【河村康彦 試乗チェック】トヨタ・アルファード/ヴェルファイア:本気で作り込まれた乗り味

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充実の装備群は、使う人の立場になって考え抜かれた利便性と扱いやすさ

今や「日本を代表するファミリーカー」と紹介しても過言ではないのが、3列シートのレイアウトにリヤサイドのスライドドアを備えたいわゆる”ミニバン”カテゴリーのモデルたち。そうした中でも、特に高い人気を誇るトヨタのアルファードと姉妹車のヴェルファイアが2023年6月に7年半ぶりのフルモデルチェンジを行った。

最上級グレードは17インチタイヤで快適な乗り心地を実現

かつては取り扱いディーラーが異なった両モデルだが、すべてのトヨタ系ディーラーが全トヨタ車を販売するようになってからは、人気がアルファードに集中する傾向が表れていたもの。

そんなことから「ヴェルファイアはカタログ落ちするのでは?」という憶測もあったものの今度も両モデルが継続。ただし、「日本を代表する大型ミニバンとして王道を狙ったアルファードに対して、走りと個性を追求したヴェルファイア」と、開発陣は従来型以上に明確なそうした棲み分けを狙っているようだ。

テストドライブを行ったのは、『アルファード』と『ヴェルファイア』のいずれも上級グレードであるエグゼクティブラウンジ。いずれも2.5リッターの4気筒エンジンを用いるハイブリッド・システムの持ち主とパワーユニットは同様だったが、前者が後輪をモーターによって駆動する”E-Four”を謳う4WDシステムの持ち主、後者は前輪のみが駆動されるFWD方式と異なる駆動方式を採用していた。

フロントノーズはエンブレムを最先端にした逆傾斜のデザインを採用した

走り初めてすぐに世代交代が行われたことを実感するのが、大きく高まった静粛性。EVモードでのスタートの瞬間はもちろん、速度が高まってエンジンが始動した後も、まさに”高級車”を実感できる静かさは驚くほどと言って良い水準。

同時に無駄な振動が抑制され、残ったわずかな振動も素早く減衰されてしまうその乗り味も、大きくレベルアップしたことがつぶさに感じられる。端的に言ってこの二点だけを取り上げても「今度のアル/ヴェルは本気で作り込んでいる」と実感。

 

正直なところ、従来型では「やはり大きな箱型のミニバンだとこのくらいで仕方がないのかな…」と、そう妥協をしていた走りの質感は、期待と予想を超えるレベルで大きく向上することになっていた。

微に入り細を穿つような充実の装備群は言わずもがな。しかも、そうした多彩な装備のどれもが比較的扱いやすく、カタログ上の勝負で他のライバルを圧倒するだけでなく、実際に使う人の立場が良く考えられていることにも感心。

 

3列目シートの格納は左右に跳ね上げる方式

率直なところ個人的な好みからすれば、周囲を屈服させるような威圧感に富んだ(特にアルファードの)ルックスにはとても共感を抱くことはできないものの、それを別にすればもはや数ある日本のミニバン群の中にあっても、圧倒的な商品力の持ち主であることは否定のしようがない、新生アルファードとヴェルファイアなのである。

(河村 康彦)

(車両本体価格:〈アルファード〉540万円~872万円〈ヴェルファイア〉655万円~892万円〈アルファード ウェルキャブ〉472万円~564万8000円)=消費税非課税

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