【トヨタ・新型MIRAI試乗】新時代のプレミアムカー像を提示 

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2014年に世界初の量産FCV(燃料電池自動車)として発売されたトヨタ・MIRAI(ミライ)が、昨年末フルモデルチェンジし第2世代へと進化。FCVとしての性能向上だけでなく、クルマを見た時、運転している時、乗り終わった時、様々なシーンで〝いいクルマ〟〝欲しいクルマ〟と思えるエモーショナルなデザインとなった。

新型MIRAIはクラウンと共通の新プラットフォーム採用によって、デザインの自由度も増加。ボディサイズは、全長4975mm(先代比+85mm)×全幅1885mm(同+70mm)×全高1470mm(同-65mm)で、より低い全高と大径タイヤなどが流麗なフォルム形成し、腰高感のあった先代とは大きく変わり、スタイリングの良さでも選ばれるクルマを目指したという。

伸びやかなフロントノーズは低めに、大地に踏ん張るような安定感のあるスタンスを表現。さらに、バンパー下端の造形でワイドかつ低重心を強調するとともに、塊の断面変化による〝陰影のコントラスト〟で独自の造形美を創り出した。

インテリアは左右非対称のデザインとなっていて、運転席側には8インチカラーメーターをはじめとする情報系機能を集約。包まれ感を、助手席側のダッシュボードにはソフトパッドを多く配し、居心地の良さと広がり感を追求している。

また、後席は2名乗車仕様から3名乗車仕様となり、助手席の可倒式ヘッドレスト、アシストグリップ、後席タッチ式コントロールパネルなどを採用した「エグゼクティブパッケージ」も設定し、ショーファーニーズにも応える装備を揃えていることも新型のポイント。後席にはUSBポート、1500WのAC100V電源もあり、トランクにあるもう一つのAC電源とあわせて趣味だけでなく、災害時にも有用な装備だ。

FCVのパワーユニットは、水素から発電するFCスタックが第2世代となり、体積出力密度は3.1kW/Lから4.4kW/L、最高出力は114kW(155PS)から128kW(174PS)、駆動用モーターも最高出力113kW(154PS)/最大トルク335Nm(34.2kgfm)から、134kW(182PS)/300Nm(30.6kgfm)へと強化された。

■大きく進化した居住性と静粛性

走り出しは静かかつ滑らかで、アクセルを踏んだ瞬間から最大トルクを発揮し、音もなく鋭い加速を見せるという走行フィールは電動車ならでは。大容量バッテリーを積む輸入車EVのような暴力的な加速はしないが、アクセル操作に対するレスポンスもリニアで、街乗りから高速までシームレスにドライブを楽しめる。

さらに、50:50の前後重量配分などが安定したコーナリングをもたらし、安心感も高い。ステアリングに対する挙動も素直で、意図したラインをしっかりとトレースしてくれるので、ハンドリングの扱いやすさも好印象であった。

また、路面からの入力も上手くいなす足回りによって、コンフォートな乗り心地も美点のひとつ。一般道での右左折や車線変更後の車両の揺り戻しは少なく、高速での直進安定性も良好であった。ブレーキのフィーリングは、回生ブレーキによる充電の様子を感じられたが、違和感はなく滑らかな感触。ガソリン車と変わらないブレーキフィールで、ストレスなく使える。

後端にかけてなだらかに下るルーフラインを見ると狭そうに見える後席の頭上空間は、身長177cmの筆者が座っても圧迫感も無かった。街乗りの速度域ならば独特のモーターはほとんどキャビン内に伝えず、高い静粛性と居住性は特筆すべき点だ。まさに新時代のプレミアムカーと呼ぶにふさわしいレベルに仕上がっていた。

水素の補填時間はガソリンと大きく変わらないが、スタンドはほぼ有人対応かつ24時間営業では無かったりと、インフラ面での課題は残るFCV。こうした課題をクリアしていかなければ普及もなかなか進まないが、新型MIRAIは地球に優しい“環境車”としてだけでなく、流麗なデザインや高い質感を備えたクルマとして、いままで以上に選ばれる素養を持った1台となっていた。

 

 

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