舞鶴市立赤れんが博物館
赤れんがのまちを知るにはまずここから
ここは世界で唯一のれんが専門の博物館で、世界42カ国から約1900点の資料を収集し、そのうちの約300点が展示されている。世界の古代文明(メソポタミア文明、エジプト文明、インダス文明、中国文明等)や著名な建築物、日本の近代建築物等に使用された実物のれんがといった、古代から現代まで、世界各地のれんがを体系的に展示している。中には、ポーランドにあったアウシュヴィッツ強制収容所や広島の原爆ドーム、第二次大戦後日本人抑留者が建設に携わったタシケント(ウズベキスタン)のナヴォイ劇場等、歴史を証言するれんがも展示されている。
ちなみにこの博物館も赤れんがづくりで、かつては魚雷の倉庫だったものが転用されている。鉄骨+れんが造りとしては日本に現存する最も古いものの中に入るといわれている。天井の鉄鋼のフレームや、建設当時の窓ガラス、窓枠等も見ることができ建物の歴史的な部分も見逃せない。
また、館内には、れんがの“大量生産”を可能にした「ホフマン窯」が再現されている。ホフマン窯はドーナツ状をしており、窯の中を燃えてなくなる紙等でいくつかの部屋に仕切り、最初に一つの部屋でれんがを焼くとその余熱で仕切りが燃え、次の部屋のれんが焼かれ…順次焼かれていくというもの。日本には4基しか残っておらず、そのうちの1基が舞鶴市内に残り、国の登録有形文化財に指定されている。
この他、れんがの積み方の違いも紹介されている。れんがは直方体で長い辺(長手面)と短い辺(小口面)がある。日本で代表的な積み方がフランス積みとイギリス積みで、フランス積みは一つの段に長手面と小口面が交互に並ぶ積み方。イギリス積みは、長手面ばかりの段と小口面ばかりの段が交互になる積み方。イギリス積み方の方が簡単で手早く作業でき、強度が高いとされている。フランス積みは積み上がった時に美しく見えると、それぞれ特徴があるという。館内では積み木で体験できるようになっている。
この博物館を含め、舞鶴市内には赤れんがの建造物が多く残っており、国の重要文化財に指定されているものもある。旧海軍の倉庫への鉄道(引き込み線)のトンネル(北吸隧道)や、舞鶴線の橋脚(現在も使用中)、旧海軍が建設した水道施設等が市内各所に残っている。
海軍ゆかりの港めぐり遊覧船
海から目線で旧海軍施設や自衛隊艦船を見学
舞鶴市を東西に走る国道27号線を西舞鶴から東舞鶴に向けてクルマで走ると、徐々に視界がひらけ、東舞鶴の港に近づきつつあることがわかる。やがて並行する金網越しに灰色の巨大な物体が…それは護衛艦(イージス艦あたご)だった。
舞鶴が海上自衛隊の駐屯地であることは知っていたが、あまりにも唐突な出会い、しかも、こんなに至近距離で艦船が見られるとは! しかも大きい。もっと近くで眺めたいという方には、海軍ゆかりの港めぐり遊覧船をおすすめしたい。
遊覧船での約30分の“航海”では、同乗のガイドさんが東舞鶴港の周囲にある自衛隊の施設やその役割、艦船の特徴や機能、現在は企業の施設となった旧海軍の施設等を丁寧に説明しれくれる。以下、海から見える舞鶴の一部を紹介しよう。
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- 海上自衛隊の掃海艇は、磁気機雷に反応することを防ぐため、船体に木材やプラスチックが多用されている。
- 明治初期に作られた護岸が今も残っている。
- 旧海軍の海兵団(新兵の教育を行う施設)の跡が、現在海上自衛隊の教育隊になっている。
- 旧海軍第三火薬廠の跡地の一部が日本板硝子舞鶴工場になっている。(第一火薬廠は宮城、第二火薬廠は神奈川にあった)
- 軍艦の造船所だった旧海軍工廠は、現在ジャパンマリンユナイテッド舞鶴事業所になっている。
- 海上自衛隊のミサイル艇(うみたか)は、高圧の水流を後方に噴射して推進し、時速80~100㎞で航行できる。
- 現在、舞鶴に係留される海上自衛隊艦艇は15隻ほど。このうちイージス艦は2隻あり(あたご、みょうこう。全7隻)。あたごには対艦ミサイル、対潜ミサイル、1分間に3000発発射可能な機銃等を装備するとともに、400㎞四方のカバーするレーダーを備える。
海上から停泊中の海上自衛隊の大型艦船や大型貨物船に近づくと、見上げるようになり、まるで壁のよう。その大きさが実感できる。また、知っているようで意外と知らない海上自衛隊の部隊や装備等も知ることができた船旅だった。