【河村康彦 試乗チェック】ホンダ・フィット e:HEV RS 新加入スポーティグレードの実力は?

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ワインディングでの走りの自由度の高さはシリーズ随一

2020年4月に現行モデルが登場したホンダのベーシック・モデル『FIT』がマイナーチェンジ。2022年10月から再度の発売が開始をされた。

マイナーチェンジでのデザイン変更は最小限にとどまった

リファインの主なポイントは、グレード体系の見直しやハイブリッド・システムの出力アップ、ガソリン・エンジン仕様の排気量アップ(1.3→1.5リッター)など。内外装の一部にも手が加えられはしたものの、「販売台数が今ひとつ伸びないのは見た目のせい」といった声を受けて、大幅な変更が行われるのではという予想もあったものの、実際には変更幅はごくわずかだったのはやや意外。

それよりも、最大の注目点は専用の化粧が施され、サスペンションにも独自のチューニングが施されるなどして、シリーズ中で最もスポーティなキャラクターが与えられた新グレード『RS』が設定されたことと受け取る人が多そうだ。

追加された新グレードRS。ロードセーリングの頭文字だったとは…

というわけで、早速そんな『RS』をテストドライブ。ちなみに、初代シビック(!)に設定されて以来、ホンダ車にたびたび登場をする”RS”とは、一般にイメージをされそうな「レーシングスポーツ」ではなく、よりカジュアルで軽快な走りを示す「ロードセーリング」を意味すると説明をされる。

1.5リッターエンジンに2モーターのハイブリッドシステムを搭載

前述のように1.5リッターへと排気量が拡大されたガソリン・エンジン仕様にも用意をされるRSだが、今回のモデルはホンダが『e:HEV』と紹介するハイブリッド仕様。ちなみに、このグレードはパワーユニットの違いに関わらず、いずれも前2輪駆動のみの設定となる。

開口部が強調された専用デザインのフロントバンパーや、ピアノブラック塗装が施されたサイドシルガーニッシュ/専用リヤパンパーの採用などで、外観の印象はなるほどシリーズ中で最も精悍。グレー基調の中にイエローのアクセントカラーがあしらわれたインテリアも、確かにシリーズ中では最もスポーティな印象を醸し出すが、ダッシュボードの造形やメーターのグラフィックは、ベースが実用本位のモデルであることはやはり隠せない仕上がりではある。

大きなフロントグリル開口部とつやつやなピアノブラック塗装
イエローのステッチがアクセントとなるステアリング。総じてインテリアの質感も高い

マイナーチェンジで出力向上がアナウンスされるハイブリッド・システムは、「これまでの知見を活かして、バッテリーなどこれまで余力として確保していた領域をより積極的に用いるように再チューニングした結果」ということで、ハードウェアについては従来同様とのこと。それでも記憶を紐解くと、確かにアクセル踏み込み量が大きな領域でのパワーの伸び感は向上した印象。ただし、RS用のシステムも他グレードとの違いはなく、欲を言えば「専用パワーユニットを搭載」というフレーズが欲しかったとは思う。

e:HEV RSは16インチタイヤを装着する

専用チューニングが施された足回りによってロールが抑えられ、ステアリングにもよりシャープな操舵感が得られる専用のギア比が与えられるなどしたことで、確かにワインディング・ロードでは走りの自在度がシリーズ中最も高いことは間違いナシ。一方で、高速道路でのクルージング時などは揺すられ感が目立ち気味になるなど、その乗り味は”一長一短”と思えたのもまた事実だった。

シビック・タイプRの「珠玉」のようなMTに感動して間もないこともあって、ガソリン・エンジン仕様にMTの設定が無いことや、4WDシャシーが用意されないのはちょっと残念。果たして購入する人のどれ程の割合がこのグレードを選ぶのか、それも気になるニューカマーである。

(河村 康彦)

(車両本体価格:234万6300円)

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