一般道と都市高速でフットワークに違い。e-4ORCEなら…!?
2020年の7月に華々しく発表はされたものの、その後、待てど暮らせどテストドライブが叶わなかった日産発のピュアEV第2弾『アリア』に、ようやく試乗できる機会がやって来た。
ただし、発売を前に開催された試乗会に用意されたのは、2種類が用意される駆動用バッテリーのうちそれが66Kwhと”低容量”で、駆動方式も前後2基のモーターが巧みに連携と話題の”e-4ORCE”が謳われる4WDシステムを備えたモデルではなく、前輪駆動方式の要は最もベーシックな仕様の持ち主。
それでも、装備の充実度は十分に高く、専用のコネクト機能を備えたナビゲーションシステムやタイヤ空気圧警報システム、ヒーター付きの本革巻ステアリングや電動式センターコンソールボックスなどが標準装備。インテリア各部の質感なども特筆すべき高さで、2面の大型ディスプレイを並べたメーターパネルのちょっと未来的なデザインなども含め、全体的な作りのレベルが欧州発のプレミアムモデルと十分対抗できる高さにあることを実感させられた。
スタートの瞬間からの滑らかな加速感と静かさは半ば予想をした通りだが、速度が増して行っても変わらぬ静粛性の高さはちょっと驚異的ですらある。ただし、吸音材が多用されているのか、それが無響室に入れられたように音を吸い取られる感じにも通じる点には違和感を覚える人もいるかもしれない。このあたりが、必ずしも静かなら静かなほど良い…とはいえない難しさかも知れない。
床下に駆動用バッテリーを敷き詰めたEVゆえフロア高はやや高めだが、大人4人にとっては十分に広いキャビン空間の持ち主であることは確か。特に、前席の足元周辺が広々としている印象を強く受けるのは、空調ユニットをコンパクト化してフロントフード下に収めることが可能になったということが大きく効いていそうだ。
試乗会が開催されたロケーションと、時間的な制約から今回のテストドライブは首都高を中心に走行することになったが、そこで少々残念に感じられたのは、試乗会場から最寄りのランプに乗るまで感じられていた上質なフットワークのテイストが、首都高上の継ぎ目が連続する区間に差し掛かると失われ、思いのほかヒョコヒョコとしたややピッチングモーションが目立つ乗り味になってしまったこと。これを試乗後に開発陣に申し出ると、どうもそうした傾向はすでに認識をされている雰囲気。
であれば、恐らく改善されるまでにさしたる時間は掛からないのではと期待をしたくなる。前出”e-4ORCE”搭載のハイパワー・バージョンに乗れる日も楽しみな日産渾身の一作だ。
(河村 康彦)
(車両本体価格:539万円)