文・写真:岩田 一成(キャンピングカーライフ研究家/ライター)
キャンピングカーをもっと知ることで、可能性は大きく広がる!
キャンピングカーというネーミングから連想するのは、「キャンプをするクルマ」というイメージ。しかし、キャンプはキャンピングカーの遊び方・楽しみ方のほんの一要素に過ぎない。
快適に生活できる「家」と、好きな場所に移動できる「クルマ」。2つの要素を併せ持ったキャンピングカーの利点を生かせば、キャンプやクルマ旅、アウトドア・アクティビティや趣味のベース基地、ペット旅など、遊び方は自由自在だ。
「時間に縛られず、自由に旅ができる」のが、キャンピングカーのメリット。ファミリーなら、子供と一緒にかけがえのない思い出を作れ、旅や自然の中でのびのびと子育てができる。夫婦なら、行きたいところや食べたいものを気ままにめぐる自由な旅を楽しめ、コンパクトな空間で共に生活することで、さらに絆を深めることができる。
幅広いユーザーのニーズに応えられる柔軟性と多様性がキャンピングカーの最大の魅力。ここでは、キャンピングカーの遊び方・楽しみ方の具体例を紹介していこう。
手軽にキャンプを楽しめる
サイトにクルマを横付けできるオートキャンプは、キャンピングカーのポピュラーな活用法のひとつだ。テントキャンプは設営・撤収に時間と手間がかかり、初心者には敷居が高いが、キャンピングカーなら、そうした手間は激減する。
「家」の役割を果たすキャンピングカーがあれば、わずらわしい大型テントの設営は不要。サイドオーニングをサッと広げて、最低限のキャンプ道具を並べれば、アッという間にプライベート空間が完成する。設営・撤収を手早く済ませられることで、節約した時間を遊びに回せ、貴重なキャンプの時間を有意義に使える。
キャンプサイトに装備されたACコンセントをクルマにつなげば、家と同様に電化製品が使用でき、万が一の悪天候時は車内に逃げ込むこともできる。キャンプ道具が少ない分、雨天時の設営・撤収の手間も最低限だ。
キャンピングカーがあれば、初心者でも手軽に自然の中での生活を満喫できる。キャンピングカーは、まさに「最強のキャンプツール」なのだ。
機動性抜群のクルマ旅
チェックイン・チェックアウトの時間を気にせず、朝から晩まで目いっぱい時間を使って自由気ままに旅をする。キャンピングカーの機動力を生かして車中泊しながら観光地等をめぐる「クルマ旅」は、キャンピングカーにしかできない遊びのスタイルの筆頭だ。
思い立ったら、家族やペットをキャンピングカーに乗せて即出発。宿泊先を予約する必要も、目的地を決める必要もない。車中泊公認の駐車場「RVパーク」や「オートキャンプ場」、高速道路のSA・PAや道の駅での仮眠を組み合わせながら、観光地やテーマパーク、温泉、グルメスポット等を自由にめぐる。
例えば、グルメ番組で見た地方の名産を「食べたい!」と思ったら、その日の夜に即出発し、翌日には現地を訪れて、テレビで見た名産品に舌鼓を打つ。キャンピングカーの機動力を生かせば、そんな芸当も朝飯前だ。
ペットと一緒に気ままな旅
ペットは家族の一員。旅行にもペットを連れていきたいと願うのは、飼い主にとって当然のことだが、受け入れてくれるホテルや旅館が限られるため、ペットと気軽に旅行をするのは難しい。
そんな時、キャンピングカーがあれば、ペットと一緒に自由な旅を満喫できる。車内で寝泊まりできるため、事前にペットと泊まれる宿を探して予約する手間もなく、キャンピングカーにペットを乗せて気の向くまま出かけ、夜は車内で一緒に就寝すればOKだ。
居住性に優れたキャンピングカーの車内は、ペットにとっても快適な空間だ。食事や入浴の際に留守番させておくのも安心だし、シャワー設備があれば散歩後にペットの足を洗うことも可能。サブバッテリーで稼働するエアコンが装備されていれば、夏場の炎天下でもエンジンを停止した状態で、安心してペットを留守番させられる。
アウトドアのベース基地
キャンプやクルマ旅といった定番の遊び方以外に、アウトドア・アクティビティのベース基地としても、キャンピングカーが大いに活躍する。
例えば、サーフィン。絶好の波を求めてサーフポイントに早朝入りするサーファーにとって、フラットなベッドで就寝できるキャンピングカーは最強のツール。長さのあるボードやサーフギアも余裕で収納でき、シャワー設備があれば、海から上がった後にシャワーを浴びたり、サーフボードを洗うこともできる。
同様に、早朝から活動する登山のベース基地としてもキャンピングカーが重宝する。前日の夜に登山道入口の駐車場にクルマを止めて、車内で仮眠。翌日の早朝に、登山装備を整え、山頂を目指してアタックを開始する。登山後には、大人が立てる車内で着替えを済ませ、近場の日帰り温泉でゆったりと疲れを癒す。
スキーやスノーボードなどの、ウインタースポーツとの親和性も高い。ゲレンデの駐車場にクルマを止めて、朝からスキーやスノボを楽しみ、キャンピングカーを休憩や食事のスペースとして活用する。外は氷点下でも、FFヒーターで温まった車内はTシャツで過ごせるほど快適だ。
ほかにも、カヌー、釣り、天体観察、写真撮影等、アウトドア・アクティビティや趣味を思う存分楽しみたい人にとって、キャンピングカーは最高のベース基地になる。
移動オフィスとして活用
モバイル環境が整い、どこにいても仕事ができるようになった現在、ワークスタイルにも変化が生まれている。そんな中、「車内で生活できる」家の要素と、「自由に移動できる」クルマの要素を併せ持ったキャンピングカーは、まさに移動式オフィス。レジャーだけではなく、ワークプレイスとしても活用できる。
テーブルとシートで構成されたダイネットは、デスクワークのスペースとして十分な広さ。キャンピングカーには生活用電源のサブバッテリーが搭載されているため、家と同様にACコンセントを使ってノートパソコンやスマホ、タブレットの充電も可能だ。
休憩時には車内でテレビを観ることもでき、疲れたらベッドで横になれる。寒い日でも、FFヒーターを使えば車内温度は常に快適。インターネット環境さえ整えれば、キャンピングカーの車内はメインオフィスとしても十分に機能する。
静かな湖畔のキャンプ場や海辺の駐車場、下界が一望できる景色の良い高原の駐車場……。好みのロケーションにキャンピングカーを止めれば、いつでもそこがオフィスに早変わり。自分だけのプライベートオフィスなら、いつも以上に仕事がはかどることだろう。
「前泊」の活用で渋滞回避
車内で就寝できるキャンピングカーの強みは、「前泊」ができること。前夜に出発して目的地周辺で車中泊すれば、週末に1日しか休みが取れない人や連休が取れない人でも、朝から目いっぱい行動でき、驚くほど遊びの時間を充実させられる。観光、テーマパーク、公園、キャンプ等、どんな遊び方でも前泊による時間的メリットは大きい。
また、前泊をうまく活用することで、渋滞を回避できるのも大きなメリットだ。普通乗用車の場合、週末や大型連休の朝に出発するため、道中の渋滞が悩みのタネ。しかし、車内で快適に就寝できるキャンピングカーなら、道路が空いている夜のうちに渋滞なしの快適なドライブができ、目的地の近くにある高速道路のSAやPA、道の駅で仮眠すれば、朝から時間を有意義に使える。
帰宅時にUターン渋滞にはまってしまった場合は、高速道路のSAで仮眠をとって、帰宅時間をずらしてしまうのも手。入浴施設を併設したSAで入浴と食事を済ませ、渋滞が解消するまで車内でテレビを観たり、仮眠をとったりして過ごす。これぞまさに、キャンピングカーならではの渋滞回避テクニックだ。
ユーザー同士の交流も盛ん
キャンピングカーを所有することで、キャンピングカー仲間が増えて、遊びの幅が広がるという楽しみもある。キャンピングカービルダーが主催するキャンプ大会のほか、SNSでもキャンピングカーのコミュニティが数多く存在し、各地でオフ会が行われる等、ユーザー同士の交流が盛んに行われている。
キャンプ大会やオフ会に参加することで、住所や年齢、職業の垣根を越えて、キャンピングカーという共通の楽しみを持つ友人が得られる。これも、キャンピングカーならではの魅力のひとつといえるだろう。
全国にキャンピングカー仲間が増えれば、クルマや旅に関する情報を共有できるし、旅の途中で実際に交流したり、地元の人しか知らない穴場スポットに案内してもらえることもある。万が一旅先でトラブルに遭遇した際にも、近くに仲間がいれば心強い。
家族のキャンピングカーライフも楽しいが、グループでの遊びはそれとはまた違った楽しみがある。ユーザー同士で積極的に交流して、共通の楽しみを持つ仲間を増やせば、キャンピングカーの新しい楽しみ方が見つかるはずだ。
プロフィール
岩田 一成(キャンピングカーライフ研究家/ライター/HOT MIND代表)
1971年東京都生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業・ 8年間の出版社勤務を経て2003年3月に独立。同年4月より、編集工房『HOT MIND』代表として編集業務の請負を開始。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に様々なジャンルの雑誌・ムック製作に携わる。取材・インタビュー経験は3000件以上。座右の銘は、『商人ではなく、常に最前線に立つ職人であれ!』。
関連リンク
《 本稿は新聞「週刊Car&レジャー」2639号(2018年10月)に掲載 》