ハイブリッド、それも本格的なフルハイブリッド(ストロングハイブリッド)といえば日本車では当たり前の存在だが、これは世界的に見れば少数派。欧州車ではハイブリッドといえば、簡易的な48Vマイルドハイブリッドが主流である。
が、その輸入車の中で唯一のフルハイブリッド搭載車として登場したのが、ルノーの「アルカナ」だ。全長4570mmのCセグメントのクーペSUVで、1.6Lのガソリンエンジンにモーターを組み合わせた独自のハイブリッドシステムを搭載しており、高い燃費性能と実用性を両立。それでいて、価格は429万円と輸入SUVとしてはお手頃なプライスも実現しているのも特徴の一つといえるだろう。
都会的かつスポーティなエクステリアとインテリア
外観は流麗なクーペスタイルだが最低地上高は200mmを確保し、SUVらしさをしっかりと強調する。フロント周りから見ると、プラットフォームを共用するキャプチャーと共通する印象もあるが、実用的なコンパクトSUVであるキャプチャーに比べ、全高の低いアルカナはスタイリッシュで都会的な雰囲気。コンパクトながら存在感は十分だ。
スポーティな外観と同様、室内も黒基調でまとめられ、精悍なイメージ。シートやステアリングなどは赤のステッチで縁取られ、全体の印象を引き締めている。スポーティ感が強く、ハイブリッド車=エコ優先の感覚はまったくない。シートの座り心地は良く、視界も良好だった。
ルーフ後端の下がったクーペスタイルのため、サイドから見ると後席が狭そうに見えるが、実際に入ってみると意外なほど後席スペースが広い。しっかりとお尻を落とした姿勢で座らせることで、頭上空間も足元空間も窮屈さは感じず、どちらかというと前席スペースの方が狭く感じるほどである。この辺りのパッケージングは見事。ファミリーユースでも十分こなせる。
スムーズな走りで乗り心地も優秀
スポーティーな外観スタイルとインテリアの雰囲気からは、切れ味の鋭い豪快な走りを想像させるが、実際に走り出してみると意外なほど穏やかで、扱いやすい性格だ。特に発進から時速80キロ辺りまでの速度域での扱いがスムーズで、日本の道路環境に良くマッチしている。40~50キロまではEV走行、そこを過ぎるとエンジンが加わるが、遮音性が高いこともあって、そのつながりも気にならない。またステアリングの操舵感も素直で、軽すぎず重すぎずバランスがいい。しなやかな足回りで乗り心地も優しく、日常使いにも最適な仕上がりである。
パワーが物足りない場合は、インパネ中央に並んだボタンのうち、花びら(?)みたいなマークがついたボタンを押せば、走行モードをパワー優先に切り切り替えることができ、加速に力強さが増す。極端にパワフルになるわけではないが、日常域で使うのには十分。坂道や合流でパワー不足を感じることはないだろう。
搭載するハイブリッドシステムは「E-TECHハイブリッド」と呼ぶルノー独自のもので、NAの1.6Lエンジンに2つのモーターを組み合わせたものだが、エンジンとモーターの間にドッグクラッチを用いてダイレクトな変速を可能としているのが特徴だ。ドッグクラッチは素早い変速が可能なためモータースポーツでは多く採用される反面、変速ショックが大きいため一般的な乗用車では敬遠されるが、このルノーのシステムでは電子制御によって変速時のショックをなくし、スムーズかつ素早い変速を可能にしている。
このシステムによって、高効率にパワーを引き出し、スムーズな走りを可能にしているわけだが、ドライバーとしては特に気にすることなく、操作も普通のクルマと同じ。特に意識する必要はないし、また変速時に音やショックもないので気になることもない。
タウンスピードを超えて、100キロ前後から上は完全にエンジン主体となるが、加速は緩くなり、NAの1.6Lエンジン相応という感じになる。ただし新東名の120キロ区間でも楽に巡行できる実力は備えているから、普通に走る分には過不足ない。静かな室内で心地よいドライブを楽しむのに最適なモデルだ。その上で燃費はWLTCモードで22.8km/Lと極めて優秀。お買い得な車両価格とあわせ、コストパフォーマンスも抜群である。(鞍智誉章)
≪ルノー・アルカナを動画で見る≫【アルカナ】ルノー独自のハイブリッドシステムにより、従来のストロングハイブリッドにはない爽快な走りを持つクーペSUVが国内デビュー。