マツダ・サバンナ試乗記 【アーカイブ】

週刊Car&レジャー アーカイブ

クリーンディーゼルやSKYACTIVE-Xなど、独自のエンジン技術を誇るマツダ。その原点ともいえるのがロータリーエンジンだ。RX-8を最後に残念ながら現在ではラインアップから消えてしまったが、その独特なフィーリングには今もファンが多い。

コスモスポーツから始まり、多彩な車種に搭載されたロータリーエンジンだが、その中でモータースポーツでの活躍もあり、強烈な速さの印象を残したのが71年に登場したサバンナ(RX-3)だ。今回はその試乗記を振り返ってみよう。

当時の新聞広告。スタイリングの美しさ+独自のパワートレーンのアピールは、現在のマツダも変わらない

<週刊Car&レジャー 1971年(昭和46年)10月2日号掲載>
「マツダ・サバンナ試乗記」

試乗に出かける前に、同僚が少し都内を走って来た。帰ってくるなり「いいねえ、加速の良さは。エンジンも静かだし…」と切り出した。

その通り、この短い言葉がロータリー・フィーリング。いや、サバンナの良さ、特徴を端的に、ズバリと表現しているような気がする。それも低速、高速を問わずに発揮されるのだから、こたえられない。

まず東名での経験から書いていこう。

・なめらかなアクセル

サバンナの最高速は180キロ。決められた最高速、100キロで走っていても、その性能の55%を使っているに過ぎない。100キロだと回転計はちょうど3500回転を指しているが、アクセルを踏み込むと、ぴんぴんはね上がっていく。

150キロ以上は走る機会もなく、また試す気もなかったが、二、三度ダッシュした経験では“ぐいぐい”といった調子で加速していく。

いちいちタコメーターを見る気が起こらないほど敏感だ。それでいてアクセルの感じは実になめらか。カペラのCMに“風”という表現があったが、そのままサバンナにも使いたいようなスムーズさだった。

・100キロで僅かに風切音

持ち前のエンジンの静かさはサバンナでも全く変わらない。100キロ程度のスピードなら、かすかに風切音が聞こえてくるだけ。130キロぐらいになると、さすがにエンジン音が意識されるが、レシプロ車に比べると、段違いの静かさだ。

時々風の影響を受けるのか、細かくハンドルを修正する以外はスピードを気にせずに、マイペースで走っていける。

ロータリーの速さをアピールしたかったために、高速での経験を先に書いたが、これが市内、いいかえると中、低速になると、もっと特徴的に現れてくる。

エンジンの静かなことは、これも同僚の一人がエンジンが掛かっているのに、またセルを回そうとしたことからもうかがえる。このあわて者め、と大笑いになったが、うっかりするとエンジンが止まっていると錯覚しかねないほど静かである。

加速の敏感なことは言うまでもないが、ここではさらに粘りの利くことを上げておきたい。

試みに4速に入れながら、スピードを30キロまで落としてみた。別に意識しなくても、都内の路上ならいつでもこんな状態にぶつかるもの。この時の回転数は1000回転だったが、ノッキングはもとより次の加速にさえ耐えてくれた。秀れた高速性能と中・低速の粘り。この二つはなかなか両立しがたいものだが、サバンナではみごとに解決され、スピード、加速の良さを楽しむばかりでなく、セダンとしてファミリーユースにも文句無しに使えることを言いたかったわけである。

・少しローリング

難を言えば、箱根の山中でラフロードを登り、かつかけ下がった時に、少しローリングが目立ったことだった。サスペンションはグランドファミリアと同様、いやそれ以上に固目に改良され、ロール剛性が高くなっているはずなのに、納得できない現象だった。機会があれば、もう一度確かめてみたい。

<解説>

サバンナはロータリー専用のモデルで、1971年9月6日に発売。発売時は2ドアクーペと4ドアセダンのラインアップだった。輸出名は「RX-3」。モータースポーツでも大活躍し、日産スカイラインの50連勝を阻んだことでも有名なモデルだ。

エンジンは水冷491cc×2ローターで68年発売のファミリアロータリークーペと同型だが、キャブレター、点火系の改良などによって5馬力アップの105馬力となり、同時期のスカイライン2000GTと同等の出力を誇っている。

「アーチェリーカーブ」と呼ぶ流麗なスタイルを採用するとともに、高速、悪路での安定性を向上させるため、1300mmと当時としては広いトレッドとしたのも特徴だが、試乗記を見る限りでは、それでも足回りの安定感はやや不足していたようだ。

なお、試乗車はクーペの最上位モデルであるGSⅡで価格は75万円。セダン、クーペとも標準車は60万円という価格設定で、スポーティーカーとしては当時としても比較的安価であり、人気を集めることとなった。

78年には後継の「サバンナRX-7」にバトンタッチ。さらなる高性能化が図られたRX-7は大ヒットとなり、ロータリースポーツの系譜はその後も長く続いていくこととなった。

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