バンコクのメルセデス・ベンツ・220SEd

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何年も通ったタイだが、2010年前後以前は庶民の乗用車といえばピックアップトラックが全盛だった…物品税が安いからで、仕事ない日は荷台に家族や友達。少し裕福で乗用目的なら、購入時に荷台に専用キャビンをドッキングしていた。

乗用車の高い物品税逃れで商用車いすゞピックアップを改装した乗用車:既製キャビンが荷台にピタリ見事に収まり一体化している/乗降は後方から。

そのキャビンは専用メーカーがあり、いすゞ、マツダ、トヨタ、日産など人気車種の荷台にピタリとはまる箱を製造、専門業者が架装して一丁上がりという仕組みだった。が、2010年を過ぎた頃から、純乗用車が増えてきたのは、庶民の所得レベルが上がったからなのだろう。

さて、毎回楽しみのクラシックカー、今回はメルセデス・ベンツ1963年型カブリオ。200シリーズのカタログ中でも最上級車だから、オーナーは裕福な人だったのだろう。正しくは、メルセデス・ベンツ・220SEdで、61年から65年まで製造された200シリーズの最上級モデルで、300SEセダンより高額だった。

ちなみに普通の220カブリオより3割も高く、180シリーズなら3台、フォルクスワーゲン・ビートルなら6台も買える値段だった。このカブリオに乗る最大の楽しみは、ゴージャスなインテリアだ。58年に生産終了の大型リムジン300Sの顧客吸収という目的があったようだ。

で、最高の材料で最高の仕上げは、昔ながらの熟練職人の手造り作業によるところが大と聞いた。生産するジンゲルフィンデン工場では、ボディーや幌も含めて量産ラインではなく、別のラインで仕上げられていたそうだ。

また、このクルマから両サイドのガラスが曲面になった。ドイツ流のブ厚い上等な幌は、寒い国らしく二重構造で、間には断熱材と遮音材が挟まれた入念仕上げだった。

が、高級車なのにステイタスなランドージョイント無しは寂しいが、ジョイントがないからコンパクトに畳めるので、オープン時の姿が綺麗なのが嬉しい特徴だった…古風なランドージョイントは高級車を飾るアイテムだが、格納すると後部が異常に高くなり後方視界が最悪だし不格好という欠点があった。

もし、クラシックカーマニアが求めるときは、年式が古いほど材料も仕上げも上等ということを覚えておくべきだ。合理化とやらで、年々良き特徴が失われているということだから。

(車屋 四六)

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車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。

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