リッターカーの始祖、ダイハツ・初代シャレード登場 【アーカイブ】

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コンパクトカーの中で、このところ勢いに乗っているのがダイハツ。トールワゴンのトール(トヨタ名・ルーミー/タンク)に続いて、SUVのロッキー(トヨタ名・ライズ)も大ヒット。経済性に加えて使い勝手の良さや充実した装備の搭載など、ともにダイハツ車らしい魅力に満ちている。

そして、これらのモデルに共通しているのは、1Lエンジンを搭載する「リッターカー」ということ。軽自動車ではちょっと足りない、でも大きな車までは必要ない、そんなユーザーに最適なサイズなのである。

この所謂「リッターカー」が登場したのは1970年代後半からだが、その最初のモデルがダイハツ「シャレード」だ。発売と同時にヒットモデルとなり、リッターカーという新カテゴリーを確立することとなった。ダイハツはいわばリッターカーのパイオニアであり、そのDNAは現在のロッキーやトールまで脈々と受け継がれているといえるだろう。

そこで今回は初代「シャレード」登場時の紹介記事を見てみよう。小さいだけでなく数々の新技術を詰め込んだ、ダイハツの自信作であったことが分かるはずだ。

当時の広告。室内の広さを5平米でアピールしたのは、今見ても斬新だ。ちなみに「リッターカー」という呼び方はまだなかった

 

<週刊Car&レジャー 1977年(昭和52年)10月15日号掲載>
「広くて小さい経済車」

ダイハツは“広くて小さく快適な経済車”を強調する「シャレード」を11月1日に発売する。省資源、省エネルギー、省スペースなどの社会的要請と、快適さを追求するユーザーのニーズに応え、車の真に必要な機能は何かを原点に立ち返って開発されたニューモデルとダイハツは説明しているが、世界最初の4サイクル3気筒1000ccバランスエンジン、FF横置き方式、徹底的に軽量化したコンパクトボディ、5ドアハッチバックスタイルなどの採用により、“広く、しかもコンパクト”、“走りがよく、しかも低燃費”という相反する課題を解決したという。「シャレード」は「謎解き」の意味で、「新しい時代の車のあるべき姿(謎)を解いたクルマ」の象徴として採用されたという。

・4サイクル3気筒

全長3460ミリ、全幅1510ミリ、全高1360ミリというサイズのシャレードは、フロントウィンドウの傾斜角が大きいウェッジタイプ、タンブルホーム&ターンアンダーなどにより重心を低く、丸みをおびたスタイルを採用している。ワイドなフロントビュー、フェンダーとルーフのサイドラインもあわせ、なかなか洒落た感じのデザインだ。

このボディに2300ミリのホイールベース、前輪1300ミリ、後輪1280ミリのトレッド、FF横置き方式の採用などによって、従来の1000cc車の常識を破った広い室内を確保している(室内長1700ミリ、室内幅1270ミリ、室内高1130ミリ)。

ダイハツはこの室内を「身長175センチの人が前後左右にゆったり座れる居住空間」と表現しているが、FF横置き方式によるフラットのフロア、ヘッドクリアランスを配慮したボディ設計、小さなタイヤハウス、140ミリというシートスライド量など、細かい配慮のあとがうかがえる。

また、全車種後席への乗り降りが楽な4ドアが用意されているのも使い勝手の良さを考えた設計。オプションで設定されているエアコンは、インパネの奥に貼着するので、足回り、ひざ回りに余裕があるという。

シャレードはリアゲートが開閉できるいわゆる「5ドアハッチバック」なので、前倒式リアシートや段差のないリアデッキなどによって、2ドアセダンから4ドアワゴンにまで幅広く多用途に使え、さらに、前後のオーバーハングを短縮し、コンパクトなボディにしたため、ハンドルの切れの良さ、4.6メートルという小さな回転半径とあいまって、細い道や市街地でも乗りこなしやすい。また、投影面積は5.2平方メートルと小さいので、駐車に場所を取らず、車庫入れも楽にできる。

安全設計としては、横置きエンジンのため、衝突時にエンジンが室内に突入しにくく、衝突時の衝撃はロングホイールベースとワイドトレッドによりボディの四隅に張ったタイヤが吸収、横からの衝撃はタンブルホーム&ターンアンダー構造の厚いドアが吸収することが上げられ、さらに、後席下部の室外に装着したガソリンタンク、コーナーガード付き大型バンパーなどが採用されている。

予防安全のために、ストップランプ警告灯などのウォーニングランプを集中、リアドアのチャイルドセーフティ、ヘッドランプや車幅灯の消し忘れブザーを採用。視界もパノラミックウインドー、信号の確認しやすい前傾ウインドー、前方確認の楽なショートノーズなどによって、死角が少なく広い視界となっているのもシャレードの特徴だ。なおXTEにはリアワイパーも採用されている。

シャレードに搭載された3気筒1000ccバランスエンジンは、総排気量993cc、最高出力55馬力/5500回転、最大トルク7.8kgm/2800回転の性能。バランスエンジンは3気筒エンジンの課題である振動について独自のバランスシャフトを採用しているほか、出力、燃費、排出ガスのすべてにバランスが取れているという意味ももたせている。

3気筒エンジンの採用については、1気筒あたり330ccの場合が出力、燃費ともに最も優れているところから、1000ccには3気筒が最適との結論に達し、開発を進めてきたもので、その特徴として、吸入バルブ径が大きくて吸入空気量が多いので爆発力が大、シリンダー表面積が小さいので冷却損失が小さくてすみ、HC量が少ない。1気筒少ないため、軽くて全長が短い。ピストン、コンロッド、バルブ、クランク軸受けが少ないので、機械損失が少ない--などの特徴が挙げられている。

この結果、ボディが630キロとコンパクトで軽量なこともあって、1300ccクラスに勝る余裕ある走行性能が確保され、FF+ストラット式コイルスプリング(前輪)、5リンク式コイルスプリング(後輪)のサスペンションの組み合わせによって、優れた走行安定性を発揮する。

特に、時速30キロ前後の低速走行でもトップギアで運転可能だし、普通の坂道ならトップまたはサードギアで走り、東名、名神などの高速道路の坂道も時速100キロで余裕を持ってクルージングできると、ダイハツは自信を持っている。

参考までに紹介すると、0-400m発進加速は19.7秒、40-80km/h加速は14.0秒というレベル。

シャレードの53年度排出ガス対策はDECSIL(Daihatsu Economical Clean-up System-Lean buhn=ダイハツ希薄燃焼方式)と呼ばれている。51年規制適合のDECSILをベースに、排気ガス再循環装置、二次空気導入装置、少量の酸化触媒を内蔵した保温エキゾーストマニホールドを組み合わせたシステムで、燃焼速度が早いために燃焼効率に優れ抜群の燃費とドライバビリティを実現。酸化触媒は交換不要で、種々の運転条件に応じ、空燃比及び排気ガス再循環量を精密にコントロールすることによって、長期間安定した浄化能力を保持するーーという特徴が挙げられている。

事実、シャレードの燃費は、10モード(運輸省審査値)が19km/Lと群を抜き、60km/h定地走行(メーカー届出値)で25~27km/Lと、軽自動車並みとなっている。

シャレードの車種構成は4速ミッション車の基本5車型に5速ミッション車の派生4車型(XOは4速車のみ)を加えた9車型。

基本車型の東京地区標準現金価格は次の通り。単位千円。大阪地区は6千円安。5速ミッション車は一律2万5千円高。XO=653、XG=692、XT=742、XGE=762、XTE=792。

<解説>

シャレードは、それまでの旧態依然とした「コンソルテ」(トヨタ・パブリカのOEM車)の後継として開発されたモデルで、ダイハツがトヨタ傘下となってから初めて自社開発された小型車であった。

小さなボディに大きな室内空間というのは、現在のコンパクトカーにも共通する思想だが、これを実現するためにエンジン横置きのFF方式のほか、3気筒エンジンなど、数々の新技術を導入したのが特徴といえるだろう。

なお3気筒エンジンは、2サイクルのものは当時もスズキT5型などあり珍しくなかったが、4サイクルの3気筒エンジンは量産乗用車用としては、このシャレードに搭載されたCB型エンジンが世界初。現在では軽・小型車用エンジンとしてスタンダードな3気筒だが、シャレードはその出発点であった。

新世代のコンパクトカーのスタイルを創出したシャレードだが、83年には2代目にバトンタッチ。1Lディーゼルターボや、伊デ・トマソ監修の「シャレード・デ・トマソ」も追加するなど、さらなる発展を遂げていくこととなった。

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