山形県・最上町~山形県・酒田市 分水嶺から日本海を目指して

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文・写真:編集部

“分水嶺から始まる旅”として、前回は分水嶺から太平洋へ向かったが、今回は日本海への旅をお届けする。この分水嶺(分水界)とは日本列島の場合、同じ場所に降った雨や雪が、太平洋~オホーツク海か、あるいは日本海~東シナ海へ流れていくのか、その分岐点となるところである。分水嶺を起点に、地上に降りた雨粒のように川に沿ってクルマで日本海を目指した。


目次

JR陸羽東線・堺田駅「平坦な駅前にある分水嶺」
出羽三山神社と羽黒山五重塔「三つの神様を祀る本殿と杉木立に優美にたたずむ五重塔」
山居倉庫「かつての米穀取引所が酒田のシンボルに」
庄内米歴史資料館「知っているようで知らないお米のことを知る」
日和山公園「日本海に沈む夕日が美しい北前船ゆかりの丘」
ご当地ランチ ワンタンメンの満月「ふわふわな極薄ワンタンとあっさりスープ」
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JR陸羽東線・堺田駅平坦な駅前にある分水嶺
平坦な駅前にある分水嶺

左の流れは日本海へ、右の流れは太平洋へと続く

石碑の後ろが日本海(左)と太平洋(右)へのわかれ目

分水嶺は、日本列島の背骨に当たるような標高が高い山々の上にあり、その連なりは北海道から本州、九州へまたがり、北は宗谷岬(北海道)から南は佐多岬(鹿児島県)まで。総延長は約5000㎞に及ぶといわれている。その多くはクルマで乗り付けられるような場所にないが、中には標高400m以下、しかもJRの駅前にある分水嶺もある。奥羽山脈の一部、宮城県・仙台市と山形県・酒田市を結ぶ国道47号線へクルマを向けた。

駅前にある分水嶺を示す石碑
駅前にある分水嶺を示す石碑

堺田駅入口の看板 / 駅前にある分水嶺を示す石碑

“駅前” 分水嶺は、JR東日本の陸羽東線(小牛田~新庄:94.1㎞)の中ほど、宮城県と山形県の県境近い堺田駅ある。駅周辺は田んぼが広がり、ここが太平洋と日本海の分かれ目とは思えないほどのどかな里山の風景だ。駅前に腰くらいの高さの石碑があり、その背後には、田んぼから小川のような小さな水路が石碑に向かって流れ、T字の分岐で左右に分かれている。

ここが分水嶺であり、向かって右へ流れると太平洋へ、左へ流れると日本海へと注がれる。分水嶺で分かれたそれぞれの水路は、以下のように河川を流れ海へ注がれる。

縁結びや夫婦和合にご利益があるとも言われている筑波山

写真上の方が日本海。この流れが最上川へと通じている

《向かって右:太平洋へ》大谷川(おおやがわ)支流(1.0㎞)~大谷川(10.3㎞)~江合川(84.3㎞)~旧北上川(20.1㎞)=116.2㎞

《向かって左:日本海へ》芦ケ沢川(1.4㎞)~明神川(5.4㎞)~最上小国川(34.1㎞)~最上川(61.4㎞)=102.6㎞

堺田駅分水嶺 【住】山形県最上郡最上町堺田 【時】24時間〈ただし照明設備はなし〉 【休】年中無休 【料】無料 【P】駅前のスペースを利用(数台分) 【マップコード】350 539 840*62

出羽三山神社と羽黒山五重塔
杉木立の中で優美にたたずむ五重塔

堺田駅から国道47号線を西(酒田方面)へ。国道は最上小国川と並行して進み、途中、山形新幹線の終着駅でもある山形県・新庄市を通過し、再び山あいを最上川に沿って進む。国道47号線に別れを告げ県道46号線をしばらく南下。2時間弱(約80㎞)で出羽三山神社に着く。

羽黒山山頂の本殿(三神合祭殿)
三つの神社の神様を祀る

羽黒山山頂の本殿(三神合祭殿) / 三つの神社の神様を祀る

山形県の月山、羽黒山、湯殿山の三つの山が“出羽三山”と呼ばれ、羽黒山の山頂にあるのが出羽三山神社である。本殿は羽黒山、月山、湯殿山の3神社の神様が鎮座する「三神合祭殿」となっている。特に、月山(標高1984m)と湯殿山(標高1500m)は、冬季積雪が多く参拝が困難なため、離れた羽黒山山頂(標高414m)から拝むようになった。

この本殿への参拝は、麓の大鳥居から羽黒山五重塔を経て約2400段の石段を登る(約1時間)と、ちょっとした登山の覚悟が必要だ。クルマならば羽黒山五重塔を参詣してから再び大鳥居に戻り、クルマで羽黒山自動車道(有料道路)を経て約10分で山頂の駐車場へ。徒歩5分で本殿へ参拝できる。

五重塔から本殿へ向かう階段の参道

五重塔から本殿へ向かう石段の参道

大鳥居から五重塔まで、石段や石畳の道を約10分の道のりは杉木立が美しい。いずれも、大人が幹を抱えようとしても、抱えきれないほどの立派な幹を持つ杉の木ばかり。目に映る多くは幹(樹皮)ばかりで、はるか木の上に茂る葉がまるで降り注ぐ光を遮り、雑音を遮断しているかのように、静寂な空間が広がる。

羽黒山五重塔

その杉木立に囲まれる中で、静かにたたずむのが羽黒山五重塔だ。東北地方で唯一の国宝指定の五重塔は、高さ24.9mの三間五層、杉材で建てられ表面に塗装を施さず、材料の地肌を活かした素木(しらき)づくり。屋根は、薄い木材を何枚も重ねた(こけら)葺きとなっている。軒が長く優美なたたずまいを見せる。

この五重塔は、承平年間(931~938年)あるいは天慶年間(938~947年)に平将門が建てたと伝えられている。また、平将門が五重塔建立を果たせずに戦没したので、安心して冥土に旅立てるようにとその娘、如蔵尼(にょぞうに)が意思を継いで建てたとも伝えられている。

この出羽三山神社は今から1400年以上も遡る592年、第32代崇峻(すしゅん)天皇の皇子、蜂子皇子(はちこのおうじ)によって開山されたと伝えられている。この神社は元来自然崇拝と山岳信仰の古神道から発したもので、明治維新までは神仏習合(神道と仏教が融合した信仰)の山として栄え、東日本33カ国の守り神として広く人々から信仰され現在に至っている。

出羽三山神社 【住】山形県鶴岡市羽黒町手向字手向7 【時】8:00~17:00(参拝時間) 【料】入場無料、羽黒山自動車道通行料=普通車(5、3ナンバー):400円(障がい者割引:200円)/自動二輪車:200円/普通貨物車(4ナンバー):600円/バス:1400円、自動車道営業時間=9:00~16:00(4月1日~11月23日は8:00~、GW期間中と7月1日~8月31日は7:30~、GW明けから11月23日は~17:00) 【P】有、普通車410台/大型車20台(※ただし自動車道経由)【マップコード】90 118 413*14

山居倉庫 かつての米穀取引所が酒田のシンボルに

新井田川を渡った先が山居倉庫

新井田川を渡った先が山居倉庫

出羽三山神社から国道47号線に戻り、最上川を沿うように再び国道を進む。やがて道はこれまでの勾配がウソのようなフラットな道になる。庄内平野に入ったようだ。庄内平野は南北約50㎞、東西で広いところは約20kmもある。出羽三山神社から走ること約1時間、山形県の北西に位置する日本海沿いの町、酒田市に着いた。

酒田市は、江戸時代から北前船(きたまえぶね)の寄港地として栄えた港町。北前船とは江戸時代~明治時代、北海道や日本海沿岸の町々の産物を積み、日本海~関門海峡~瀬戸内海の各地を寄港しながら大阪(さらには江戸)へ届ける船で、米を一千石(約150t)積めたことから千石(せんごく)船とも呼ばれた。

一方、太平洋側を寄港するルートもあり結果、大阪(堺)には国内のさまざまな産物の集積し、“天下の台所”と呼ばれるようになった。北前船は、北海道で産物を預かり大阪に届けるだけでなく、航行する船主が各地の寄港地で商品を買い、それを別の寄港地で売ることで利益を上げていく。北前船自体が“商社”のような存在だったのだ。

また、前述の通り広い庄内平野は、米作りに適した気候からも米どころであり“庄内米”の産地として古くから知られ、他県との取引も活発に行われてきた。1893(明治26)年、酒田米穀取引所の付属倉庫として作られたのが山居(さんきょ)倉庫であり、船への積み下ろしがしやすいように、最上川と新井田川にはさまれた、通称・山居島に建てられた。倉庫は12棟あり、このうち9棟は現在も現役の農業倉庫として使用されており、酒田市のシンボル的存在でもある。

12棟の倉庫が軒を連ねる山居倉庫

12棟の倉庫が軒を連ねる山居倉庫

この内の2棟が酒田市の観光物産館「酒田夢の倶楽(くら)」になっている。館内は酒田の歴史と文化を伝える“華の館”と、お土産を購入できる“幸の館”となっている。

お土産物コーナーでは地酒、銘菓、食品が一堂に揃う(ここだけ)。さらに、傘福等の民芸品や光丘彫、組子細工、山形の花“紅花”を活かした工芸品等、土産ものも並ぶ。この他、庄内平野と日本海が育んだ食材を活かした料理を楽しめる食事処“芳香(ほうこう)亭”や、オリジナルつや姫ソフトクリーム等地元の食材を生かしたメニューもあるファストフードコーナーもある。幸の館には、民芸品や伝統工芸品の展示や、人気テレビドラマ「おしん」をさまざまなシーンや登場人物をモチーフにした人形ギャラリーもある。酒田のすべてが揃っているスポットだ。

酒田の名物が一堂に揃う
季節ごとに旬の農産品が並ぶ

酒田の名物が一堂に揃う / 季節ごとに旬の農産品が並ぶ

「おしん」は、NHKの連続テレビ小説として1983年4月から84年3月末まで放映された、戦中から戦後の混乱期をたくましく生き抜いた女性の一代記で、最高視聴率62.9%も記録した人気ドラマ。当時は、長年苦労を耐え忍び栄光を掴んだ人を「おしん○○」と呼ぶ等、社会現象にもなった。主人公が山形の寒村の生まれで、奉公に出た先が酒田。この山居倉庫もドラマのロケで使われた。

人気ドラマ、おしん関連の展示
酒田に古くから伝わる吊るし飾りの傘福

人気ドラマ、おしん関連の展示 / 酒田に古くから伝わる吊るし飾りの傘福

12棟が横に並ぶ倉庫のうち、庄内米歴史資料館と酒田夢の倶楽は、それぞれ両端の棟にあり中央部分の“現役倉庫”を眺めながら歩くことになり、よく見ると、倉庫が独特の作りになっていることがわかる。それぞれの屋根が浮いているように見えるのは、屋根が二重構造となっているからで、その間に空気を通すことで、積み重ねた俵の熱を放散するとともに、屋根から庫内に伝わる熱を防ぐ“断熱”の役割をしている。

青く茂るケヤキの葉が倉庫を守る
屋根に隙間を作り内部の熱を程よく放出

青々と茂るケヤキの葉が倉庫を守る / 屋根に隙間を作り内部の熱を程よく放出

また、倉庫の背後にはケヤキの木が植えられ並木のようになっている。木々が夏の西日と冬の強い季節風からの風よけになり、自然を利用した“低温管理”が行われている。直接見ることはできないが、内部の土間にはにがりを練り固めることにより湿気防止対策も取られているという。さらに、米の揚げ下ろしの際に風雨が当たらないよう、雨覆い屋根をかけた廊下等、藩政時代からの長い経験と、当時の最新技術を活かして建設され、今も現役の倉庫として利用されその効果は持続されており、先人たちの知恵には驚くばかりだ。

山居倉庫 【住】山形県酒田市山居町1-1-8 【時】山居倉庫=24時間/酒田夢の倶楽=9:00~18:00(12月~2月は17:00まで)/芳香亭 ランチ=11:00~14:00、ディナー=17:30~21:30 【休】山居倉庫=なし/酒田夢の倶楽=1月1日/芳香亭=月曜日のディナー、1月1日) 【料】入場無料 【席】芳香亭=小上がり席:30席、フロア席:54席【P】有(35台) 【マップコード】90 850 865*21

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