昨年のブランド生誕60周年を機にシトロエンから独立を果たしたDSの中で、もっともコンパクトなボディを持つDS3。大きく分けてハッチバックとオープンの2モデルを設定し、今回は1・6Lターボエンジンに6速MT組み合わせたハッチバック「スポーツシック」に試乗した。
DSブランドの発足に合わせ、DS3もエクステリアに変更が加えられた。フロントグリルには、従来のダブルシェブロンからDSロゴの配された「DSウィング」を採用。ヘッドライトに連なるように翼を広げる意匠は、大型グリルの存在感をより引き立てる。その一方で、シャークフィンと呼ばれる個性的なBピラー、ルーフが宙に浮いたような視覚効果を持つフローティングルーフは継承されており、独自の世界観を表現している。
また、二つのボディタイプとルーフや幌のカラーのコンビネーション、パワートレーンの組み合わせで最大で55パターンある「ビークルパーソナリゼーション」で、自分だけの一台を選べるというのも、所有欲をくすぐるユニークな仕掛けで面白い。
インテリアは質感の高いブラックでまとめながら、スポーツシック専用のカーボン調ダッシュボードがレーシーなムードを演出。実用面に目を向けると、3ドアなので乗降性はそれなりだが、後席には大人2名が窮屈なく座れるスペースが確保されている。閉塞感もあまり感じることはなく、いざとなれば3名掛けも可能。3ドアの小型ハッチバックとしては十分に実用的な後席だと言える。
ツインスクロール式ターボを備えた1・6Lエンジンは、最大トルクを1400‐3500rpmの広い範囲で発生。実用域でのトルク性能は十分で、登り坂でも1200㎏の車体を快活に引っ張る。淀みなく吹け上がるエンジンと、軽快感とダイレクト感の強い6速MTとの組み合わせは痛快で、クルマを操る歓びを五感に訴えかけてくる。
DS3の身のこなしは、基本的にはコンパクトなスポーツモデルならではの敏捷さが身上。ただ、車体の安定しているコーナリング姿勢に対して、大柄なシートのサポート性が見た目より高くなく、スポーツを謳うモデルとしては改善の余地がありそうだ。
それでも、峠道などでタイトなドライビングをしなければ乗り心地も決して悪くないのが好印象。速度を上げればフラットライドだし、街乗りでも不快なショックはほとんどない。シトロエンの系譜を感じるしなやか乗り心地は、スポーツモデルのとしてはかなり快適なレベルで、日常使いのクルマとしてもまったく問題ない。クラスを超えた内外装の質感などとあわせて、大型セダンなどからのダウンサイズにも対応する資質を備えたモデルだ。