2020年に日本への導入がスタートしたランドローバーの新世代ディフェンダー。このシリーズに“2024年モデル”として日本初導入された8気筒エンジン車をテストドライブした。ちなみに、現行ディフェンダーにはショートボディの「90」とロングボディの「110」、そしてさらに延長されたボディを持つ「130」の3種類が設定をされるが、その中で8気筒エンジンが搭載されるのは前2タイプで今回テストをしたのは「90」。
8速ステップATと組み合わされた5000ccと大きな排気量のV型8気筒エンジンが発生させるのは、メカニカルスーパーチャージャーの助けもあって525psという大出力。2トンを大きく超える重量級のボディをそんな心臓による“力技”で走らせた結果、5.2秒という0-100km/h加速タイムに240km/hという最高速と、ちょっとしたスポーツカー並のデータが発表をされている。
シンプルながらも圧倒的な存在感を放つエクステリア
水平と垂直のラインを基調としたこのモデル固有の特徴はそのままに、4本出しのテールパイプで秘めたハイパフォーマンスをさりげなくアピールするその姿は、“機能美”という表現がピタリと決まるシンプルさの中に得も言われぬ迫力が同居をして何とも魅力的。フロントシートに対しグンと高い位置にセットをされたリアのシートへは2024年モデルになってフロントパッセンジャー側にフォールドスライド機能が加えられたことでアクセスが容易となり、また座面跳ね上げ機構や40:20:40分割可倒機構も設けられたことでユーティリティ性が向上しているのもニュースだ。
エンジンに火を入れた段階で耳に届く、あたかも上機嫌の猫が喉を鳴らしているかのごときV8エンジン特有のビートの効いたサウンドが、まずはこれまでのモデルには無かった魅力のポイント。いざ走り始めれば大排気量の多気筒エンジンならではの微低速域から滑らかに、しかし力強く立ち上がる加速感が、シリーズの中にあってもエクスクルーシブな存在であることを主張する。
悪路でも街乗りシーンでも満足感を得られる走り
そうした特性の持ち主かつアイドリングストップ状態からも素早く滑らかに再始動をしてくれるゆえ街乗りシーンでの穏やかな走りももちろん不得意ではないのだが、秘めたポテンシャルを露わにするのはアクセルを深く踏み込んだシーン。音量を増したV8サウンドと共に沸き上がるパワー感は、これまでのディフェンダーでは決して味わえなかったもの。これだけでも、シリーズ中からあえてこの心臓の持ち主を選択したことに、乗る人は大きな満足感を得られそうだ。
加えれば、絶大なるオフロード性能を備えつつもアスファルト上では高級乗用車そのものという振る舞いを実現させるエアサスペンションのチューニングも絶妙な仕上がり。この点でも、前述のようなオーナーの満足度はさらに加速をされるに違いない。
すでに“兄弟メーカー”のジャガーでは、多くのモデルで「エンジン車の受注終了」が現実のものとなってしまったタイミングだけに、現時点では早急なエンジン車終了まではアナウンスをされていないランドローバーの作品にも、いつどのような事態が発生するかは未知数というのが今という時代。
それだけに、この先“コレクターズカー”となる可能性の高いこのようなモデルに少しでも興味があるのならば、「善は急げ」とそんなアドバイスこそが相応しいのかも知れない。
(河村 康彦)
(車両本体価格:1500万円〜)