1972年に登場した「アウディ80」にルーツを持つA4。8年ぶりに実施されたフルモデルチェンジによって、新プラットフォームなどによる軽量化を実現するとともに最新の安全装備を搭載した新型車の実力を、約700㎞の長距離試乗で確かめた。
日本に導入されるモデルは、2タイプの2・0Lターボエンジン搭載モデルを設定。今回試乗したのは、ベースグレードから62PS引き上げ252PSの最高出力とフルタイム4WDシステム「クワトロ」を組みあわせた〝ハイパワー仕様〟だ。
試乗車は、最低地上高がベースモデルから20㎜低いスポーツサスペンションを装着するなど、スポーティな印象を強調する「スポーツ」。アウディが持つクリーンで洗練されたイメージは増している一方で、モデルチェンジされたという新鮮感をエクステリアから受ける印象は少ない。
だが、インテリアに目を向けるとその印象は一変する。エアベントとダッシュボード前面を水平基調とすることで開放感を演出するなど、デザインを全面的に刷新。中でも注目なのが、オプション装備のバーチャルコックピットだ。フルデジタルのメーターパネルには、アナログメーターを模した速度・エンジン回転の表示に加えて、地図や電話、オーディオ、車両情報などが表示でき、先進性の中にステアリングのボタンだけで操作が行なえる実用性の高さも光る。
往路の高速走行では主に、全車速対応のアダプティブクルーズコントロールの性能を試した。装置の完成度が非常に高く、レーダーによって適正な車間距離を保つことに加え、渋滞時には先行車にあわせて減速もするので、細かいアクセル・ブレーキの操作が不要。また、車載カメラが車線逸脱を検知しクルマを車線の中央に戻すレーンアシストは、ドライバーに対して逸脱を促すようなものではなく、システムの積極的な介入で車線をキープする将来の自動運転の一端を感じさせるもの。長距離の運転もまったく苦にならなかった。
復路で走行した一般道では、上質な乗り心地とボディの剛性感の高さを実感できた。四つのドライブモードのうちデフォルトの「コンフォート」では、路面からの不快な突き上げなどは皆無で1クラス上の乗り心地を味わえるが、アクセルの踏み込みに対する加速レスポンスが若干鈍い。「ダイナミック」モードを選択すると、2・0Lエンジンとは思えないパワフルな走りと俊敏なハンドリングを味わえるが、全体的な乗り味を含めてスポーティな一面を持ったコンフォートというのがA4の印象だ。
また、7速Sトロニックのシフトチェンジも非常にスムーズで、メーターの表示ではシフトアップしていても、ギアが変わっているという体感はほぼない。車室内の静粛性の高さと合わせて特筆すべきポイントと言える。
さらにこの日の試乗は、普段の試乗会のシチュエーションにはないような夜間の山間道走行も試した。ここでその威力を発揮したのが、64段階の光量調整が可能な「マトリクスLEDヘッドライト」。対向車や前方車に直接光を照射しないようにコントロールしつつ、それ以外の周辺エリアは見事に明るく照射されたので、外灯の少ない道での運転も安心して行なえた。バーチャルコックピットとあわせて34万円のオプションだが、ぜひ選んでおきたい装備だ。