【トヨタ・bZ4X/スバル・ソルテラ試乗】電費も走りも高い完成度。安心して乗れる最新BEV

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トヨタ/SUBARUの両ブランドにとって、初の量産本格BEVとして登場したトヨタ・bZ4X/スバル・ソルテラ。早速、東京から静岡まで約230キロを試乗してみたが、その高い実力には驚かされた。BEVに乗り換えを検討している人にもオススメだ。

230kmをテストドライブ

今年5月、いよいよ発売されたトヨタbZ4X/スバル・ソルテラ。新開発のBEV専用プラットフォームをはじめ、商品企画から設計、性能評価に至るまで、トヨタとスバルが共同で開発した最新BEVだ。

両ブランドにとって、初の本格量産BEVということになるが、そのプレス向け公道試乗会を見る限り、完成度にはかなりの自信があるようだ。この試乗会は趣向を凝らしたもので、東京~静岡~名古屋~金沢~軽井沢~東京と、全5区間に分けて関東・中部圏を一周するもの。全行程を合計すると約1200キロものロングランになる。もちろん途中には高速道路やワインディング路、渋滞する一般道もあり、BEVが得意とするシーンだけではない。仕上がりに自信がなくては企画できないルート設定である。

このうち我々が参加したのは、東京から静岡までの区間。朝、bZ4Xに乗って都内を出発、途中御殿場でソルテラに乗り換え、夕方に静岡市に到着するというルートで、走行距離は約230kmであった。

実用的なSUVとしての実力も十分

bZ4Xとソルテラは、ミッドサイズSUVのBEVで、フロントグリルの違いなどはあるが、基本的なハードウェアは同一。全長4690×全幅1860×全高1650mmのボディに71.4kWhの駆動用バッテリーを搭載。FWD車は最大出力150kW/最大トルク266Nmのモーターを搭載し、4WD車は最高出力80kW/最大トルク169Nmのモーターを前後に2基搭載する。一充電走行距離(WLTCモード)はグレードによって多少異なるが、bZ4Xの場合、FWD車が559km、4WD車が540km。我々の試乗車はbZ4X、ソルテラとも4WD車だった。

トヨタ bZ4X
SUBARU ソルテラ

基本構造はどちらも同じなので、室内のパッケージングや乗降性、基本的な操作性などは差がない。厳密に言うとソルテラはbZ4Xより最低地上高が30mm高いのだが、体感できるほどの違いは感じられなかった。

最新のミッドサイズSUVらしく、乗降性や視界は不満がない。後席や荷室も十分なスペースを確保しており、使い勝手は通常のガソリン車とほぼ同等。EVであることは別として、単純にSUVという観点から見ても充実した内容を備えている。シートはやや大き目で座り心地も良質。この点でも満足できる。

機能性を感じさせるインパネ

インパネ周りのデザインはやや特徴的。全体の高さを抑えつつ、メーターはやや上方の見やすい位置にモジュールとして設置されている。テスラを筆頭にEVのインパネはフラットなデザインが多いが、それとは印象が大きく異なり機能感が強い印象だ。メーターの表示は情報量が絞られシンプルでわかりやすいが、個人的には文字がもう少し大きいとより見やすいように感じられた。なお、昨秋のデザイン初披露時には、ステアバイワイヤシステムと上半分がない異形ハンドルが話題になったが、これはまだ国内仕様では装備されず、通常の円形ハンドルを装備。したがってバック時を含め、操舵は普通の感覚で行なえる。

インパネ中央部は上に13.3インチの横長なセンターディスプレイ、その下に機能ボタンを配置した正則のレイアウト。多くの機能が整然とまとめられており、洗練された印象だ。ただ一つ一つのボタンが小さいのが難点。慣れていないこともあり、走行中はちょっと戸惑うこともあった。

前進・後退のシフト操作は、センターコンソール上の中央のシフトスイッチで行うが、外縁のシルバー部を押しながら回す方式。スイッチ全体をダイレクトに回す方式や独立したボタン式に比べて一つアクションが加わることになるが、それによって誤操作はしにくい。ドライブモードのセレクターは別に設けられているので、操作の頻度はそれほど多くないのだが、ダイヤルの操作感は滑らかで心地よかった。

ダイヤル式のシフトスイッチ

BEVは静粛性が高い分、オーディオにもこだわりたいところ。bZ4Xは標準でJBLが装着されており、ソルテラの試乗車は上級のET-HSグレードなのでハーマンカードンのオーディオシステムが装着されていた。試乗しながらのチェックなのでじっくりと聴けたわけではないが、傾向としてはJBLは音像型でこじんまりとまとまった印象、ハーマンは音場型で空間の広さを感じさせる印象だったが、これはどちらが良いか悪いかではなく好みの問題。また聴く音楽によっても相性があるので一概には言えない。ただ、両ブランドともハーマンインターナショナル内のブランドなので、似たような音になるかと思いきや、想像以上に違いが大きいのは意外であった。残念なのは、bZ4Xではハーマンは選べず、ソルテラではJBLは選べないこと。この辺りの選択にもう少し自由度が欲しいところではある。

bZ4Xは乗り心地優先、ソルテラはスポーツ寄り

ハードウェアの大部分を共用するbZ4Xとソルテラだが、セッティングの方向性は異なっており、それは今回の試乗でもハッキリと体感できた。大まかに言うとbZ4Xはコンフォート寄りで、ソルテラはSUVとしてはスポーツ寄り。本格BEV第1弾という事は、まずはそれぞれのブランドのガソリン車やハイブリッド車から乗り換えるユーザーが中心になる、ということで、両ブランドの多くのユーザーの指向や好みに合わせたセッティングといえる。

まずbZ4Xは、必要以上にボディ全体を締め上げず、適度に緩さを残したバランス型。無駄な動きを一切排除するようなカッチリ型ではなく、あえてやや曖昧なところを残し、ドライバーにも後席乗員にも優しい、疲労感の少ない快適な乗り心地だ。

一方ソルテラは、やや張りのある足回りで路面の凹凸も正確に拾い、ステアリングの操舵感もシャープさが増す。パドルシフトで回生の強弱を選べたり、bZ4Xでは標準とエコの2つのドライブモードも、ソルテラではパワーモードも加えて3モードにするなど、ドライバーの選択肢を増やしているのもスバルらしいこだわりといえる。ただしソルテラのパワーモードはbZ4Xの標準モードとほぼ同じ。なのでソルテラなら、よりハイパワーが引き出せるというわけではない。

バッテリーの容量もモーターの出力も同じため、パワーの出方はどちらも変わらない。アクセルを一気に踏み込むと、瞬時に急加速するモーター駆動ならでは心地よさが味わえるが、日常域で普通に走る時はBEVとしてはややマイルドなパワーの出方をする。開発陣によると、もっと尖ったパワーの出し方もできるというが、そうなるとバッテリーに掛かる負担が大きくなり、劣化が早くなるという。バッテリーの寿命はBEVの大きな課題であり、ユーザーが不安を感じる大きな要素でもある。さらに安全面も考慮し、マージンを大き目にとったセッティングになっているようだ。

ただ結果として、普通のクルマと同じ感覚で乗ることが出来、非常に扱いやすい。正直にいうと試乗中も時々BEVであることを忘れてしまうほどであった。アクセル操作に対して、必要以上に敏感ではないから、長時間のドライブでも疲労度は少ない。SUVということを考えると、最適なバランスだろう。

電費は優秀、安心してドライブできる

一方、BEVとして気になる電費性能も優秀だ。ただ、走り方や走る場所で大きく変わるのは、やはりBEVである。スタート直後、首都高速ではスムーズで力強い加速に気を良くしてアクセルを踏み込み、さらに暑いのでエアコンもガンガンに効かせたらメーター内の航続距離が一気に減ってしまったので少々焦ったが、東名高速で巡行域に入ると航続距離の減り方も落ち着き、我々の心も落ち着く。とはいえ、乗り換え地点の御殿場には200キロの走行可能距離を残して到着するよう指示されていたので、そのまま箱根の峠を登って行くにはちょっと心細い。

そこで、箱根の手前で充電スポットをナビ画面上で確認。その満空も一目でわかり、安心して充電に向かうことができるのは心強かった。結局、箱根入口の町役場で充電し、そのまま箱根新道、芦ノ湖スカイラインというルートを通って御殿場に入ったが、予想通り上り坂の連続は電力をかなり消費する。それでも御殿場には、航続可能距離は200キロに少し余裕を残しての到着となった。

午後はソルテラに乗り換えて、静岡市内に向けて出発。沼津で東名高速を降りて、途中県道を通過して国道1号線を入り、清水から日本平を抜けてゴールを目指す。東京-御殿場間は基本的に上り坂なので電費に気を遣うが、今度は下り坂になるので驚くほど減らない。というより増えたりする。ここがガソリン車の燃費とBEVの電費の違いでもある。ガソリン車は途中で燃料が自然に増えることはないが、BEVはそうではないので、一概に比較するのがちょっと難しい。

ゴールの静岡には、走行可能距離50キロ以上で到着する指示であったが、結果的には十分過ぎるほどの余裕で到着した。今回の試乗は航続距離の限界を試すような内容ではなかったものの、これなら十分。ガソリン車からの代替を考える場合、BEVはどうしても航続距離が心配になるが、よほど長距離を一気に走るような使い方をしない限り、実際には杞憂に終わるだろう。静かで快適なSUVを検討している人は、ぜひ一度試乗して見ることをオススメしたい。(鞍智誉章)

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