トヨタ、水素エンジンカローラがさらなる進化 大気中からCO2の回収に挑戦

all 業界ニュース

トヨタ自動車は、11月11日・12日に行われたスーパー耐久シリーズ2023の最終戦「第7戦 S耐ファイナル 富士4時間レースwithフジニックフェス」に、液体水素で走行する「#32 ORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept」(水素エンジンカローラ)と、カーボンニュートラル燃料で走行する「#28 ORC ROOKIE GR86 CNF Concept」で参戦した。

今回参戦した水素エンジンカローラは、23年7月に参戦した車両よりもさらに進化を遂げたという。

【水素エンジンカローラの進化】

エンジン性能においては、高出力を実現するためには液体水素ポンプが安定して高い燃料圧力を発生させる必要があり、課題となっていた液体水素ポンプの昇圧性能と耐久性を向上することで、ガソリンエンジンおよび気体水素搭載時と同等レベルの出力を実現した。

航続距離では、5月の富士24時間レース時には1回の給水素で走行できる最大の周回数が16周だったところ、今回の車両では、給水素時満タン判定の精度向上とタンク内への入熱低減による、ボイルオフガス量の低減や、アクセルが全開ではない時の燃料噴射量を最適化する等の改良を実施。20周を目標としてレースに参戦した。

車両重量では、これまでの走行で培った知見を活かし、軽量化できる部品を特定し、厚さ、数の調整等による軽量化を実施。タンク、安全弁・ボイルオフガス弁、ロールケージ、高圧部水素系部品等を軽量化し、オートポリス大会の1,910kgからさらに50kg軽量化した1,860kgの車重を実現した。

【CO2回収技術への挑戦】

今回の進化による注目ポイントとなるのがCO2回収技術への挑戦だ。今回の水素エンジンカローラでは、内燃機関が持つ“大気を大量に吸気する特徴”と“燃焼により発生する熱”を活用し、CO2回収装置をエンジンルームに装着することで、大気中のCO2を回収する挑戦を試験的に実施。

具体的には、エアクリーナー入口にCO2を吸着する装置を、その隣にはエンジンオイルの熱によってCO2を脱離する装置を設置し、脱離したCO2は吸着溶液で満たされた小型タンクに回収される仕組みだ。

大気からCO2を吸着・脱離・回収する装置には、川崎重工業株式会社が開発した“従来よりも低温でCO2脱離できる吸着剤”を塗着させたフィルターを使用することで、CO2の回収効率を上げている。

【水素エンジンハイエースの走行実証】

スーパー耐久シリーズへの参戦を通して鍛え続けている水素エンジン技術を、将来の実用化に向けてさらに鍛えるため、水素エンジンを商用ハイエースに搭載し、オーストラリアの公道において事業会社の運行による走行実証を実施。走行実証を通して公道でも鍛えていくことで、ユーザーの使用環境下での商用利用としての実用性や運転操作性、耐久性などの開発を進め、将来の実用化につなげるとしている。

【オーストラリアでの水素エンジンハイエース走行実証概要】

  • 日時:2023年10月23日~2024年1月の約4か月間
  • 場所:オーストラリア・メルボルン近郊の公道
  • 車両:ハイエースをベースとし、水素エンジン搭載仕様に変更した車両(気体水素搭載)1台
  • 実証内容:建設会社、警備会社の運行による走行実証

 

Tagged