高い走行性能とSUVの使い勝手を両立するブランド初のEV ジャガー・I-PACE 試乗記

試乗レポート

■見た目以上に居住性が高い

高級サルーンやスポーツカーをはじめ、近年はSUVにも力を入れているジャガーのラインアップに、初のEV(電気自動車)となる「I-PACE(アイペイス)」が追加された。

I-PACEは、全長4695mm全幅1895mm×全高1565mm、ホイールベースはラージクラスセダンに匹敵する2990mmというボディサイズ。ジャガーのSUVであることを意味するPACEが冠されているが、短く低い位置に構えたボンネット、一般的なSUVより低い全高と長いホイールベースが独自のスタイルを創出している。

インテリアは、センターコンソールに10インチと5インチのデュアルタッチスクリーンが配され、これで空調やオーディオなどを操作する。物理的なボタンが最小限となっており、12.3インチのフルデジタルメーターや、ドライバーや他の乗員の位置を認識して重点的に空調をコントロールし、バッテリー消費を抑える「スマートエアコン」など、随所に先進性を感じさせる装備が実装されている。

さらに、プロペラシャフトを必要としないため、特に後席の足元空間にゆとりがあり、外観の見た目以上に居住性は高い。加えて、試乗車にはガラスパノラミックルーフ(オプション)が装備されていて、太陽光を吸収し、再放射する特殊コーティングが施されているためシェードやブラインドは不要で、開放的で明るい室内空間をもたらしていた。

また、後席シートバックの高さがしっかりと肩口付近まで確保されているので、しっかりと身体を預けることができ、長時間の移動も苦にならなそう。この後席をすべて倒せば最大で1453Lという広大なスペースが生まれ、シートを使用した状態でも656Lのスペースを確保。シートアレンジも豊富で、SUVならではの使い勝手も置き去りにされていないのは好印象だ。

 

■音もなく圧倒的な加速する様はEVならでは

パワーユニットは、電気モーターを前後アクスルに各1基ずつ搭載し、システム合計で最高出力400PS/最大トルク696Nmというスペック。アクセルを踏んだ瞬間からフルトルクを発揮し、無音状態から一気にトップスピードへ到達するので2.2トンを超える車重を全く感じさせないパワフルな加速はRVならではだ。ドライブモードはエコ、ノーマル、ダイナミックの3種類が設定されているが、エコでも十分すぎる加速を見せるので、試乗中は基本的にエコモードで走行した。

回生ブレーキや加速の強弱も設定でき、強だとアクセルペダルを離すと最大0.2Gの減速Gが発生し、街乗りの速度域なら、停止するためにアクセルを離すだけで十分に減速するので、アクセル操作だけのワンペダルドライブが可能。慣れないうちは強めの減速Gが掛かるので、回生ブレーキを弱に設定してからから試してみるのもおすすめだ。

リチウムイオンバッテリーはホイールベース間のフロア部分に搭載されるため、低重心かつ前後重量配分もほぼ50:50を実現しているため、カーブでのロールも極めて小さく、ハンドリングも癖がないので扱いやすく、フラット感のある乗り心地や、高い静粛性も好印象だ。

搭載する90kWhのリチウムイオンバッテリーは、WLTCモードの航続距離はカタログ値で438kmを実現。100%充電済みの状態ではメーター表示で428kmとなっていたが、試乗日は35度を超える猛暑だったので躊躇うことなく空調をオンにすると、380km強となった。運転の仕方にもよるが満充電から350kmは不自由なく走行できることもI-PACEに魅力だ。

とはいえ、試乗中も想定していた場所は他のEVが充電中だったり、定格出力が低く期待していたほど充電できなかったこともあった。ナビでの検索に加え、充電器のスペックがわかるアプリも無料でダウンロードできるので、特に長距離の移動はそれらの情報を活用し、休憩しながら計画的に充電を行いながらドライブを楽しむというのも悪くないだろう。

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