バンコクのポルシェ・356

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バンコク自動車ショーの大きな特徴は、ショー会場が販売会場だということ。腕利きのセールスマンが招待状を出した顧客を手ぐすね引いて待ち、成約する仕掛けになっている。で、2011年の成約数はナント3万台を越えたというのだから驚きだが、12年は4万5000台の予測を遥かに超えて、5万7000台に達したという。とにかく初日だけで、メルセデス・ベンツ100台、BMW新3シリーズだけで150台、ロールス・ロイス3台というのだからたいした勢いだ。

そして楽しみなクラシックカーは、ポルシェ・356だが、こいつはスポーツカーの概念を変えたことで知られる。それまでスポーツカーといえば、スパルタンが売り物のイギリス流。硬いサスの格子型シャシーにボディを載せたロードスターは、悪路で飛び跳ね、薄っぺらシートで尻が痛くなり、ボディのシェイクでドアとの隙間に指が入るほど開いたりという代物だった。

後部通気孔1個の356B:車重905㎏・空冷水平対向OHV 4気筒1582㏄・75馬力・4MT・最高速度時速175㎞(60馬力型160㎞・90馬力型185㎞)4輪ドラムブレーキは冷却良好なアルミ製。

が、356はカチッとしたボディの2+2クーペが特徴。そして乗り心地の良さ…開発コンセプトが安全性と長距離ツーリングの両立で、悪路で跳ねないビクともしないボディの持ち主だった。

356の初舞台は、ドイツ敗戦から4年後の1949年のジュネーブショーで、2代目911と交代するまでの17年間に、世界最大のスポーツカー市場のアメリカで、多くのファンを生み出した。

もっとも登場直後はコンセプトが理解されず、非常識なレイアウトといわれ、それまで経験したことがない急激なオーバーステアの恐怖感などで「ビタミン剤を飲みすぎたVW」などの酷評も聞かれた。

ラスベガス・インペリアル自動車博物館のポルシェ356スピードスター:低い前窓でスピードスターと判る・1600-60馬力/1600スーパーは75馬力・標準型クーペの全高は1310㎜だがスピードスターは1220㎜。

356も時代と共に進化の道をたどるが、59年以降は356B、それ以前を356Aで区別するようになり、そして63年に356Cへと進化し、65年に911へとバトンタッチする。

バンコクのは63年1600 SUPERとあるが、62年には後部通気孔が二つになるがバンコクのは一つ。タイ向けに右ハンドル仕様ということも合わせて、新車購入でも356Bだと思う。

ポルシェ356Bスーパー1600クーペ:全長4010×全幅1670×全高1336㎜・ホイールベース2100㎜・アメリカの規制でバンパーと前照灯位置が上がったので、フェンダーとボンネット先端も膨らんだ。

フォルクスワーゲン(VW)ベースで誕生したポルシェ356だから、VWの部品供給と販売網利用、競合車開発はせずと両社の契約があったが、昨今ではカイエンやパナメーラの出現で、契約は解消したのでは。

(車屋 四六)

 

車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。

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