【車屋四六】ロータリーエンジンの排ガス対策・コスモ・クーペ

コラム・特集 車屋四六

SEEK・MCA・TTC・NAPS・EPIC・CVCCなど、いま判る若者は居なかろう。1970年代、世界最先端で技術開発続けた日本自動車メーカー各社の、排ガス浄化システムの名だった。

{地球を綺麗にする}それは素晴らしいことで、その一端、自動車排気ガス浄化そもそもの始まりは、1970年、マスキー上院議員が議会に{大気汚染防止法案}を出し、それが可決してからだ。

規制は、COを75年迄に10%以下に、NOxを76年迄に10%以下に、というもので、72年ホンダCVCCが、73年マツダREがクリアするが、ビッグスリーをはじめ世界中が至難の業と反発して、74年廃案になる。が、規制自体は修正されたり、実施延期したりしながら発展し、今日に至っている。

そんな中、真面目にコツコツと開発に取組んだのが日本の各社、そして各社に浄化システムが完成して、日本車のエンジンは世界一クリーンになったのである。

で、各社のピストンエンジンはOKの見通しが付いたが、次なる心配はロータリーエンジン/REだったが、それも取越し苦労。早々とREPSシステムの開発で米国環境保護庁検査に合格で安堵した。

REは、元来NOxが少ない機関だから、HCとCO退治に力を入れて開発した仕掛けは、耐熱材料の燃焼室/サーマルリアクターに酸素注入で再燃焼させて、浄化促進というシステムだった。

マツダのコスモスポーツは、世界初の2ローターRE搭載で、世界の注目を浴びた名車だが、暫く休眠の後、満を持して1975年に登場したのが写真のコスモ・クーペだった。

流麗なクーペGTのリアエンド:トランクリッドにRE13Bを示すバッジとGTのバッジが

そんなクーペが79年にマイナーチェンジ、規制クリアRE搭載でデビューした。もっとも直四OHC1.8ℓも用意されたが、主力のREは、654ccx2/12Bと573ccx2ローター/12Bで、計三種。

写真のクーペはGTらしく13B搭載で、性能はキャブレター仕様、圧縮比9.1で140馬力/6500回転、19.0kg-m/4000回転と、各社軒並みパワーダウンの中にあって強力だった。

走れば、マツダばかりか他社のレシプロ搭載車と較べても、加速感、吹け上がり感、どれもが快調だったが、いきなりアクセルを閉めると、パンパンと鋭いアフターバーン音で、自分ばかりか周囲の人々も驚かせてしまった。

654cc2ローター型13Bの姿:コンパクトさが判るが、上部に重量物がないので低重心そして車体前部重量も軽く、前後荷重配分向上でキビキビの操安性を生み出していた

枯れ草や新聞紙などの上に駐車注意と警告された。サーマルリアクターの熱で下の可燃焼物が燃えるという噂話を聞き、アイドル状態の排気管に煙草を近づけたら見事に火が点いた。

その後、形を変えて進化する排ガス規制だが、74年に廃案になるのに、日本だけが真面目に挑戦し、成功した技術は無駄ではなかった…優れた燃焼技術を手に入れた日本車は、それを武器に世界中で有利に戦いを進めることができたのである。
正直者が馬鹿を見ることはなかったのだ。

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