アクセルONで自在なラインを描けるハンドリング
2021年夏にフルモデルチェンジを受け、翌2022年の3月からは日本でも発売されているのが、FRレイアウトをベースとするBMW車中では最もコンパクトな存在である2シリーズ・クーペ。
本項では以前に、最高184PSを発する2リッターのターボ付き4気筒ガソリンエンジンを搭載し、専用のボディキットやスポーツサスペンションなどを組み合わせた『220iMスポーツ』の印象をお届けしたが、今回取り上げるのは最高387PSという強靭な最高出力を誇る、3リッター6気筒のターボ付きガソリンエンジンを4WDシャシーと組み合わせて搭載する、さらにスポーティな『M240i xドライブ』。
ちなみに本体価格は前者の550万円に対して、遥かに高価な758万円。シューズが19インチと、より大径化されるなど装備の違いも少なくないが、ここまで価格差が開く主な要因と考えられるのは、前述のようにやはり採用するパワートレインが全く異なる点。何よりも、かつてこのブランドが”金看板”のひとつとしていた直列6気筒デザインの心臓を搭載する点に、大きな魅力を感じる人は現在でも少なくないだろう。
実際、走り始めるとどのようなシーンにおいてもゆとりに溢れた絶対的な加速能力はもとより、抜群に滑らかな回転のフィーリングやその上昇に伴うパワーの伸び感、調律の行き届いたサウンド等が何とも官能的。加えて、気になる変速ショック等皆無な一方でDCTにも負けない、タイトな駆動力の伝達感を実現させている8速ステップATの仕上がりが、動力性能全般の好印象をより増幅させてもいる印象だ。
4WDゆえにトラクション能力が高いことは言うまでもないが、それでもコーナーでは積極的なアクセルONの操作で、ステアリングを切り足すことなく自在なトレースラインを描けるのは、やはり後輪側に駆動力のバイアスが掛かったFRレイアウト・ベースゆえの挙動の持ち主という感覚。
ちなみに、基本は硬質ながらもその乗り味がかつて本項で報告した『220iMスポーツ』よりもむしろややマイルドにも思えたのは、テスト車が標準ではランフラット構造の18インチ・タイヤをノーマル構造の19インチ・タイヤへと履き替え、さらに電子制御式の可変減衰力ダンパーなどから成る”ファスト・トラック・パッケージ”をオプション装着していたこととも関係がありそうだ。
一方、4WDシステムの搭載などもあってその車両重量は1.7t超と、もはや決して”軽量”とはいえない状態。確かに、前述のように自在なハンドリング感覚などは達成されていたものの、それでももはや「コンパクトで軽やかなクーペ」とは紹介しにくくなってしまった点だけはちょっと残念にも感じられる。
(河村 康彦)
(車両本体価格:758万円)