後悔しないキャンピングカー選びのポイントとして、近年は“電気の供給能力”が重視されている。快適な車中泊に欠かせないテレビや冷蔵庫、電子レンジ、スマートフォンの充電まで、これらすべては電気によって稼働することがその理由のひとつ。特にエアコンの有無と稼働時間は、この夏一番の関心ごとでもあった。
国内トップビルダーである「ナッツRV」(本社:福岡県遠賀郡)は、この電気に関する分野でもトップの開発能力と実績を誇る。独自開発の急速充電システム「エボリューション(EVO)」は、課題であった電力不足を解消。今年はさらに進化した次世代ユニット「ハイパーエボリューション(ハイパーEVO)」も発表した。
この新ユニットは、より高効率かつ高速化した新システムの充電能力に加え、リチウムイオンバッテリーの採用で従来よりも長時間の家電製品の使用を実現した。今回はその優れた電力の供給能力を分かりやすく紹介しよう。
革命を起こしたEVOの充電能力
大半のキャンピングカーは、ベース車両のメインバッテリーとは別に、生活家電や設備を稼働させるための電力源、サブバッテリーを搭載している。近年は電子レンジやエアコンなど、消費電力自体が大きい家電製品のニーズも増しているため、このサブバッテリーへの負荷も増大。消費した電気を翌日の走行充電だけではリカバリーできない問題が生じていた。
この電力不足の状況を一変させたのが、ナッツRVの開発した電装システム「EVO」の登場だ。
電気をサブバッテリーに充電する方法は、ソーラーパネル充電などもあるが、一般的にエンジンの駆動を介した走行充電がメインとなる。EVOの優れているポイントは、この走行充電の経路を一から見直し、後のハイパーEVOにも継承される2つの新たな充電経路を新設。組み合わせて使うことで、従来よりも早くかつ効率よく満充電にすることができるよになった点だ。
直結・昇圧充電で充電時間を高速化
そのEVOシステムの次世代機として今年、新しいユニット「ハイパーEVO」が導入された。その一番の特徴は、電気をより高効率かつ高速で充電する進化したハイパーEVOユニットの機能と、従来よりも家電製品の長時間使用を可能にしたリチウムイオンバッテリーの初採用だろう。
ハイパーEVOユニットの新システムでは、2つの充電モードを選択できる新機能が搭載された。
ひとつは、走行充電の時間が十分にとれない場合や、なるべく早く充電したい時に選択する、いわゆる急速充電の「ラピードモード」だ。このモードは、エンジンで発電した電気を高い電圧のまま、100〜120Aでサブバッテリーに充電する。搭載している100Ahのリチウムイオンバッテリー4個の電気が仮に空の状態になっても、ラピードモードで4時間ほど走行すれば満充電になる計算だ。
一方で、電気がそれほど減っていない場合や長時間の走行を予定している際には、バッテリーへの負荷が少ない「ケアモード」を選べるなど、状況によって使い分けることが可能になっている。
リチウムイオンで家電使用時間も延長
ハイパーEVOには、衝撃や外気温の変化にも強いリン酸鉄リチウムイオンバッテリーが採用されている。鉛バッテリーとの比較で約6倍の電池寿命を誇ることに加え、特性として大容量の電力充電および放電に適正があるため、家庭用エアコンや電子レンジなどの消費電力が多い家電とも親和性が高い。
実際に、8月初旬の暑い時期に車内で家庭用エアコンと冷蔵庫を長時間連続使用し、消費電力を測る実験を行ったことがある。充電設備は400Wのソーラー充電のみでエンジンは停止状態にして、朝の9時から夕方18時まで稼働させたところ、驚くことに71%の電気がまだ残っている結果となった。ちなみに、71%に減った電気容量を満充電にするためには、ラピードモードで1時間強走行すればいいことになる。
ただ一つ気をつけたいことは、リチウムイオンバッテリーは満充電のままで長時間放置すると劣化が早まる性質があることだ。
この劣化を防ぐため、ハイパーEVOにはバッテリーが80%以上充電されないようにするストップ機能とバッテリー単体に内蔵されたBMS(バッテリーマネージメントシステム)とのダブルセーフティ構造も備わっている。
ハイパーEVOは現在、ナッツRVのフラッグシップモデル「ボーダーバンクス」、キャブコンの「クレア」シリーズに搭載モデルが設定されている。また、ハイパーEVOのノウハウを融合させたリチウムイオンバッテリー採用の「エボライト」システムを搭載した「クレソンジャーニー・エボライトLi」も同時に発売されている。