クルマとの一体感が痛快なスポーツハッチ ルノー・メガーヌR.S. 試乗記

all 試乗レポート

ルノーが誇る高性能スポーツハッチ「メガーヌR.S.」がマイナーチェンジを実施。先進安全装備を採用するとともに、トップグレードの「トロフィー」と同じ最高出力300PS/最大トルク420Nm(MT車は400Nm)を発揮する直列4気筒 1.8Lターボエンジンを新たに搭載し、走りの質感を一段と高めている。

エクステリアに大きな変更はないが、F1マシンのフロントノーズをイメージさせるエアインテークブレードにリヤのアンダーディフューザーなど、レース車両の技術に裏打ちされたものは健在。インテリアでは、滑りにくく耐久性に優れたナパレザー/アルカンターラステアリングを新採用。感性に響く装備も充実させ、ワインディングなどでのドライビングプレジャーが高められた。

また、エンジンの出力アップだけでなく、アクセルに対する応答性の向上のため、ターボチャージャーにはF1でも使用されているセラミックボールベアリングシステムを採用。毎分約20万回転するタービンをスチールよりも軽く、硬く、滑らかなセラミックのボールベアリングシステムに取り付けたことで、摩擦が従来のスチールのボールベアリングシステム比3分の1に低減し、ターボの応答性を向上させた。加えて、アクティブバルブにより排気音の音響特性を変化させるスポーツエキゾーストを備え、スポーティでありながら騒音レベルを抑え、日常の使用に適したサウンドに調整できることも特徴となっている。

■街乗りでも不満のない乗り心地

走行モードは、燃費に配慮したセーブ、レスポンスをさらに高めたスポーツ、サーキット走行に適したレースがあり、レースはトラクションコントロールや横滑り防止といった電子制御がすべてカットされ、サーキット専用とも言えるので今回はノーマルとスポーツを試すことにした。

ダンパーの底部にはセカンダリーダンパーが内蔵されており、最適な減衰力が得られる機構となっている。まずはノーマルモードを試してみると、低速域では路面からの振動は伝えるが、身体に響くような突き上げもなく乗り心地は思ったよりいいなというのが第一印象。先日試乗したシビックタイプRでも同様の印象を抱いたが、助手席や後部座席の乗員にも不興を買うことはないレベルに仕上がっている。

走り出してみると低回転から太いトルクが発揮されるので、軽くアクセルを踏んだだけでも弾かれたように一気に加速。登りに差し掛かっても加速は衰えず、そのパワーは余りあるほど。あらゆるシーンにおいて胸のすく加速を味わうことができる。また、ブレーキのタッチと剛性感も良好で、ブレーキング時におけるストレスは皆無だ。

■高い回頭性がもたらす圧倒的なコーナリング性能

メガーヌR.S.は、ベースとなっているメガーヌGTと同様に独自の4輪操舵システム「4コントロール」を採用。この4コントロールは、電子制御のアクチュエーターを搭載し、タイロッド(リアタイヤの向きを決める連結棒)を動かし、リアタイヤを最大切れ角2.7度の範囲で操舵可能とした。

低速走行時は、後輪は前輪とは逆の方向に向くこと(逆位相)で回転半径を最小化。カーブのきついワインディングロードなどでは俊敏さを発揮するとともに、駐車時やUターン時は、取り回しが容易となる。高速走行時は、後輪は前輪と同一方向(同位相)を向き、コーナリング中の安定性を向上させ、理想的なコーナリングラインにクルマを導く。

低速走行と高速走行が切り替わるのは約60km/hで、マルチセンスの設定でレースモードを選択すると、切り替わる速度が約100km/hに変更できる。

今回の試乗会は箱根ターンパイクをベースに行われたが、メガーヌR.S.のコーナリング性能の真価を探るべく、箱根から湯河原に繋がる県道75号線の通称“椿ライン”も走行してみた。椿ラインはカーブが連続するワインディングなのだが、小さい舵角でも狙ったラインをトレースし、高い回頭性と接地感で圧倒的なコーナリング性能を体感できる。ボディの挙動もステアリングとシンクロし、クルマとの一体感も非常に高い。

一方で、4コントロールはメーター等にシステム作動中と表示されず、いかにも電子制御による判りやすくわざとらしいものでは無い。ドライバーが驚くような効果を実感できないが、さりげなくスポーツドライブをアシストする機能として、特にワインディングでは自らの運転が上達したような感覚が芽生えた。

フランス車で遅れがちだった安全装備も、ACC(EDCモデルはストップ&ゴー機能付)、衝突被害軽減ブレーキ(歩行者検知機能付)など、先進の運転支援システムが備わった。5ドアという利便性を持ちながら、サーキット走行も可能にするハイパフォーマンスを両立するメガーヌR.S.。国産・輸入車を見渡しも、464万円でこのパッケージを実現しているモデルは現状でほぼ無いが、EU圏内では企業別平均CO2排出量規制による排出税の規定があり、この手のモデルは厳しい立場にある。新車で購入するチャンスはそう長くないかもしれないので、気になる人は早めにチェックしてほしい。

Tagged