狩猟体験で「命」と向き合う
エコツアーの中で大きな割合を占める「自然体験」。それは、自然と隔絶された都会生活を送る現代の人々にとって、新鮮な感動を呼び起こすものだろう。でも、ほんの少し前まで、自然の中を訪れることは、人々の食生活に直結したものだった。農耕による作物と同じくらい、山菜採りや釣り、狩りなどが栄養補給に欠かせないものだったのだ。
だが、その中で狩りについては、牧畜や輸入食肉の普及もあり、狩猟人口の減少とともに忘れ去られつつある。その結果、シカやイノシシ、外来生物であるハクビシンやアライグマによる農作物の被害も見過ごせないレベルにまで広がっているのも事実だ。
Hunt＋（ハントプラス）は、千葉県いすみ市の里山で狩猟体験を中心とした自然体験を開催している団体。ほぼ毎週日曜日に行われている日帰り狩猟体験は、人と野生動物の関係を学ぶ座学に始まり、実際の山でのフィールドワーク、ワナの仕掛け方講座、房総ジビエ肉の試食などが盛り込まれたもの。本格的な狩猟体験まではいかないが、ケモノ道をかき分けていくハンター目線での山登りは、整備された遊歩道を歩くだけの自然観察とは全く違った体験が味わえる。観光施設から逃げたものが増殖して広がっているキョン（台湾原産のシカ）に出会える可能性も高い。
また、かつてTVの報道番組のディレクターとして、またフリーの戦場写真家としても活躍した後に狩猟の世界に飛び込んだ、代表兼ハンターガイドの石川氏の話を聴くだけでも貴重な体験になるだろう。
ジビエについては最近注目されているけれど、単に目新しい料理というだけではない。動物の命を刈り取り、いただくというもの。より深い体験をしたいなら、1泊2日の狩猟体験もある。日帰り体験と大きく違うのは、実際に野生動物の屠殺、解体を体験した後に試食するということ。そんな残酷な、と思う人もいるかも知れない。でも、忘れがちだが日常食べている肉にしたって、そういった流れを経ていることには変わりないのだ。
野生動物は食べるだけでなく、生活素材としても多方面に利用されてきた。1泊2日の体験ではキョン革ワークショップの時間もあり、日本で古くから輸入され、伝統工芸の素材として使われてきたキョンの革で小物入れやアクセサリー作りが体験できる。動物と人間の関わり、そして「命をいただくこと」の意味を改めて実感してみよう。その体験は、これまで持っていた「かわいそう」的な感情からくる自然保護のイメージを打ち破ってくれるだろう。
【問い合わせ】ハント・プラス合同会社 千葉県いすみ市山田6229 ☎ 050-6874-1464（HPに問い合わせ＆申し込みフォームあり）
【アクセス】圏央道・市原鶴舞ICから国道297号線～国道465号線などで40分
【HPアドレス】https://www.hunt-plus.com
（上田 泰久）
■日帰り狩猟体験
Hunter Trail ～猟師と山とケモノ道～
ほぼ毎週日曜の午後開催、所要約3時間半前後。〈1〉ヒトと野生動物（座学）/〈2〉いきものフィールドワーク/〈3〉ハンタートレイル（ハンター目線の山登り）/〈4〉ワナの仕掛け方講座／〈5〉房総ジビエ肉の試食/〈6〉野生のキョンに出会おう（※一旦解散後に自家用車などから見学・野生のため会えない場合もあり）
参加対象：4歳前後（大人同伴）～75歳くらいまで。最少催行人数：2名以上、参加費：大人（19歳以上）6000円、18歳以下4000円、70歳以上4400円。※1名のみでの催行・参加は9800円。団体割、女子会割などあり。詳細はHPで。
“生きる”を感じる狩猟体験 「Into the Wild」
1泊2日での狩猟体験。日帰り体験に加え、1日目はナイトサファリ、夕食＆ジビエde宴、2日目には屠殺・解体・試食、キョン革ワークショップなどがある。狩猟をやりたい人にとっても参考になる本格メニューだ。大人向けと家族向けがあり、大人向けは参加対象：大学生または18歳以上、参加費：2万6000円。家族向けは参加費：高校生まで1万6500円、大学生または18歳以上2万4000円。開催期日は未定、ただし大人6名からの受注催行も可能。
