーバーなのか…」と早合点をされてしまうかも知れないが、実はここは完全なモデルチェンジ。トヨタが”TNGA”を謳う最新のプラットフォームへと変更されていて、そこでは「高いキャビン強度と軽量化の両立。優れた操縦安定性の確保や、細かな振動の低減による乗り心地の向上」等々と、それを採用したことのメリットが謳われている。

見えない骨格の部分も大きく刷新された

果たして、いざスタートをしてみるとその見た目から抱く印象とは裏腹(?)に、思いのほかしっかりとした運動性能を示してくれたのがこのモデルの走り。

パワーユニットには、発進用ギアを備えたCVTに最高120PSを発揮する1.5リッターの3気筒ガソリン・ユニットを組み合わせた純エンジン仕様と、同じく1.5リッターの3気筒ユニットをシステムに組み込んだハイブリッド仕様の2タイプが用意をされるが、今回テストドライブを行ったのが前者だったこともあってか、絶対的な動力性能や静粛性に関してはとりたてて特筆すべきようなポイントが見られなかったことは事実。

1.5リッターの3気筒ガソリン・ユニット

しかし、ステアリング操作に対する正確な応答性や4輪接地感の高さ、さらにはペダル踏力に対してリニアな効きを示してコントロール性にも優れたブレーキなどはいずれも感心をできる水準。走りの基本性能が従来型に対して大幅に進化をしていることは間違いがないのだ。

今回乗ったのは3列シートを備える7人乗りバージョンだったが、コンパクトなボディサイズゆえ3列目に与えられた空間はミニマムで、正直ここを大人が常用しようとするには苦しいつくり。それでも、いざというシーンで合法的に7人が乗り込めるメリットは大きいし、格納時にはほとんどその存在を気付かせずに5人乗り+広大なラゲッジスペースを備えたモデルとして使える巧みなパッケージングも見事な仕上がり。

2列目シート周りのゆとりが増した

前述のように従来型からほとんど変わらないサイズながら、1、2列間のタンデムディスタンスを80㎜、室内高を20㎜、上側方のヘッドスペースを60㎜プラスするなど、着実に室内空間が拡大されている点も見逃せない。

奇抜さを狙った外観や色づかいは封印

どこかで目にしたような欧州車風ルックスは、ちょっとオリジナル性に欠ける気もするものの、一方で従来型に感じられた敢えて奇抜さを狙ったような外観や色づかいが影を潜めた点に好感を覚える人は少なくなさそう。その使い勝手の良さから末永く支持を集めそうな1台である。

(河村 康彦)

(車両本体価格:[ガソリン]195万円~256万円[ハイブリッド]238万円~310万8000円)

 

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