【2021年逆輸入モデル】実はワタクシ輸入車でした

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以前に比べ、輸入車(外車)は随分と身近に感じられようになってきたが、やはりまだまだ憧れや“特別感”がある。そうした輸入車は、すべてが海外ブランド(メルセデス・ベンツ、ルノー、アルファロメオ、ジャガー、ボルボ、キャデラック…等)に限ったものではない。実は、日本メーカーの海外工場(子会社)で製造され、日本に運ばれて(輸入されて)販売されるモデルも輸入車である。俗に逆輸入車などと呼ばれたりする。日本ブランドでありながら、ちょっと特別感(?)が味わえる“実は輸入車”を紹介しよう。

トヨタ・ハイラックス

2021年4月末現在、国内で新車として販売される唯一のピックアップトラックがトヨタ・ハイラックスだ。初代モデルは1968年発売で、2018年に誕生50年を迎えたばかり。2004年以降、一時国内で販売されなかったが、国内から求める声に応える形で2017年に販売が復活。その現行モデルが、タイで生産される輸入車だ。

ピックアップトラックといっても、シートは前後2列配置の5人乗り(ダブルキャブ)で乗用車のように仲間と一緒に移動ができる他、後席の6:4分割チップアップのシートアレンジもあり利便性も高い。荷台は奥行きが約1.565m、幅1.38~1.105mと十分に広く、500㎏まで荷物を搭載可能だ。

エンジンはディーゼルターボでトルクが力強く、車体骨格はランドクルーザーと同じ、はしご状で堅牢なラダーフレーム構造を採用し、パートタイム4WDシステムにより悪路走破性も高い。仕事もオフタイムも必要な荷物をたくさん積み、いつもよりもっと奥地へも分け入られそう。こうしたタフな使い方にも応えられるのもハイラックスならではだ。

〈希望小売価格:387万6000円~347万1000円〉

ホンダ・NSX

日本が世界に誇れるスーパースポーツカー、ホンダ・NSXの第2世代モデル(2017年~)はアメリカで生産され、日本に輸入される輸入車だ。初代モデル(1990年~2005年)は、当時のスーパースポーツカーであるポルシェ、フェラーリに比肩するモデルとして世界を驚かせたが、燃費・排出ガスに対する規制が各国で強化され、規制対応が困難なことから止む無く生産終了となった。

それから12年の時を経て発売された第2世代(現行モデル)は、V型6気筒3.5リッターツインターボエンジンに、3モーター式のハイブリッドシステム“SPORT HYBRID SH-AWD”を組み合わせ、スーパースポーツ性能(システム合計:最高出力581PS/最大トルク646Nm)と環境性能を見事に両立させた。

ミッドシップマウントされる3.5リッターエンジンをアシストするモーターと、前輪に二つのモーターを搭載。特に前輪の二つのモーターは、コーナーで左右輪個別に出力を変えることで、クルマの向きが積極的に変える働きを見せ、これまで以上の“オンザレール”の感覚をもたらした。タイムラグが微小のモーター制御がなせる技といえる。

〈希望小売価格:2420万円〉

ホンダ・シビックハッチバック/シビック タイプR

シビックハッチバック

ホンダ・シビックは1972年の初代モデル発売以降、最量販のベーシックカーでありグローバルモデルとして、ホンダの屋台骨を支えつつ進化を重ねてきた。その後、そのポジションは後進のフィットに代わり、第8世代モデルで一旦国内販売を終了。第10世代で国内販売が再開され、セダン(国内生産)、ハッチバック(イギリス生産)、タイプR(イギリス生産)と、タイプごとに生まれが異なる状況だった。セダンは人気不振から昨年国内販売が終了したため“輸入車”2タイプの販売が継続されている。

シビックハッチバックは、実用的な5ドアハッチバックだがロー&ワイドを強調したスタイルで、リヤ2カ所のスポイラーやセンター2本出しのエキゾースト、18インチアルミホイールで“攻めた”スタイリング。パワーユニットはハイブリッドなしの1.5リッターターボエンジンのみ。6速MTも用意され、第8世代以前のシビックが持っていたスポーティな面を彷彿とさせている。

シビック タイプR

タイプRは、ハッチバックボディのハイパフォーマンスモデルで、ハッチバックとしての実用性を持ちつつもサーキット走行に対応できる高性能を持つ。マイナーチェンジでは、思い切り負荷がかかるサーキット走行での冷却性能と制動性能の向上と、その内容も実に硬派。名うての難コース、ニュルブルクリンク北コース(ドイツ)や鈴鹿サーキットでのラップタイム向上等でその進化ぶりを示している。

〈希望小売価格:(ハッチバック)249万8000円(タイプR)457万2000円~550万円〉

ホンダ・アコード

アコードもシビックに並ぶホンダの長寿モデルで、シビックを追いかけるように1976年初代モデルがデビュー。シビックより一回り大きい、ミドルレンジのグローバルモデルとして進化を続け、現行モデルは第10世代にあたる。第3世代モデル(1988年)では、アメリカで生産されたクーペが左ハンドルのまま販売されるなど、グローバルモデルとして“国際色”豊かなモデルだった。

ボディタイプはハッチバックやセダン、ステーションワゴン、輸入したクーペもあったが第9世代以降はセダンのみ、しかも海外生産(輸入車)となり、現行(第10世代)モデルはタイで生産され輸入される。

パワーユニットは第9世代以降ハイブリッド専用車となり、2モーター式のハイブリッド「e:HEV」が搭載されている。このハイブリッドシステムは、エンジンが効率よく稼働できる高速巡航時のみエンジンで駆動し、それ以外はモーターで駆動。この時、エンジンは発電役に徹する。ほとんどの市街地走行ではモーター走行になり、EVのようなフィーリングを常に味わえる。

〈希望小売価格:465万円〉

日産・KICKS(キックス)

2020年6月に発売されたコンパクトSUVのKICKS(キックス)もタイ生まれの“輸入車”。国内発売は昨年だが、そのルーツは5年前にさかのぼり、ジュークとエクストレイルの中間に位置するSUVとして、2015年に南米で発売。その後、中国、アメリカ、カナダ、タイと販売地域を徐々に広げ、日本も販売地域に加わったという海外由来のモデルだ。

日本仕様のパワーユニットは全車e-POWERで、直列3気筒1.2リッターエンジンは発電のために搭載され、その電気を使いモーターで駆動する。発電しながら走るので充電スポットを探す心配もいらない。

モーターはまさにスイッチ感覚でレスポンスがよく、加速も力強い。アクセルペダルを戻すと回生(発電)のため、エンジンブレーキのように減速が生じ、運転モードによってはアクセルペダルの踏み加減で車速をコントロールできる、新しい感覚「ワンペダルドライブ」の運転も楽しめる。日産の最新モデルらしく、運転支援技術「プロパイロット」や、急病等緊急事態に通報できる「SOSコール」も最新技術を標準装備する。

〈希望小売価格:275万9900円~286万9900円〉

日産・マーチ

リッターカーのコンパクトなハッチバックとして、マーチは1982年の初代モデル発売以来、日産のエントリーモデルのポジションを担ってきた。2010年以降発売されている現行モデル(第4世代)からタイ生産の“輸入車”となった。

第2世代モデル以降、現行モデルも含め外観デザインに丸みを帯びたルーフラインや丸目のヘッドライト等を採用することで、親しみやすさと広いガラスエリアによる運転のしやすさを前面に打ち出している。特に第3世代からは、ビビッドな原色系のボディカラーの設定や、設定されるボディカラーの多さでボディカラーを“選ぶ楽しさ”も加わった。

また、日産直系のカスタマイズファクトリー、オーテックによる“もっとエレガント”に仕立てたコンプリートカスタマイズカー「ボレロ」や、モータースポーツファクトリーのニッサンモータースポーツインターナショナル(ニスモ)のチューニングによるコンプリートカー「マーチNISMO/NISMO S」も用意され、メインターゲットは女性でありながらも、幅広い層に向けたモデルを展開しており、これが“長寿”の秘訣かもしれない。

〈希望小売価格(含むカスタマイズカー):128万9200円~187万6600円〉

スズキ・エスクード

クロスカントリーモデルの本格的な4WDシステムを持つSUVとして、1988年に初代モデルがデビュー。当初はコンパクトなボディサイズを売りとしたが、モデルチェンジを重ねるごとにボディは大型化され堂々とした体躯になり、現行モデル(第4世代、2015年~)から“ハンガリー生まれ”の輸入車となった。

現行モデルは、直列4気筒1.4リッター直噴ターボエンジンを搭載。オンロードからオフロードまで、路面を選ばず優れた走破性と走行安定性をもたらすのが、新世代の4輪制御システム「オールグリップ」だ。スイッチひとつで四つのドライビングモードから選ぶことができ、4WD制御と電動パワーステアリングを協調制御。前後輪への最適なトルク配分とハンドリングアシストにより、アンダー/オーバーステアを抑制する。

ラゲージスペースは5名乗車時で375リッターを確保し、後席の背もたれを倒すと奥行きが約1.4mのスペースが出現する。シートアレンジに合わせ、ラゲージボードの取り付け位置を上下に変えることでさまざまな積載状況に対応できる。また、長距離走行が前提の“欧州車”らしくシートは、適度な硬さとホールド性により長時間でも快適な座り心地を損なわないのも特長だ。

〈希望小売価格:270万8200円〉

三菱・ミラージュ

このミラージュも、12年ぶりに復帰を果たしたコンパクトハッチバックモデルであり、その現行モデル(第6世代、2012年~)は先進国、新興国に向けた世界戦略車として、全数がタイで生産され先進国向け、新興国向けに作り分ける。国内でミラージュは“輸入車”として復活した。

5ドアハッチバックのボディに直列3気筒1.2リッターエンジンを搭載し、ボディサイズはいわゆるリッターカーよりひと回り小ぶりで、取り回しの良さは軽自動車並みに良い。当初は実用的なモデルだったが、ミラージュ発売当時は軽自動車がメキメキを商品力を向上させてきた頃で、ミラージュも順次商品強化が図られた。

最新モデルは、他の三菱モデルも採用するフロントマスク、ダイナミックシールドを採用すると共に、予防安全機能として衝突被害軽減ブレーキシステムや車線逸脱警報、オートマチックハイビーム、クルーズコントロール等を採用。軽自動車とはほぼ倍の排気量で、ゆとりある走行性能を持つ“プチ”コンパクトとして独自のポジションを築いている。

〈希望小売価格:143万2200円~156万9700円〉

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