【河村康彦 試乗チェック】フォルクスワーゲン・ゴルフ ヴァリアント 専用ボディがもたらすものは

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既成概念にとらわれない新機軸がいっぱい

ひと昔前のブームだった際には”より取り見取り”だった国産のステーションワゴンも、昨今はスバル・レヴォーグが孤軍奮闘をしているように思える程度で、選択肢はグンと限られてしまったもの。

一方、ヨーロッパ発のモデルにはまだまだ魅力的に映るものが少なからず存在。そうした中の一員として新たに名を連ねたのが、2021年7月に日本で発売した新型ゴルフに追加されたステーションワゴンだ。

フォルクスワーゲンの流儀で『ヴァリアント』の名が与えられたこのモデルは、お察しの通り先日フルモデルチェンジを行った新型ゴルフ=通称”ゴルフ8”がベース。ただし、ゴルフのステーションワゴンはハッチバック・モデルが3代目の時に初登場をしているので、今回のモデルは「ヴァリアントとしては6代目」となる。

ハッチバックに比べ、ホイールベースとリヤオーバーハングが延長され伸びやかなスタイルを手に入れた

というわけで、パワーユニットや装備に関しては「先行発売されたハッチバックに準ずる」ということになる最新のヴァリアントだが、今回特筆すべきトピックは、ハッチバックよりも長いホイールベースが与えられたということ。

その差は50㎜で、ハッチバックと共通ホイールベースだった時代のヴァリアントと比べると、より余裕の大きい後席での足元スペースにその恩恵が顕著。リヤオーバーハングの延長によりボディ全長も345㎜のプラスなので、ハッチバックを遥かに凌ぐラゲッジスペース容量や、これまで以上に前傾角の強さが演出され、伸びやかに見えるプロポーションなどが特徴になっている。

ラゲッジスペースの容量もアップした

一方、車両重量に大きな違いがないこともあって、走りの印象は基本的にハッチバックのそれを踏襲だ。

今回試乗のモデルは1リッターのターボ付きエンジンに48ボルト式のマイルドハイブリッド・システムを加えた心臓の持ち主だったが、基本的には7速DCTが早めのアップシフトを繰り返すセッティングで、4000rpmではやや耳に付く3気筒特有のノイズが気になる場面はほぼ皆無で、かつ最大トルクが200Nmと大きいことで力不足を感じるシーンも殆どナシ。素直なハンドリング感覚はVW車ならではと言いたくなる仕上がりで、16インチのシューズを履くことで乗り味もマイルド。

素直なハンドリングとマイルドな乗り味

「“リッターカー”なのに300万円超えとは…」と考えるととてつもなく高価にも思えるが、排気量を筆頭にそんなかつての概念にとらわれない新機軸に溢れるのがこのモデルと捉えるべきなのだろう。

(河村 康彦)

(車両本体価格:305万6000円~389万5000円)

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