小さなボディに優れた使い勝手を備えた、スズキブランドを体現する1台 スズキ・ソリオ/ソリオ バンディット 試乗記

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ファミリーユースに便利なスライドドアを備え、軽自動車以上コンパクトカー未満という、絶妙なサイズ感が支持を集めているスズキ「ソリオ」が、5年振りにフルモデルチェンジを実施した。新型は従来からの取り回しの良さは維持しつつ、ボディサイズ拡大により、広い室内空間と荷室空間を獲得するとともに、安全装備の充実も図られている。

フルモデルチェンジの大きなトピックは全長の拡大。新型ソリオのボディサイズは、全長3790mm×全幅1645mm×全高1745mm、ホイールベース2480mm。先代と比べて、全長は80㎜(ソリオバンディットは70㎜)延長され、全幅は20mm拡大されているが、4.8mの最小回転半径やドアミラーを含めた全幅は変わっていないので、従来型からの乗り換えでも違和感はないだろう。

全長の拡大は、ニーズが多かったという荷室の拡大が目的の一つ。これによって、荷室フロア長が100㎜延長され、後席を一番後ろに下げた状態でも550mm、最大715mmまで拡張が可能になった。

後席は足を組んでも、なおゆとりがあるほどのスペース。これ自体は売れ筋の軽スーパーハイト系ワゴンも同じだが、シートを後ろまで下げた状態で、35Lスーツケース5個を搭載できるほどのスペースは、軽自動車の規格では実現できないソリオならではの強みだ。 

リクライニング機構を備える後席は2分割に可倒でき、シートを倒せば床面がフルフラットになるので、自転車の積載やちょっとした車中泊にも使えそう。床下にあるサブトランクも、2WDモデルでは深さ・スペースとも申し分なく、買い物の荷物やカーグッズを積むのにも便利。広々とした後席や荷室は、とても全長3.8m以下のクルマとは思えないレベルだ。

エクステリアは、エンジンフード先端の高さを上げることで、厚みが増してよりボクシーな存在感が強調されている。バンディットは2段構えのヘッドライトなどを継承する正常進化な印象だが、ソリオのフロントグリルには水平基調のメッキパーツがあしらわれ、押し出し感を強めることで雰囲気を一新させた。

インテリアは、ソリオがネイビーとホワイト、バンディットがボルドーとブラックを基調とした空間。センターメーターは先代と同じだが、新たに運転席ダッシュボード上にヘッドアップディスプレイが設けられたほか、細かい収納に配慮したインパネ造形も使い勝手が良い。空調のスイッチまわりも、従来と比べるとだいぶすっきりとした印象だ。

■フルハイブリッドは廃止に

パワーユニットは、ソリオのエントリーグレードのみ直列4気筒1.2Lガソリンで、それ以外のグレードには1.2Lエンジンとモーター機能付発電機(ISG)、専用リチウムイオン電池などで構成されるマイルドハイブリッド(MHV)の2タイプが設定された。

なお、新型ではフルハイブリッド仕様は設定されていない。なぜ搭載しなかったかのか技術者に聞いてみたのだが、先代の販売比率はMHVが圧倒的に高く、燃費や走りのバランスを考えたら現状はMHVが最適であるということだった。

先代はすべてのグレードで1000kgを下回っていた車重は、フルモデルチェンジによって若干重くなったが、走らせてすぐに実感できるのは、クルマ全体の動きが軽快であること。発進から高速域までの加速、ブレーキ、アクセルの反応など、すべての動作がスムーズなのが印象的だ。また、エンジンの停止や再始動時の静かさもMHVならではの魅力。このあたりの質感の良さは、ライバルであるダイハツ・トール/トヨタ・ルーミーを上回っている。

足回りは前後のショックアブソーバーを改良するとともに、リヤサスペションのストロークを拡大。乗ってみると路面からの入力も上手くいなされていて、先代からの進化を感じさせる。特に、後席の乗り心地に配慮したチューニングだという試乗前の説明も納得である。

さらに、背の高いワゴンにありがちな、コーナーでの不安定さなどもうまく抑えられている。ロールはそれなりに出るものの、その出方が自然でタイヤの接地感が失われていないので、同乗者が不安を覚えることはない。ただ、ステアリングの操舵感はやや頼りなく、センター付近の遊びが多い。個人的には、ハスラーぐらいしっかりとした操舵感が欲しかった。

安全装備を備えたMHVグレードも、185万200円という価格で戦略的。維持費で考えれば軽スーパーハイトワゴンだが、リッターカーならではのゆとりある走りや、広々とした荷室は魅力的だ。コンパクトカーを検討しているユーザーだけでなく、ミニバンからのダウンサイズや軽からのサイズアップユーザーにもぜひ注目してほしいモデルとなっている。

 

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