【車屋四六】ウッディーデコが懐かしい

コラム・特集 車屋四六

2008年、74才で余生少なくなったと思い、清水の舞台から跳び降りる気分で薄型TVを買った。SONY40吋で28万円だった。
大画面の迫力に酔いしれていると友人来宅「音が悪いからアンプとスピーカーを買え」と云われてヤマダ電機へ。「スピーカーは音質的に木製箱がベスト」と云われて、ONKYOの5.1サラウンドとやらで、またもや清水の舞台から跳び降りた。

が、音はともかく、部屋に本物の木製品があると、なにかホッとする気分になると気が付いた。思い出せば大正末期に立てた我が家は、木・竹・布・壁・土・紙・瓦等々、全て自然の材料で囲まれていた…が、1980年に建て替えた鉄筋コンクリート造りになってからは、自然の物を見つけるのを苦労するようになっていた。

それは自動車も同様で、一部の高級車には本物の木や革を見掛けるが、大方の車で自然物を見つけるのは難しい。木や革に見えてもモドキであって本物ではない。(トップ写真:1940年型シボレー・ステーションワゴン。戦前の木工仕事には素朴さを感じる)

人は本物に出会うと心がなごむが、本物が氾濫している時代に、車を木で飾ろうなんて流行があった。その始まりはステーションワゴンのようで、手元資料で最古は1939年型フォードだが、好評だったようで後追いが、各社に登場した。

当時は木工職人が豊富だったから、後追いも楽だったろう。そんな木製ワゴンの流行はWWⅡ中の休業期間を挟み、戦後まで続くのである。

ビッグスリーの中で、木製ワゴンで遅れを取ったクライスラーだが、戦後になるとステーションワゴンではなく、乗用車を木で飾ろうという新ジャンルの開拓を始めた。

1950年頃のフォード・ステーションワゴン:この時代になるとデザイン的には完成期らしくボディーとの一体感に違和感がない

戦後再開した各社の乗用車生産で各社ウッディワゴンも再開するが、クライスラー社は最上級車種のクライスラーにウッディー乗用車を登場させたのである。

写真下のクライスラー・コンバーチブルは、シボレーの廉価版が1000ドルで買える頃に2725ドルもしたが、戦後の物価上昇で数年後には4600ドルにもなるのである。

米国を代表する高級車クライスラー・タウン&カントリー・コンバーティブル/1946年以降:インペリアル自動車博物館蔵

ク社は、46年から登場したこのシリーズに、タウン&カントリーと名付けた。写真のコンバーチブルは、ラスベガスのインペリアル自動車博物館で見つけたものである。

タウン&カントリーシリーズには、もちろんセダンやステーションワゴンもあり、進駐軍将校が持ち込んだのであろう車が走るのを見掛けたが、優雅な姿も爆撃焼け野原背景には溶け込めなかった。

この木で飾る手法は米国ばかりではなく、欧州にもあり、量産車では英国のミニが知られている。
人は、自然の木の見た目、香り、質感、肌触りなどを本能的に好むのだろう。だから、現在の鉄製やプラスチックの乗用車を、木で飾り込んだ車があっても良いのではと思うのだが。

Tagged