【河村康彦 試乗チェック】トヨタ・アクア Z(2WD) バイポーラ型ニッケル水素電池搭載

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様々な面で日本車の“底力”を見せつける

現在ではすっかりポピュラーになったハイブリッド車。けれども、駆動用バッテリーの容量を増やせばそのままピュアなEVに近い振る舞いを示す、いわゆる”ストロング・ハイブリッド”と呼ばれるメカニズムを備えるモデルは、実は今でも「日本のお家芸」と言える状況が続いている。

ひと昔前ならば夢物語とも思えそうな驚異的な燃費を叩き出し、それゆえCO2削減への極めて有効な現実解と言えそうなそうしたモデルが、欧州を筆頭とする一部海外マーケットからは「それでもエンジンを搭載するのだからCO2を排出する」といった、理不尽な理由から排斥されそうな動きが見られるのは、イコール「強過ぎる日本車を追い出したいため」と受け取られるのもさもありなん。

ここに紹介するのは、少々地味な存在ながら実はそうした日本車の底力を象徴する、2021年7月に2代目へと進化をしたトヨタ発の末っ子ハイブリッド・モデル、『アクア』である。

全長と全幅が4050×1695㎜といわゆる”5ナンバー”の枠内に収まるサイズは、このモデルが国内市場に照準を合わせていることを示すひとつのポイント。1.5リッターの3気筒ガソリンエンジンが組み合わされたハイブリッド・システムには、リチウムイオンではなくニッケル水素電池が用いられるが、FWD仕様が200万円を切る価格に設定された最もベーシックなグレードを除いては、”バイポーラ型”という駆動用バッテリーとしては世界初という新アイテムを採用するのが特徴。リチウムイオンに対して価格面で有利とされるニッケル水素電池ながら、「従来型アクア用電池に対して約2倍の高出力を実現」と紹介されている。

実際、スタートをするとその動力性能は日常のシーンをこなすのに十二分。モーターパワーが主体の状態から、エンジンパワーが主体の状態に切り替わる際のショックがほとんど目立たない点なども見事な仕上がりだ。微低速時など”暗騒音”が小さな状況では、エンジンが発する騒音/振動はそれなりに認められるが、エンジンの回転数と走行速度の高まりはなかなかリニアで、いわゆるラバーバンド感がさほど気にならなくなったのも新型の美点のひとつに数えられる。

ブレーキのサーボ力が強めで、時にやや”かっくんブレーキ”感が目立ったり、ステアリング操作に対するダイレクト感が薄かったりと、ちょっとばかりひと昔前のトヨタ車を思い出させるような走りの感覚もあるものの、もしかするとそれはハイブリッド仕様がラインナップされることで一部では競合も危惧をされたヤリスとの、敢えてのテイスト分けという狙いもあるのかも知れない。

いずれにしても、軽自動車でさえ200万円超えが珍しくないという昨今、やはり様々な点から「底力」という言葉を連想させられることになる、目立たないが高い実力を秘めた1台なのである。

(河村 康彦)

(車両本体価格:240万円)

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