乱立気味の輸入車ピュアEV、今後はキャラ確立に苦心か!?
メルセデス・ベンツがラインナップするピュアEV”EQ”シリーズの中にあって、同様にEV専用プラットフォームを用いるフラッグシップ・モデルのEQSと共に2022年に日本導入が開始されたのが、ここに紹介する『EQE』。
やはりEQSと同様に”ワン・ボウ(弓)”をテーマとするロング・ホイールベースにショート・オーバーハング、そしてキャビン・フォワードのプロポーションを特徴とするスタイリングは、一見では「EQSと相似形」という印象を受けるものではあるが、実はEQSは大型のテールゲートを備えるハッチバック型ボディであるのに対して、EQEは独立したトランクルームを採用した完全な4ドア・セダン型となる。
1905㎜の全幅こそEQSと20㎜の差でしかないものの、5225㎜と巨大なEQSの全長に対してEQEは4970㎜と、兄貴分との間には明確な差が設けられている。
エクステリア・デザインがそうであるように、インテリアの雰囲気もやはりEQSのそれに準じたもの。EQSで体験して度肝を抜かれたダッシュボード全面が一枚のガラスで覆われた”ハイパースクリーン”は、EQEの場合は上級のハイパフォマンス・グレードの『AMG EQE 53 4マティック』でのみオプションでチョイスが可能で、今回テストドライブを行ったベースグレードの『350+』では設定がナシ。
それでも、EQSに準じた最新のADAS群はもとより、エアサスペンションや後輪が最大10度まで逆位相に動いて4.9mという驚異の小回り性能を生み出すリヤ・アクスルステアリングなども標準で採用されるなど、装備の充実度に関してはこれ以上何の注文もないというのが現実であることも間違いない。
215kW≒292PSの最高出力と565Nmの最大トルクを発揮するモーターで、後輪が駆動された結果に生み出される加速力は、一部のハイパフォーマンスEVが売り物とするような”爆速”には至らないまでも、日常走行には十二分の活発さ。
むしろ「これ以上やってしまうと”AMG”の立場が危ういので抑えめにした」とも思える印象でもあり、ステアリングパドルで3段階から選択ができる回生制動力も、特に先行車両の走行状態に合わせて自動的に強弱を調整する”インテリジェント回生”のモードがとても理にかなった働きを行ってくれることに好感を抱くことができた。
ピュアEVの例に漏れず静粛性も優秀で、高速走行時でも風切り音が急激に高まるようなことがなかった点も特筆ポイント。ここには、0.20というEQSのデータには及ばないまでもそれでも0.22と優秀なCd値も貢献していそうだ。
ただし……実はそんなEQEの直前にテストドライブを行った、やはりピュアEVであるヒョンデのアイオニック5と直接の比較を試みると、「EQEに目立ったアドバンテージを感じることはできなかった」と、そう受け取れてしまったというのも率直な感想。もっと言えば、ピュアEV各車に共通する静粛性に富んだ滑らかな加速感は、その強弱やアクセル操作に対する応答の味付けなどに違いは見いだせるものの、ザックリ表現すれば「どれも大同小異」と言えそうなことも現実と思えるのである。
プレミアム・ブランドにとってのこれからのピュアEVづくりは、いよいよ悩ましい領域へと入って行くのかも知れない。
(河村 康彦)
(車両本体価格:1248万円)