【河村康彦 試乗チェック】トヨタ・プリウス 新境地に挑むハイブリッドの雄

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これまでいない“カッコ良さ”を追い求めた

これまで4代のモデルがそれぞれ”起・承・転・結”の役割をひと通り果たしてきたので、今度の5代目モデルでは再度新しい章の”起”へと挑みたい――開発者がそのように紹介するように、一見でそのキャラクターが大きく変わったことを教えられる新生プリウスをテストドライブした。

躍動感は歴代モデルで一番

これまでの歴代プリウスに対して、そのキャラクターが大きく変わったことを印象づけるのは、もちろんそのスタイリングに関して。プリウス特有と言えるアイコンでもあるサイドから目にした際の”トライアングルシルエット”は踏襲をしながらも、Aピラーとウインドシールドの傾斜を極端に強めながら全高を大きくダウン。さらに、一部グレードを除いて19インチという大径のシューズを標準としたその佇まいは、まるで4ドアのスポーツモデルそのもの。

実は今度のプリウスの開発責任者はカローラ系も担当する人物で、カローラにもハイブリッド・バージョンが存在する現在では実用性を重視するユーザーの受け皿はそちらに任せ、プリウスにはカローにはできない大胆なキャラクターを持たせよう、と、そんな棲み分けの戦略も感じられるのである。

 

搭載するハイブリッド・システムは、2リッターエンジンを組み合わせた、いわゆる”THS”と呼ばれるシリーズ・パラレル型ユニットがメイン。エンジン出力もモーター出力も大幅にアップしたことで、絶対的な動力性能の向上は走り始めた瞬間から明白。ただし、スタート直後のモーターがメインでの走行からエンジンが始動して、そちらがメインの走行へとバトンタッチすると、当初のEVらしいアクセル操作に対するリニアリティの高い挙動から、エンジン回転がやや先行して高まり次いで加速Gが体感できるという”THS”搭載車ならではの感覚が、その程度は弱まったとはいえ実感できて、「あ、やはりプリウスなんだな」とそんな印象が呼び覚まされることにはなる。

2リッターエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステム
4輪駆動も設定されている

ボディのしっかり感は十分に高いものの、やはり大径シューズを履くモデルならではの路面凹凸をやや敏感に拾う感覚はあって、未確認ではあるもののこうした乗り味の点を優先して考えるのならば、オプション設定される2サイズ・ダウンの17インチ・シューズを選択するという手段も考えられるかも知れない。

大径化が進んでいる。19インチタイヤが装着されていた

開発者によれば19インチという大径シューズを履かせたのは、「完全に”カッコ良さ”のため」という明確なる割り切り方。ちなみに、横浜・みなとみらい地区を基点としたテストドライブでは、FWD仕様と4WD仕様に大きな乗り味の違いは感じ取れなかった。

その他、フロントカウルが高くて遠いために車両感覚が掴みづらかったり、斜め後方の振り向き視界が絶望的に悪かったりと、100%ルックス優先で構築されたボディには数々のウイークポイントがあるのは事実。けれども、それを承知の上で完成された新型プリウスのスタイリングは、きっと後世に伝えられるものにもなるのだろう。

(河村 康彦)

(車両本体価格:275万円~460万円)

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