紅旗を中国語で発音するとホンチー。いわずと知れた純中国製VIP用最高級車。毛沢東主席の肝煎りで開発されたといわれる。WWⅡ中ドイツ攻略に連合軍として共に戦ったソ連が、アメリカと戦後対峙する間柄になると、欧米のクルマを使うのを良しとせず、ZILやZISといった要人用高級車を開発したように、蒋介石率いる中華民国を台湾に追い落とした中華人民共和国=中国も、欧米と思想で対峙する国家として体面上必要だと紅旗を開発したのだろう。
ちなみに中国共産党は1921(大正10)年に結党して中華民国と戦うが、日中戦争が始まると共闘態勢で日本軍と戦い、戦後は中華民国との戦いを再開、中国全土を制覇して、毛主席が1949年に中華人民共和国建国を宣言した。
1枚の写真がある…上を向いた機関砲が並んでいるから、中国統一初期の毛主席の観閲式であろう。このジープは、連合国軍としてWWⅡ中にアメリカがソ連に貸与した兵器が終戦で不要になり、中国に渡したものだろうと推測される。当時アメリカ寄りの台湾から輸入されるはずもないからだ。ちなみに、ベトナムでホーチミン軍がアメリカ製銃器を持っていたのは、WWⅡ終了後のソ連が中国に供与、さらにベトナムへということだったのだろう。
話を戻して、中華民国を台湾に追い出し、中国建国に成功して大国を目指す毛主席は、ソ連同様に自国製VIPカーが必要と望み、ちょうど建国10周年を迎えるのに合わせて、1958(昭和33)年に誕生したのが紅旗だったのだ。
誕生した紅旗は、V型8気筒・200馬力搭載の堂々たるリムジンだが、1955年型クライスラーリムジンや、ソ連のZILを参考に開発されたと噂されている。紅旗は1965(昭和40)年のモデルチェンジで、3列シートのロングホイールベース車を完成、VIP用高級車として発展を続けた。もちろんパレード用のオープンカーもあり、閲兵中の鄧小平主席の写真を紹介しておこう。
日本や欧米との提携で製造技術が進歩した中国は、近頃紅旗の輸出も始めて、日本でも紅旗を買えるようになったようだ。直列4気筒・2ℓターボとV型6気筒6・3ℓターボ搭載で、価格は600万円程から、エアサスの最上級は1100万円程で、フルオプションだと1500万円程になるらしい。
私は未だ見てないが、ラジェーターグリルはパルテノン型。オプションのツートーンのカラーリング、どこかで見たようなと知人がいっていた。いずれ乗る機会があるだろうが、乗ったら詳細報告します。
(車屋 四六)
車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。