【河村康彦 試乗チェック】トヨタ・ハリアー(PHEV) やはりこの国の“現実解”はコレ!?

all 電動車 試乗記 試乗レポート コラム・特集

強力モーター搭載によりEV走行中のエンジンの出番は控え目

日本のトップメーカーでありながら、ことあるごとに「欧州や中国に対してピュアEVへの力の入れ方が生ぬるい」と、そんな趣旨で批判されることが多いのがトヨタ。一方、ピュアEVと同様にプラグイン(外部充電)対応のモデルでありながら、こちらは一歩一歩着実に歩を進めているように感じられるのがPHEV(プラグインハイブリッド車)のラインナップでもある。

高出力充電インフラの拡充がなかなか進まず、大容量バッテリーの搭載で航続距離を伸ばすという”力技”を採ったピュアEVの使い勝手が何とも芳しくない日本では、電気を使い果たしてもガソリンさえあればそのまま走り続けることができるPHEVは、確かにこの国の”現実解”としてのポテンシャルがピュアEVより高いと受け取れる場面は少なくなさそう。

かくして、欧州や中国とは異なる実情を反映するように、”マルチパスウェイ(全方位戦略)”を選択するこのブランドが手掛けるPHEVのひとつが、今回紹介をするハリアーのPHEV。2022年10月に登場このモデルは、現行ハリアーのマイナーチェンジにタイミング合わせて設定されたことになる。

上級グレードの『Z』をベースに2.5リッターの4気筒ガソリン・エンジンを搭載し、フロントに通常のハイブリッド仕様の88kWよりも遥かに強力な134kWの最高出力を発するモーターを使用し、後輪には通常のハイブリッド仕様と同じ40kWのモーターを使う4WD方式。駆動用バッテリーの容量は18.1kWhで、すなわちここまでのスペックはRAV4のPHEVと同様だ。

RAV4よりわずかに重いことが影響してか93㎞というEV走行距離は2㎞だけ劣っているが、この程度は誤差範囲。実際はその7割程度と厳しく見積もっても60㎞以上は”エンジンレス”で走行できる計算だから、日常シーンはガソリン要らず…となるユーザーは少なくないに違いない。

それなりに強力なモーターを搭載するので、充電量が十分である間はよほどの急加速にトライをしたりしない限りはエンジンの出番はナシ。当然その振る舞いはピュアEV同様で加速は滑らかで静粛性は高い。

ただし、通常のハイブリッド仕様よりも300㎏ほど重くなったものの、それでもその乗り味は路面状況によってはちょっと硬めと感じることに。EV走行時はロードノイズも目立ち気味で、このあたりが「時にピュアEVに変身する」PHEVならではのサジ加減の難しさと言えるのかも知れない。

一方、日本人の好みを知り尽くしたような巧みな上質さの表現は、相変わらずのハリアーならではの美点。いずれにしても、様々なポイントでまずは日本の環境への適合を強く目指したと思える点に好印象を抱く一台である。

(河村 康彦)

(車両本体価格〈PHEVのみ〉:620万円)

Tagged