ヒトラーとウイルソンとシャム王

コラム・特集 車屋四六

トップの写真はメルセデスベンツ770Kグローサーメルセデス1937年製。云わずと知れたヒトラー総統が愛したベンツの最高級車で、パレード好きの総統とナチ高官の為に17台だけ作られた。
その一台がヒトラーの帽子と並べてラスベガス・インペリアル博物館に展示されていた。とにかく大きな幌型フェートンで、エンジンは八気筒7.7ℓ・155馬力が、スーパーチャージャーで230馬力に上昇。3トンを超える重い車体を、最高速度120㎞から160㎞へと押し上げる。

1910年代、米国で高級車と云えば、パッカードとピアレスとピアースアローで、ステイタス3Pと呼んだそうだ。
最上級シリーズを注文すると、ロールスロイス同様に、運転手は二週間トレーニングスクールに預けられて、ピアースアローに関する取り扱い、運転、整備などを教習されたという。

ウイルソン大統領のピアースアロー/1917年製:詳細不明。

会社の創業は1901年だが、それまでは、鳥籠や冷蔵庫、自転車などを作っていたようだが、自動車生産は09年からで、高級車市場で活躍したあと、38年に市場から消えていった。
創世記には米国で多かった右ハンドルが徐々に消える中、20年迄頑張ったことでも知られている。

残念ながら年式不明だがシャム王室のドラージュ:ドラージュという会社は、1905年に創業して、35年にドライエに吸収されたあと、54年迄存続した会社である。
ドラージュはレースに勝てば車は売れると信じ世界最速を目指したが、1905年6年と負け、ようやく仏ディエップサーキットで平均80㎞という速度で優勝し念願を果たした。また14年インディ500マイルも優勝し、23年には10.7ℓ-V12で229.296㎞と世界最高記録も樹立している。とにかくレーシングカー造りと高級車造りに没頭した会社だった。

シャム王のドラージュ:多分1923年製ドラージュ・タイプGL・40/50馬力。

車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。

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