【河村康彦 試乗チェック】日産・エクストレイル 海外仕様に比べ“母国”仕様は最新技術で構成

all 電動車 試乗記 コラム・特集

Ver. 3.0とも感じられるパワーユニットの進化

2022年の7月25日に、ようやく発売をされた4代目となった新型エクストレイルをテストドライブした。

ここで、「ようやく」と表現を加えたのには理由がある。実はこのモデルは、北米地域ではローグと名前を変えたモデルがすでに2020年に登場済み。そこからすると、母国である日本ではなんと「2年遅れ」とも受け取れる計算になってしまうからだ。

従来型よりスクエア基調が強まったスタイリング

しかし、日本仕様車が昨今の日産が得意とするシリーズ方式のハイブリッド・システムを採用する”e-パワー”であるのに対して、前出北米仕様のローグはオーソドックスな純エンジン車。しかも、日本のエクストレイルでは4WD仕様の後輪がモーターで駆動され、そこに様々な制御を施すことで高度な走行性能を実現させるのに対して、ローグの4WD仕様の後輪は簡便なカップリングを介在させた、やはりオーソドックスな機械式による駆動。すなわち、様々なポイントで日本仕様にはより複雑で高度な新しい技術が用いられ、それらを念入りにチューニングするためにさらなる時間を必要とした、と考えられるのである。

テストドライブを行ったのは、そんな4WD仕様の上級『G』グレード。下位のグレードとは、左右フロントのパワーシート、パワー式のテールゲート、より大径の19インチ・シューズなどを標準装備するといった特徴点を持つ。

便利なパワーテールゲートも採用された
大径19インチホイールを装着

従来型に対してスクエア基調を強めたようにも思えるスタイリングは、それゆえエクストレイルというモデルが当初備えていた”道具感”の強さを再び取り戻したとも思えるルックス。インテリアの質感は飛び切り高いと思えるものではないが、多くの操作系を無理やりタッチパネル式にするのではなく、使用頻度が高いものは物理スイッチで使いやすい位置に配している点には大いに好感が持てる。

タッチパネルオンリーでない操作系にも好感が持てる

走り始めてまず感じられたのは静粛性の高さで、開発陣が「エンジンを黒子的に使うのに腐心をした」と語る通り、3気筒にも拘わらずディスプレイの表示を目にしない限り、その始動にも気が付かないほどなのはちょっと驚き。そこでは、発電用にシステムに組み合わせるエンジンを自慢の可変圧縮比機構付きの1.5リッター・ターボ・ガソリンユニットとすることで、全般的な出力に余裕があり、結果として常に低回転域を中心に運転できるようになったという点が大きく効いているはずだ。

状況により圧縮比が変わる最新機構が採用されたターボガソリンエンジン

現行ノート・シリーズがデビューした際に、それまでのシステムを大幅にリファインしたことで「”2.0”になったな」と感じられた”e-パワー”だが、そこからするとさらに進化をして「”3.0”になったな」と、例えるならばそうも感じられたのがこのエクストレイルのパワーユニット。

試乗コースの関係で余り高いコーナリングGを出すような走りにはトライできなかったが、それでもタイトなターンではアクセルを積極的に踏み込んでもアンダーステアが強まるような感触はなく、後輪側もきちんと駆動力を発している印象を実感。なるほど、待たされた甲斐は確かにあったなと納得の新型エクストレイルなのである。

(河村 康彦)

(車両本体価格:319万8800円~449万9000円)

Tagged